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さまざまな旅客機・航空路での高速インターネットサービスの実現に貢献【三菱電機】

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世界最薄クラスの航空機用電子走査アレイアンテナ技術を開発

 三菱電機は2月6日、NICTと共同で、飛行中の旅客機内における100Mbps以上の大容量・高速通信を目指し、厚み3cm 以下の世界最薄クラス※1のKa 帯対応航空機用電子走査アレイアンテナ(以下、AESA)技術を開発したと発表した。
 より大容量・高速通信が可能なミリ波帯(V帯)の要素技術についても、三菱電機単独でアンテナ素子を開発、また、東北大学および東北マイクロテックと共同で高周波集積回路を開発し、ミリ波帯対応の航空機用AESAの実現も可能にした。三菱電機は「大型機から小型機まで機体サイズに左右されず搭載可能で、高緯度地域にも対応しているため、世界中の航空路で、オンデマンド動画再生など高速インターネットサービスの実現に貢献する」としている。
※1:2020 年2 月6 日現在、三菱電機調べ

開発技術を適用した製品イメージ

開発の背景

 近年、全世界に通信ネットワークを提供できる低軌道通信衛星コンステレーションが計画されるなど、衛星通信によるインターネットサービスの市場が拡大している。これに伴い、大容量・高速通信といったニーズに対応すべく、現在主流のKu帯より高い周波数であるKa帯を利用した衛星通信サービスが開始され、また、Ka 帯より高い周波数であるミリ波帯の衛星通信サービスも計画されている。一方、飛行中の旅客機で衛星通信を行う航空機搭載用衛星通信用アンテナは機械駆動式が主流であるために大型の旅客機への搭載に限られており、中・小型旅客機において衛星通信サービスに対応するためにはアンテナの薄型化・小型化が必要だった。
 三菱電機は今回、NICT が開発したアンテナ素子と三菱電機が開発した高周波分配・合成回路と高周波集積回路を一体形成することにより、大型旅客機だけでなく中・小型旅客機にも搭載できるKa帯対応の世界最薄クラスのAESA 技術を開発した。これにより世界中の航空路で、オンデマンド動画再生などの高速インターネットサービスができる100Mbps以上の大容量・高速通信の実現に貢献するという。また、Ka 帯より高速な通信ができるミリ波帯のアンテナ素子と高周波集積回路を開発し、ミリ波帯対応の航空機用AESA の実現を可能にしている。

開発の特長

高緯度地域に対応した世界最薄クラスのAESA により、さまざまな航空路・旅客機における衛星通信の大容量・高速化に貢献
 従来の機械駆動式の衛星通信アンテナは、アンテナ可動域と駆動機構が必要であるため、中・小型航空機などへの搭載は困難だった。今回、NICT が開発したアンテナ素子と、三菱電機が開発した高周波分配・合成回路、および高周波集積回路を一枚のプリント基板上に形成・実装し、厚み3cm 以下の世界最薄クラスのKa帯対応AESA 技術を開発した。
 一方、Ka帯より高い周波数であるミリ波帯においては、アンテナ素子の電力効率の低下が課題だった。今回、プリント基板内に空洞を形成する独自のミリ波帯中空構造アンテナ素子を開発し、ミリ波帯においても良好な円偏波特性と電力効率の向上を実現した。仰角20 度の低仰角方向にビーム走査した場合においても高いアンテナ性能が維持できるため、高緯度地域を含む多くの航空路に対応できる。

ミリ波帯中空構造アンテナ素子の構成と開発品

Ka帯・ミリ波帯の高周波集積回路の開発により、次世代大容量衛星通信に対応
 衛星通信用アンテナの小型化・高性能化においては、送信・受信回路に用いられる高出力増幅器と低雑音増幅器の性能が重要となる。今回、最先端SiGe半導体製造プロセスを用い、世界最高レベル※1の電力付加効率29.1%(従来比1.8倍※2)の高出力増幅器と、雑音指数1.8dB(従来比0.8倍※2)の低雑音増幅器を搭載したKa 帯高周波集積回路を開発した。これにより、大容量・高品質なKa 帯衛星通信システムの実現に貢献するという。
 また、次世代のミリ波帯衛星通信用AESA を実現するためには、高周波集積回路を高密度に配列しなければならず高周波集積回路のさらなる小型化が必要だった。今回、東北大学および東北マイクロテックと共同で、シリコン貫通電極により複数の高周波集積回路を積層化したミリ波帯3 次元実装高周波集積回路を世界で初めて開発し、ミリ波帯衛星通信システムに対応したAESA の実現を可能とした。
※2:三菱電機従来製品との比較において

 三菱電機は今後の展開について「通信試験等の実証実験を行った後、Ka帯AESAは2023年以降、ミリ波帯AESAは2027年以降の製品化に向けて開発を進める」としている。

ミリ波帯3次元実装高周波集積回路