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ドコモ、ノキア、オムロンが描く未来の工場・1

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 NTTドコモ(以下、ドコモ)、ノキアグループ(以下、ノキア)、オムロンは9月10日、工場などの製造現場におけるモバイル5Gを活用した共同実証実験を実施することに合意したことを発表した。
 この共同実証実験において、オムロンは、ファクトリーオートメーション技術、制御や製造業における知見、そして自社工場での実験環境を提供。ドコモは、5G装置を活用した実証実験の実施に関わる技術的な知見を提供。ノキアは5Gの基地局を含めたプラットフォームの提供や、ノキアベル研究所での先端技術の研究成果の知見を提供する。
 各社が描く未来の工場とはどういったものなのか。また、工場における5Gの課題と取組みとはどういったものなのか。今回のレポートでは、三社による記者説明会の様子をまとめた。

機械が人の能力や創造性を引き出す「融和」に向けた、5Gの活用

 オムロンは1933年の創業以来、オートメーションに拘って事業を運営している企業だ。創業者の立石一真氏は『機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである』という言葉を残しており、特にファクトリーオートメーションには非常に力を入れてきたという。
 オムロン 執行役員 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 技術開発本部長の福井信二氏は「今、このファクトリーオートメーションが変革期を迎えている。私はファクトリーオートメーションの事業を担当しているが、これほど大きな変革は私の経験の中でも大きなものだ。モノづくりの現場では、熟練工不足や、新興国での人件費高騰など、人ばなれが非常に大きな課題になっている。かつて一次産業から人が離れて、今、二次産業からも人が離れていて労働力が不足している。このままではファクトリーオートメーションが厳しくなる一方、というのが現状だ」と話す。
 そうした中でオムロンは、ファクトリーオートメーションに限らず、人と機械の関係を変えていくことによって、この危機的な状況を乗り切っていく考えだという。オムロンは人と機械の関係性を三段階で捉えており、人の作業を機械に置き換える「代替」、人と機械が作業を分担する「協働」、こうした従来の関係性に対する未来の姿として、機械が人の能力や創造性を引き出すことを「融和」と名付け、その実現に向けて研究開発に取り組んでいるという。
 この「融和」を具現化するため、オムロンは独自のモノづくりコンセプト「i-Automation」を掲げている。オムロンは「冒頭のiは、製造現場がもっとinnovativeになっていかなくてはならない、変わっていかなくてはいけないという願いを込めて、innovationのiをつけた。“i-Automation”では、人が減ってきた現場において、ロボティクスによる制御の進化(integrated)、AIによる機械の知能化(intelligent)、IoTによる人と機械の新しい協調(interactive)、これらを推進することによって様々な技術を実現してきた。だが、これらの技術だけでは限界を感じており、“i-Automation”に5Gを加えることで更に進化、拡張できると確信するに至った」と話す。

5Gと自動搬送ロボットを活用した、レイアウトフリー生産ライン

 「i-Automation」と5Gの組み合わせた技術の1つとして、オムロンが導入している自立型の搬送モバイルロボット(AMR)の高度化が想定されている。オムロンの工場で稼働しているこのロボットは、移動にレールを使うことなく、ロボットが自律的に考えて移動してモノを運ぶというもの。現状はWi-Fi接続により制御を行っているが、5Gの高速、低遅延、多数接続により、ロボットの台数増加や高度な制御が期待できる。福井氏は「5Gと自動搬送ロボットの組み合わせにより実現できる未来の姿として、我々はレイアウトフリー生産ラインを想定している。現在の工場レイアウトはコンベアで繋がった一つのラインを形成しているが、これではマスカスタマイゼーションの実現が難しい。そこで我々は機械自体を5Gの無線で接続することで、人がクリエイティブにレイアウトが考えることができる世界を目指していく」と話す。

レイアウトフリー生産ラインのイメージ。5Gの無線制御により、人ではなく機械や設備が動くレイアウトフリーな生産ラインが可能になる。

セル生産ラインにAI/IoTによるリアルタイムコーチングを導入

 レイアウトフリー生産ラインは中品種の変量生産向けを想定しているのに対し、多品種の少量生産向けには、「人」中心の製造現場を「i-Automation」と5Gを組み合わせて改善していくという。
こうしたセル生産ラインに対して、オムロンでは従来からICTの導入に注力しており、ディスプレイを始めとする各種機械と人が協調して動く環境を構築してきた。福井氏は「我々はここに5Gの技術を導入することで、人と機械の関係を進化させた融和の世界に持っていきたい。将来、5Gが工場の中で標準になった場合、様々なセンサデータを採取して人にフィードバックすることができるので、これにより働く人をサポートし、生産性の向上と働く楽しさを生み出す。我々はこれをAI、IoTによる“リアルタイムコーチング”と名付けた。これは完全に未来の姿であり、誰も見たことが無いものだ」と話す。
 「リアルタイムコーチング」では、作業をしている人の動きをAIで解析することで、ミスが発生しやすい作業ポイントをリアルタイムに通知することができる。人の動きというデータをリアルタイムに収集するには100個以上のセンサが必要となるが、5Gの伝送容量であれば、その膨大なセンサデータを扱うことができる。福井氏は「こうしたセンサデータを解析することにより、ミスを防ぐだけではなく、作業員自身が自分の得手、不得手を知ることができるので、習熟度を客観的に把握して自分自身でクリエイティビティにコーチングできるようになる。修練度が上がることで作業効率が良くなるので、作業員のモチベーションもアップし、楽しんでモノづくりができる。そうした世界を、5Gの技術を使って実現していきたいと考えている」と話す。

作業員のモーションをキャプチャしてAIで解析。5Gであれば、これを作業員にリアルタイムにフィードバックできる。

ドコモ、ノキア、オムロンが描く未来の工場・2

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