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三菱電機の通信・映像ソリューション ~郡山工場の展示会と、IoTで効率化を実現した新生産棟~(2)

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IoTを駆使して効率化を実現した新生産棟

 新生産棟の生産ラインでは常にネットワークカメラによる記録が行われており、作業品質の改善や、作業者への指導、教育に活用されている。こうしたカメラ情報と、前述の展示会で紹介されていた技術も含めた各種IoT技術を組み合わせることで、品質状況をリアルタイムに分析して見える化し、有効な対策を素早く実施できる。
 例えば、同社では新生産棟の生産ラインから上がってくる品質のデータや、タクトタイムを表すような生産進捗のデータといった情報のグラフを自動生成するツールを導入しており、現場内では50インチの大画面モニタによりリアルタイムで確認ができるようになっている。また、こうした情報は事務所エリアや、兵庫県にある設計部門でも確認できるようになっている。工場内に設置された約400台のカメラは、トラブルが発生した場合にその時刻の映像を確認するツールとしても活用されている。同社は「こうしたIoTの適用拡大とデータの一元管理、それをリアルタイムで分析して改善に繋げるといったPDCAサイクルを高速で回すことで、安定した生産を実施し、お客様にご満足いただける製品をお届けできるように、工場一丸となって務めている」と話す。

ネットワークカメラの生産エリア

 ネットワークカメラ「MELOOK3シリーズ」の生産ラインでは、固定タイプやドームタイプといった様々な製品モデルがあるため、機種の切り替えをしながらフレキシブルに生産できる体制になっている。ネットワークカメラと接続されるレコーダの生産ラインでは、HDDやSSDを搭載した12種類のラインアップを生産している。受注生産となる高機能旋回カメラの生産ラインでは、ユーザの仕様に合わせて夜間監視用のLED照明や、防雪フードといったオプションの組み立てにも対応できるという。同社は「どの機体にどのロットの部品が使われたかは全て記録している。当日生産分の材料は当日生産分の数量に正確に合わせて供給するので、生産終了時に残品が一切無くなる。これにより、例えば組み付け忘れが有った場合でも、すぐに気付くことができる」と説明している。

光通信製品の生産エリア

 光通信の生産エリアでは、様々な品種やオプションに対応するため、頻繁に生産ラインの組み換えが行われているという。その効率化について清水所長は「このエリアを模した三次元シミュレータを作り、人がどう動くかという動線をシミュレーションし、それを基に配置を最適化して生産ラインを構築している。この方法を導入したことにより、ラインの組み換えが非常に早くなったことに加え、30%ほどの省スペース化といった効果も出ている」と話す。
 今回の見学時には10G-EPONのラインでOLTが生産されていた。清水所長は「ケアレスミスを防ぐシステムも取り入れている」と話す。実際に作業の様子を見てみると、ライン付近のモニタには電子作業表が表示されており、作業者はその指示に基づいて製品を組んでいた。また、ラインの天井からは複数の電気ドライバが吊るされており、その作業段階で使う電気ドライバしか動かない仕組みだという。清水所長は「これらのドライバは、必要な回数の動作を済ませると次のステップに移るようになっている。また、ネジ等の部品は棚ごとに管理されており、作業の進捗に合致しない棚に手を伸ばすとブザーが鳴る仕組みになっている」と話しており、「こうしたシステムを導入してから、作業の品質が向上したことに加え、新しい作業者が入ってからの立ち上がりが早くなったというメリットも得られた」と話している。

IoTを駆使した新生産棟のネットワークカメラ製造エリア。清水所長は「この新しい生産棟が完成したのを機に、以前は兵庫県で行っていた光通信製品の生産もこちらに移した。そのタイミングで急遽、プリント基板を増産しなくてはならなくなったのだが、IoTで生産ラインの様々なデータを取得できたことで、例えば、はんだ付けで使用するノズルの交換時期を最適化するなどの効果があり、交換に費やす時間の短縮、エラーの減少、更には交換部品の節約といった効果が得られ、増産に対応できた。こうした効率化は、この一年でだいぶ進んでいる」と話す。また、ネットワークカメラと光通信製品を同じ生産棟に集約したことによるメリットについては「作業員の配属が柔軟になったので、繁忙期に入ったラインに人員を移すといった効率化に繋がっている。また、カメラと光通信製品はコンデンサのような部品については共通部分もあるので、一括購入という効率化に繋がった。想定していなかった効果として、ネットワークカメラのラインで改善した方法が、光通信製品側でも使えたというメリットも出てきている」と話す。

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