ローデ・シュワルツがADIと協力し、10BASE-T1S（車載Ethernet）のデコードを実現
DX/IoT/AI 無料ローデ・シュワルツは5月9日、ADI(Analog Devices, Inc.)と協力し、R&S MXOx-K560オプションを装備したR&S MXO 4/5シリーズのオシロスコープを使って10BASE-T1S（IEEE802.3cg）通信のデコードを可能にしたと発表した。
ローデ・シュワルツは「ADIのE2Bと呼ばれる10BASE-T1S Ethernet to Edge Busは、車載アプリケーションにおいて複雑さを軽減しながら柔軟性に優れたエッジ・ノードを実装できるようにするものだ。一方、当社のオシロスコープは、その高速な更新速度と大きなメモリ容量で知られており、パケットの捕捉やトリガリング、デコードを素早く行って、電気信号の全波形から細部にいたるまで比類のない確度で捉える能力に長けている。高速な更新速度により、通信バスで生じる断続的な障害をも検出可能だ」としている。
ローデ・シュワルツはADIと協力して、10BASE-T1S通信のデコードを実現した。
ローデ・シュワルツは業界団体IEEEとOPEN Allianceのメンバーとして、コンプライアンス・オプションやトリガ/デコード・オプションの提供を通じ、車載Ethernetの新規格10BASE-T1Sの開発のさらなる加速をはかっている。なかでもADIは、現実世界とデジタル世界の架け橋として、インテリジェント・エッジ分野でのブレークスルーを実現してきた世界的な半導体大手であり、車載接続ソリューションの主要プロバイダの1社だ。
10BASE-T1Sは、車載および産業用アプリケーションでの使用を想定したEthernetネットワーク技術の一つであり、これに対応のADIの10BASE-T1S E2B製品は、高度な最適化と同時に柔軟性の高いハードウェア・ベースのEthernetエッジ・ノード接続を可能にするソリューションとなっている。この新規格では、伝送距離25メートルで10 Mbpsという新たな低速グレードの導入だけでなく、スイッチが不要になるマルチドロップ伝送などの斬新な機能も追加される。特にADIのE2Bソリューションは、エッジ・ノードのマイクロコントローラを不要にして、すべてのソフトウェアの集中化を可能にすることで、次世代ゾーン・アーキテクチャとソフトウェア定義型自動車（SDV）の実現を支えている。こうした先進的技術は、車体やパワートレインのほか、車両全域に配されたセンサやアクチュエータをドメイン・コントローラあるいはゾーン・コントローラとリンクさせるのに特に適している。
R&S MXOシリーズのオシロスコープでは、デコードしたパケットが色分けして表示されるため、ADIのエンジニアはBeacon信号やCommit信号、MACデータフレームといった重要なプロトコル・メッセージを簡単に識別可能になった。そのため、より効率的なテストと検証を通じて、市場投入までの時間も短縮できる。
ローデ・シュワルツは「10BASE-T1Sは、新しいPLCA（Physical Layer collision avoidance：物理層衝突回避）技術を活用できるため、ネットワークに接続した多様なノードの通信のタイミングとパフォーマンスの検証が極めて重要だ。その際、捕捉波形をもとにデコードした全フレームの時間的整合性が確保されていれば、デバッグが簡単になり、正確なタイミングの測定も容易に行える。そのうえADIのエンジニアには、DMEシンボルのほか、スクランブル処理の適用/解除など、データ表示を様々に切り替えながら、捕捉したネットワーク・トラフィックに関する重要な情報を取得いただいている」と説明している。
10BASE-T1S Ethernet技術は、1つのネットワーク上で多数のノードをサポートできるという特別なメリットがあり、複雑なシステムに最適だ。接続距離が短く、データレートも低いことから、エネルギー効率とコスト効率にも優れている。このような10BASE-T1SにADIは革新的なアプローチで臨んでおり、フォームファクタのコンパクト化やエッジでのコスト削減、ブート時間の短縮を実現するとともに、低レイテンシの保証（bounded low latency）とパワーセーブやタイムスタンプ、時限動作といった機能を通じてシステム内の全ノードがシームレスに同期動作させられるという、OEMメーカーにとってSDVの本当の価値を実現できる。
ADIのFionn Hurley氏は「当社ADIの業界をリードする10BASE-T1Sソリューションについては、ローデ・シュワルツのオシロスコープを使用して信頼性の高い正確な測定を行っている。これによって高品質で堅牢な技術ソリューションをお客様に提供するという当社のコミットメントをいっそう強化できるからだ。特にADIでは、システム設計に対して全体論に立ったアプローチを採用しており、お客様が直面する課題の複雑さをしっかり把握して、そうした課題を克服できるようにご支援している。よりスマートで効率的な未来へと自動車産業を導いていきたいと考えてのことだ」とコメントを出している。
R&S MXOシリーズのオシロスコープを使えば、その高い性能と機能を十二分に活用して10BASE-T1S通信リンクのデバッグを行える。たとえばスペクトラム・モードやゾーン・トリガなどの標準デバッグ・ツールと高速な更新速度により、バス上の異常を簡単に検出できる。
ローデ・シュワルツは「IEEE 802.3cgおよびOPEN Alliance TC14仕様に準拠した10BASE-T1Sの測定が可能なMXOを使用することで、自動車業界の皆様にはこの成長著しい車載ネットワーク技術の性能と相互運用性を確実に実現いただける」としている。
