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NECが、我孫子事業場から本社ビルに太陽光発電による再生可能エネルギーの自己託送を開始

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発電量と電力消費量の高精度な予測を可能とする独自AIを活用

 NECは2月5日、遠隔地で発電した電力を電力会社の送配電ネットワークを利用して送電する自己託送により、NEC 我孫子事業場(千葉県我孫子市)に設置する太陽光発電設備にて発電した余剰電力のNEC本社ビル(東京都港区)への送電を開始したと発表した。

 NECは「本取り組みは、発電量と電力消費量の高精度な予測などを可能とするNEC独自のAI技術を活用して高度なインバランス(※)管理を実現している」と説明している。

(※)インバランス:需要計画と需要実績間または発電計画と発電実績間の差分のこと。自己託送を行う際には需要量や発電量の計画値の提出を義務付けている計画値同時同量制度により、日々の計画提出に必要なオペレーションへの対応や、計画と実績が乖離することで発生するペナルティ(インバランス料金)などの負担が生じる。

 これにより、NEC本社ビルの年間消費電力において、最大約10%を我孫子事業場からの自己託送による再生可能エネルギーでまかなうことが可能となり、CO2排出削減量も最大約100トン/年間の効果を見込んでいる。NECは「本社ビルでは、これまで電力会社が提供するグリーン電力メニューや非化石証書の活用を進めてきたが、今回の取り組みにより自社発電による再生可能エネルギーのさらなる利用拡大を実現する」としている。

NEC 我孫子事業場の太陽光発電設備

背景
 グローバルで脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー発電や蓄電設備の普及・利用拡大が加速する中で、企業による化石燃料から再生可能エネルギーへの代替比率向上や電力の利用効率化がより一層求められている。こうした中、自社の事業拠点や保有する敷地などに太陽光発電設備などを設置し、発電した電力をその事業拠点内での消費だけでなく、余剰電力を別拠点へ送電する自己託送の取り組みが注目されている。

 NECでは、従来から各事業場にて太陽光発電設備を設置し再生可能エネルギーの自給率向上にむけて取り組んできた。特に、通信機器の試験・評価を行う我孫子事業場では、2019年から太陽光発電や蓄電池設備の設置を進め、2021年には「我孫子実証センター」を立ち上げ、リソースアグリゲーションに関する制御技術や需要予測技術の研究開発や検証を実施している。こうした取り組みの一環として、我孫子事業場の太陽光発電設備にて余剰となった電力について、NEC内の他拠点に自己託送を行う仕組みの整備を進めてきた。

自己託送の運用について
 NEC本社ビルへの自己託送は、約4MWの発電能力を有する我孫子事業場の太陽光発電設備において、事業場内の消費電力が少ない休業日などに発生した余剰電力を電力会社の送配電ネットワークを利用して送電する。自己託送を行うためには、発電量と電力消費量の予測からその差分を計算して電力広域的運営推進機関に自己託送計画を提出し、自己託送当日のインバランスを管理・抑制する仕組みが必要だ。今回の自己託送の運用では、NECが独自開発したAIを用いることで、事業場内での消費電力の実績データや将来の気象データなどから高精度に発電量や電力消費量を予測し、さらに蓄電池設備と組み合わせることで高度なインバランス管理を実現している。

 今後も我孫子事業場では太陽光発電設備の増設を予定しており、NEC本社ビルの需要に対して自己託送による割合を将来的には約20%まで高めることを目指すとともに、NECグループ全体における拠点間の自己託送の取り組みを進めていくという。また、NECでは今回の導入実績における知見やノウハウを活かし、企業や自治体向けに提供している「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」の自己託送支援機能を強化していく考えだ。

 NECは「2025中期経営計画において社会価値創造へ向けた成長事業『カーボンニュートラル関連事業』を推進しており、今後もAIをはじめとする先進技術を駆使して企業や自治体などが保有するエネルギーリソースの効率化や運用の高度化に貢献し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進していく」との方針を示している。