Broadcom が、同社の第3世代CPO技術を搭載した業界初の102.4 Tbps イーサネット スイッチを出荷開始
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Broadcomは10月8日(カリフォルニア州パロアルト)、同社の第3世代Co-Packaged Optics(CPO)イーサネットスイッチであるTomahawk 6 – Davisson(TH6-Davisson)の出荷開始を発表した。
Broadcomは「AIネットワーキングの需要急増に対応するために特別に設計されたTH6-Davissonは、業界初となる102.4Tbpsという前例のない光対応スイッチング容量を実現する。現在市販されているCPOスイッチの帯域幅を2倍にするTH6-Davissonは、データセンタ性能の新たなベンチマークを確立する」とし、「BroadcomのCPOイノベーションとフィールド出荷実績を基盤とするこのプラットフォームは、現在市販されているCPOスイッチの帯域幅を2倍にするとともに、電力効率とトラフィック安定性を大幅に向上させ、世界で最も要求の厳しいAIクラスターのスケールアップとスケールアウトに必要な光インターコネクト性能を実現する」と説明している。
Broadcomの光システム部門担当ヴァイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるNear Margalit氏は「当社の第3世代CPOイーサネットスイッチであるTH6-Davissonは、AIインフラストラクチャにとって大きな進歩を象徴している」とし、「リンクの安定性とエネルギー効率を向上させることで、よりスムーズでコスト効率の高いAIモデルのトレーニングを実現する。このプラットフォームは、光インターコネクトの3つの要件、すなわちモデルFLOPの利用率向上、ジョブ中断の削減、クラスターの信頼性向上を実現することで、大規模なAIクラスターを拡張できるように設計されている」とコメントを出している。
CPO:AIネットワーキング専用に構築
大規模なAIトレーニングと推論の増加により、XPUとGPUが数万台のサーバ間で膨大なデータセットを交換するため、データセンタにおけるEast-Westトラフィックはかつてないほど増加している。従来のプラガブル光スイッチは、この成長に限界を迎えており、消費電力の増加、レイテンシの増加、システムフットプリントの拡大といった問題を抱えている。TH6-Davissonは、Broadcomの最先端かつ堅牢なCPOアーキテクチャを体現している。このアーキテクチャは、複数世代にわたる開発を通じて微調整され、これらの障壁を克服し、次世代AIネットワークに必要な帯域幅、効率、信頼性を提供する。
世界クラスのエネルギー効率
TH6-Davissonは、電力効率を徹底的に追求して設計された。TSMC Compact Universal Photonic Engine(TSMC COUPE)テクノロジーに基づく光エンジンと、高度な基板レベル・マルチチップ・パッケージングを異種統合することで、このスイッチは信号調整の必要性を大幅に低減し、トレース損失と反射を最小限に抑える。その結果、光インターコネクトの消費電力を70%削減(従来のプラガブルソリューションの3.5倍以上)し、ハイパースケールおよびAIデータセンタのエネルギー効率を飛躍的に向上させる。
リンク安定性とトラフィックパフォーマンスの向上
AIトレーニングジョブの規模拡大に伴い、リンク安定性が重大なボトルネックとなり、わずかな中断でさえXPUとGPUの利用率に測定可能な損失をもたらす TH6-Davissonは、光エンジンをイーサネットスイッチと共通のパッケージに直接統合することで、この課題に対処する。この高度に統合された設計により、プラガブル トランシーバに固有の製造およびテストにおけるばらつきの要因の多くが排除される。その結果、TH5-Baillyリンクフラップ調査で検証されているように、リンクフラップ性能が大幅に向上し、クラスターの信頼性が向上する。
帯域幅の向上と相互運用性
チャネルあたり200Gbpsで動作するTH6-Davissonは、Broadcomの第2世代TH5-Bailly CPOソリューションのラインレートと総帯域幅を2倍にする。相互運用性を考慮して設計されたTH6-Davissonは、DRベースのトランシーバだけでなく、チャネルあたり200Gbpsで動作するLPOおよびCPO光インターコネクトともシームレスに接続できます。これにより、業界最先端のNIC、XPU、ファブリックスイッチとのスムーズな接続が保証され、次世代AIおよびクラウドクラスタを妥協なく拡張できる。
CPOロードマップ
先進のCMOSノードとデバイス技術の継続的なブレークスルーを活用し、Broadcomは現在、第4世代CPOソリューションを開発中だ。この新世代では、チャネルあたりの帯域幅が従来の2倍の400Gbpsに拡大するとともに、より高いエネルギー効率を実現し、将来のAIおよびクラウドネットワークの拡張性と持続可能性を実現するBroadcomのリーダーシップをさらに強化する。
TH6-Davisson BCM78919 製品のハイライト
・102.4Tbpsのスイッチング容量
・16基の6.4Tbps Davisson DR光エンジン
・リンクあたり200Gbpsの帯域幅
・フィールド交換可能なELSFPレーザモジュール
・512 XPUのスケールアップクラスタをサポートし、2層ネットワークではリンクあたり200Gbpsで最大10万以上のXPUを接続可能
・IEEE 802.3準拠 – 既存の400Gおよび800G規格との相互運用性を実現
Broadcomは現在、アーリーアクセス顧客とパートナー向けにTH6-Davisson BCM78919デバイスのサンプルを提供している。
