5G、ローカル5G、B5G/6G分野で注目を集めている、Siradelの3Dモデリングと無線ネットワーク設計支援ソリューション
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Siradel(シラデル)は、ラジオ波伝播解析や無線ネットワーク設計において国際的な評価を得ているフランスの企業だ。最近では特に、5G、B5G/6Gやスマートシティの分野で注目を集めている。
同社の技術は、3Dモデリングと都市スケールの設計支援に強みがあり、その3D都市モデリングとリアルな電波伝播シミュレーションの組み合わせは、B5G/6Gの設計者にとって有用だ。海外ではOrangeやQualcomm等との協業実績が有る他、IEEEや国際会議でも技術論文を発表しており、アカデミックと業界の橋渡し役も担っている技術志向の専門企業として、独自のポジションを築いている。
Siradelのアジア太平洋地域 セールス&ビジネス 開発責任者であるVincent Weis氏は「日本ではすでに20年以上にわたり、大手通信事業者や自治体との協業を行っている。日本市場での更なる拡大に向けて、弊社の公式ウェブサイトの日本語版も新たに公開した。弊社の主要な強みの一つとして、地域全体の3Dデジタルツインの構築が有り、たとえば東京の3Dデジタルツインのリンクもご紹介している。これらのデータと可視化機能は、通信業界や研究機関のみならず、通信を超えた幅広い分野での活用が可能だ」とし、「現在、日本での事業開発の加速フェーズにあり、無線ネットワークおよびデジタルツイン ソリューションを専門とする企業としての存在を示すために取り組みを強化している」と話す。
Siradel は日本市場での取り組み強化の一環として、ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2025(5月28日~30日:東京ビッグサイト)に初出展し、Siradel 360ソリューション スイートを展示する。同ソリューションは、無線ネットワークのシミュレーションおよび設計ソフトウェア、3D地理空間データ(地域または建物のデジタルツイン)、そして専門的なコンサルティング サービスを組み合わせたものであり、顧客はソフトウェア、データ、サービスを個別に選択することも、ワンストップの提供を選択することも可能だ。
本記事では、同ソリューションを構成する、「Siradel InoWave」「Siradel Planner」「Siradel Web Services」の機能について纏めた。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)
テレコムの研究開発を支援し、接続性をシミュレート、テスト、最適化するRFデジタルツイン「Siradel InoWave」

Siradel InoWaveの画像例。
Siradel InoWaveソリューションは、Siradelの先進的な「Volcano」計算エンジンを基盤に、屋内外の3D都市モデルを基にした高精度な電波伝播シミュレーションを実現している。これにより、都市部や工場内など複雑な環境でも、実環境に即したシミュレーションが可能だ。Weis氏は「Siradel InoWaveは、業界の研究者やエンジニア、さらには公共および民間の研究機関にとって強力なプラットフォームだ。これにより、アルゴリズム、周波数帯域、機器のリアルなシミュレーション(デジタルツイン)をご提供し、B5G/6G技術(MIMO、RIS、NTN、JCAS/ISACなど)に関する研究活動を支援し、加速する」と説明している。
これらの機能は、最適なユーザ体験を提供する没入型3Dグラフィカル インターフェイス(Siradel InoWave GUI)、またはJupyterノートブックやPythonスクリプトを通じてアクセス可能なAPI(Siradel InoWave API)を介して利用でき、完全な柔軟性を提供する。
また、革新のためのツールボックスおよび開発フレームワークとして位置付けられており、複雑な環境での概念のテストおよび検証に最適なものとなっている。
さらに、APIを活用することで、ラジオチャネル エミュレーション ツールやネットワークおよびデバイスのパフォーマンステスト プラットフォームなど、サードパーティのソリューションへの統合が容易だ。Weis氏は「例えば、Keysight Technologiesとの統合に成功している」と話す。
こうした高精度なシミュレーション能力と柔軟な環境設定は、次世代通信技術の評価やスマートシティのネットワーク設計において、優れた性能を発揮する。特に、高度な3D伝播モデルと広範な周波数帯(ミリ波を含む)への対応は、B5G/6Gネットワークの正確なモデリングとシミュレーションに不可欠であり、研究開発や高度なネットワーク設計を行う専門家にとって、非常に有用なツールと言えるだろう。Weis氏は「このソリューションは、すでに日本のテレコム業界の主要なプレイヤーによって革新的なプロジェクトで使用されている」と話す。
屋外および屋内プロジェクト向けのグローバル3Dデータへのシームレスなアクセスを提供するSaaSソリューション「Siradel Planner」

