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エアバス、NTT、ドコモ、スカパーJSATの4社が、HAPSの早期実用化に向けた研究開発などの推進を検討する覚書を締結

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衛星とHAPSを組み合わせた大規模ネットワーク構想の実現をめざす

 エアバス、NTT、ドコモ)、スカパーJSATの4社は1月17日、成層圏(上空約20km)を飛行する高高度プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下、HAPS)の早期実用化に向けた研究開発、実証実験の実施に関する協力体制構築の検討を推進すると発表。覚書は1月14日に締結したという。

 エアバスのHAPS「Zephyr(ゼファー)」とNTT、ドコモ、スカパーJSATの通信ネットワークのコラボレーションにより、HAPSの接続性およびHAPSを利用した通信システムにおける有用性の発見、および技術やユースケースの開発に向け、4社間の連携を推進していく。
 4社は5Gのさらなる高度化、および6Gに向けた取り組みとして、空・海・宇宙などを含むあらゆる場所への「カバレッジ拡張」の検討を進めている。中でもHAPSによるネットワーク構築は空・海へのカバレッジ提供を容易に実現できることから、災害対策やイベント会場など人が密集する場所での通信容量の確保、建設現場での重機の遠隔操作などに有効であると考えられている。また、この「カバレッジ拡張」の実現に向け、HAPSに加え、静止軌道衛星(geostationary orbit satellite、以下、GEO)および低軌道衛星(low earth orbit satellite、以下、LEO)を用いた非地上ネットワーク(Non Terrestrial Network、以下、NTN)技術が期待されている。
 4社は、GEO、LEO、HAPSなどのNTN技術を用いたアクセスサービスを「宇宙RAN(Radio Access Network)」と称し、検討を進めている。宇宙RANを提供して超広域カバレッジを実現することで、災害対策だけでなく、離島やへき地のエリア化、飛行機や船などの通信環境の飛躍的な改善など、利便性の向上や新たな付加価値の提供が可能となる。
 4社は「今回の覚書締結により、この宇宙RAN事業の促進もめざして4社間の連携を推進していく」としている。

 今後4社は、HAPSによる成層圏からの通信に焦点を当てた技術に関する研究開発に加えて、HAPSの機体開発やHAPSの運用に向けた標準化・制度化への働きかけ、およびHAPSによるネットワークサービスの商用化に向けたビジネスモデルに関する検討も行う。主な研究開発の対象として、地上の移動機との接続や基地局バックホールなどにHAPSを適用する可能性に関する検討や、HAPSを利用した通信システムにおける様々な周波数帯の通信性能の評価、およびHAPSと衛星および地上基地局との連携に向けた技術的な検討を行い、宇宙RAN事業を促進していく。また、今後は衛星・HAPSなどのNTN技術によるネットワーク構築の実証実験を視野に入れた協力体制も構築していく予定だという。

 なお、ドコモ、エアバスの2社は、ドコモより2021年11月にリリースされたとおり、エアバスが開発したHAPS「Zephyr S」を用いた成層圏と地上間の電波伝搬の実証試験に成功している。この実験により、HAPSによる成層圏から地上への持続的なネットワーク提供が可能であることを実証した。

研究開発の概要

 エアバス、NTT、ドコモ、スカパーJSATの4社は、災害対策や超広域カバレッジなど、5G Evolution&6Gにおけるモバイル通信の高度化や利便性の向上、および新たな付加価値の提供に向けて、HAPSや静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)を用いた非地上ネットワーク(NTN)技術や、それらの技術を活用した宇宙RANシステムなどの研究開発を進めていく。

衛星・HAPSによる通信サービスの提供イメージ

 GEO、LEOおよびHAPSによるネットワーク構築は、空・海・宇宙へのカバレッジ拡張をはじめ、災害対策や基地局バックホール、産業IoTなどさまざまなユースケースに有効だ。

衛星・HAPSによる通信サービスの提供イメージ

衛星・HAPSによる宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想

 NTTのNW/コンピューティングインフラと、スカパーJSATの宇宙アセット・事業により構築される宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業では、”宇宙センシング(地上と宇宙のセンシングデータ統合基盤)”、”宇宙データセンタ(宇宙における大容量通信・コンピューティング基盤)”、”宇宙RAN(宇宙コミュニケーション基盤)”の3つの機能による、宇宙まで含めた情報収集から価値化までの流れを実現する。
 宇宙センシング事業では、宇宙と地球を統合したセンシング基盤の提供により、宇宙データの価値向上、宇宙データ利活用の可能性拡大に貢献する。
 宇宙データセンタ事業では、宇宙で収集される膨大な各種データなどを、高速光通信ネットワークを通じて即座に宇宙空間にて情報集約・分析処理し、情報を必要とするユーザに必要な情報のみを即座に届けることで、宇宙データ利活用のリアルタイム性、ユーザ利便性の飛躍的な向上に貢献する。

衛星・HAPSによる宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想

宇宙RAN(Radio Access Network)システム構成

 宇宙統合コンピューティング・ネットワークの事業内容の一つである”宇宙RAN”では、GEO、LEO、HAPSを用いたアクセスサービスの構築により、5G Evolution&6Gにおけるコミュニケーション基盤を提供する。

エアバス社HAPS(Zephyr)

 エアバス社が開発を行っているHAPS(Zephyr)は、機体先端の「ペイロード」と呼ばれる部分に基地局設備などの通信機器を搭載することで、成層圏から地上への通信サービスの提供を可能にする。ドコモ、エアバスの2社は、「Zephyr S」を用いた成層圏と地上間の電波伝搬の実証試験に成功し、HAPSによる成層圏から地上への持続的なネットワーク提供が可能であることを実証した。

エアバス社HAPS(Zephyr)

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