Celesticaのポートフォリオソリューション&AIプラットフォームエンジニアリング担当SVP 兼 ゼネラルマネージャーであるGavin Cato氏は「Broadcomが新しいTH6-Davisson CPOソリューションを通じて、イノベーションを牽引し続けていることを嬉しく思っている。TH6-Davissonの高度な光統合、最適化された電力効率、そして強化されたパフォーマンスは、次世代AIインフラストラクチャとワークロード展開を提供するというCelesticaの戦略と合致する、魅力的な価値提案となるだろう」とコメントを出している。
Corning Optical Communications のCPOビジネスディレクターであるBenoit Fleury氏は「Corningは、AI対応データセンタの規模拡大が続く中で、BroadcomのCPO接続ニーズに高い性能と信頼性で応えられるよう、Broadcomと緊密に連携し続けています。TH6-Davissonシステム向けのフェースプレートからチップまでをカバーする完全な光アセンブリなど、より強力で効率的なAIネットワークを実現するために、継続的なイノベーションに取り組んでいる。Broadcomの次世代CPOシステム開発に向けて、引き続き協業できることを大変嬉しく思っている」とコメントを出している。
HPE データセンタ ネットワーキング担当SVP 兼 ゼネラルマネージャーであるPraveen Jain氏は「HPE は、次世代のAI ネイティブ型ネットワーキング ソリューションに向けて、Broadcom と TH6-Davisson を通じた協業を継続できることを誇りに思っている。両社の協力により、クラウドのお客様は新たなレベルの効率性、信頼性、そしてパフォーマンスを実現し、AIインフラストラクチャの次世代への道を切り拓くことができる」とコメントを出している。
Micas NetworksのCEOであるAndrew Qu氏は「Micasは、Broadcomの最初の2世代のCPOエンジンに携わってきた。最新のCPOエンジンであるBaillyは、数百万時間にも及ぶテストを経て、卓越した信頼性を実証した。すべてのデータは、ハイパースケーラーにおけるCPO導入の転換点を示している。Tomahawk 6 – Davissonのリリースは、まさに絶好のタイミングだ。業界が現在、800GでAIネットワークをスケールアウトし、1.6Tインターコネクトへの準備を進めている中、Davissonは、次世代の大規模AIインフラストラクチャを自信を持って構築するために必要な、大幅な省電力、設備投資効率、そして堅牢な安定性を提供する」とコメントを出している。
Nexthop AIのハードウェアエンジニアリング担当ヴァイスプレジデントであるPrasad Venugopal氏は「NextHopは、Broadcomと提携し、Broadcomの第3世代Davisson CPOを搭載した102.4T Tomahawk-6スイッチを開発できたことを誇りに思っている。このアーキテクチャは、消費電力(pJ/ビット)を大幅に削減し、ハイパースケーラーのAIファクトリーを支えるスケーラビリティを、比類のない価格性能比で実現する。Nexthop社の堅牢なSONiCと組み合わせることで、当社のハイパースケール顧客は、CPOのメリットをすべて備えた、包括的で信頼性の高いシステムを実現できる」とコメントを出している。
TSMC North AmericaのプレジデンントであるSajiv Dalal氏は「TSMCは、Broadcomのような業界のイノベーターと連携し、AIの高まる需要に対応し、次世代ネットワーク向けのスケーラブルな技術を実現する、エネルギー効率と性能に優れた画期的な技術開発を推進することに尽力している。当社のCOUPEプロセス、高度な半導体製造の専門知識、そして緊密なパートナーシップを活用することで、BroadcomがTomahawk 6-Davissonプラットフォームを実現できるよう支援できることを誇りに思っている」とコメントを出している。
編集部備考
■Co-Packaged Optics(CPO)は、次世代スイッチ技術の“有望株”として長らく期待・議論されてきた。しかし実装難易度の高さや、ユーザ視点でのプラガブルからの変化(冷却・歩留まり・保守性など)の懸念から、商用化は一部用途に留まっていた。そうした中でBroadcomが第3世代CPOを採用した102.4 Tbps級スイッチを出荷段階に進めたことは、実用的な技術としての信頼性がさらに高まったことを示す重要な一歩と言える。ここでは、今回の発表が51.2 Tbps世代を含めCPO関連市場にどのようなインパクトを与えるのかを考察したい。
CPO使用を想定している領域の背景である、電気配線による信号損失と消費電力の壁については、これまでも学会や技術カンファレンス等で様々な議論が展開されてきた。これを端的に纏めると、51.2 Tbps世代を境に、従来のプラガブル光モジュールではスイッチASICからの電気的距離が限界に近づいており、CPOのように光エンジンをチップ近傍に統合するアプローチが不可欠になりつつあった。
この背景を踏まえて今回のニュースリリースを読むと、Broadcomの第3世代CPOは、102.4 Tbpsという次の段階に進んだことを示すと同時に、CPOの課題を量産可能な形で克服し、データセンタの消費電力削減や冷却効率向上を現実的なレベルに引き上げた点にも、大きな意義があると感じる。CPOを組み込んだシステム全体の歩留まり・テスト性・運用性を確立したことにより、前の世代である51.2 Tbpsクラスのスイッチでも信頼性・性能・供給安定性が底上げされ、CPOへの安心感が市場全体に波及する可能性が生まれたのではないだろうか。
今回の成果は、CPOが一企業の技術検証フェーズを超え、業界全体が量産・運用段階を見据えるフェーズに入ったことを示唆している。今後、注目したいのは「量産の安定化」と「エコシステムの整備」だ。CPO対応のNICや光ファイバ、相互接続規格、検証環境の整備・普及が進むことで、CPOは先鋭的な技術ではなく、データセンタの標準構成要素として定着するだろう。Broadcomの今回の出荷は、その転換点を示す出来事として、技術進化の節目に位置づけられる。今後、アーリーアクセス顧客やパートナーがどのような反応を示すのか、非常に興味深い。