Siradel Plannerの画像例。
Siradel Plannerは、Amazon Web Services(AWS)プラットフォーム上のAppStreamサービスを通じて利用できる最先端のSaaSアプリケーションであり、5G、プライベートネットワーク(ローカル5G)、IoT、FWA(固定無線アクセス)などの分野で高く評価されている無線ネットワーク設計ソリューションだ。最近では、今年1月に終了したGoogle Network Plannerの代替としても注目が高まっている。
その特長は、ログインするだけで即座に使用可能な高度なグローバル3Dジオデータ、そして同データとキャリアグレードの伝播モデルの統合により、高精度なシミュレーションを実現している点だ。また、AIドリブンの自動化機能を搭載し、Sub-6GHzからmmWaveまでのすべての周波数帯域にわたってネットワーク設計を最適化し、屋外(都市規模)および屋内(ビル規模)の設計をシームレスに処理することもできる。
既存の技術との統合による優れたセキュリティ性や、ローカルおよび国際的な規制に準拠した周波数管理や干渉予測機能により、複雑な環境の管理も可能だ。これにより、モバイル ネットワーク、プライベート ネットワーク(4G/5G/IoT/Wi-Fiなど)、RAN/バックホール設計、メッシュ ネットワーク、FWAのいずれであっても、重要な側面をすべてカバーする。
こうしたSiradel Plannerの組み込み地図データ編集機能と3Dジオデータ機能により、精度の高い効率的な設計が可能になり、時間を節約し、将来にわたるネットワーク性能を保証する。その高精度なシミュレーション能力と柔軟な環境設定は、特に都市部でのミリ波伝播解析や工場内のプライベート5Gネットワーク設計など、複雑な環境でのネットワーク設計において真価を発揮するだろう。
Weis氏は「このオールインワン ソリューションは、スケーラブルでカスタマイズ可能であり、スタートアップから企業まであらゆる規模のビジネスのニーズに対応する。すでに日本の通信業界の主要なプレイヤーによって、挑戦的なプロジェクトで使用されている」と話す。
クラウドネイティブ ネットワークプランニングAPI「Siradel Web Services」
Siradel Web Services は、ネットワーク設計プロセスを自動化および効率化するために設計された多目的なクラウドネイティブのワイヤレスネットワーク プランニング APIであり、標準的な無線計画ツールを補完し、負荷を軽減する。Weis氏は「多様なユースケースにおいて極めて高精度なシミュレーションを提供し、大規模な信頼性を保証する。また、今日のAIドリブンの最適化戦略を採用する事業者にとって不可欠なプラットフォームとして機能し、データに基づく意思決定のための堅牢な基盤を提供する」と説明している。
主な特長は次の通り。
自動化:エラーを削減し、一貫性を確保し、ワークフローを加速する。
スケーラブルなREST API:カバレッジマッピング、統合レポート、規制遵守などのタスク向けに、オンデマンドでシミュレーションを生成する。
将来性:膨大なネットワークデータを効率的に処理し、大規模な導入や最適化に最適だ。
このAPIは、スマートシティやIoTネットワークを設計する都市計画者や通信事業者にとって、特に有用だ。Weis氏は「高度なAPIアクセスと自動化機能を活用することで、業務の効率性、スケーラビリティ、精度を高め、最終的にはビジネス成果を向上させることができる」と話している。

MWC2025(3月:バルセロナ)で、日本からの来場者に説明をするWeis氏(左)。Siradelの技術力の高さは、世界の技術者から高く評価されている。