MarketsandMarketsが、地球観測小型衛星市場は2030年までに55億2,000万ドルに成長と予測
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MarketsandMarketsは1月9日(フロリダ州デルレイビーチ)、同社の最新の市場予測レポートである『Earth Observation Small Satellite Market – Global Forecast to 2030』のサマリーを発表した。
同レポートは、地球観測用小型衛星市場は2025年の26億4,000万米ドルから2030年には55億2,000万米ドルに成長し、年平均成長率(CAGR)15.9%で成長すると予測している。
同社は「地球観測用小型衛星市場は、防衛、気候監視、そして商業的意思決定を支援するための、タイムリーで高解像度の地理空間情報に対する需要の高まりを背景に、成長を遂げている」と説明している。
セグメント別の概要
・質量ベースでは、小型衛星(101~1,200kg)セグメントが17.1%という最も高いCAGRを記録すると予測。
・システムベースでは、衛星バスセグメントが予測期間中に市場を牽引すると予測されている。
・顧客ベースでは、防衛セグメントが2025年から2030年にかけて最も高い成長率で成長すると予測。
・周波数ベースでは、X-band(8~12GHz)セグメントが予測期間中に市場を牽引すると予測。
・地域ベースでは、アジア太平洋地域の地球観測小型衛星市場が2025年に57.0%のシェアを占めた。
主な動向
高周波数地球観測データへの需要の高まりが、地球観測小型衛星市場を牽引している。このデータは、防衛、環境管理、商用分析といった分野における計画策定を支援する。
質量ベースでは、小型衛星(101~1,200kg)セグメントが、予測期間中に地球観測小型衛星市場で最大の市場シェアを占めると予測
小型衛星(101~1200kg)セグメントは、予測期間中、地球軌道(EO)小型衛星市場において最大の市場シェアを占めると予測。この成長は、大型のEOペイロードを搭載でき、開発と打ち上げを順調に進めることができるセグメントの能力に支えられている。小型衛星は、より高い電力供給能力とセンサ容量を備えており、優れた画像撮影性能を実現する。ミッション要件が高解像度へと進化するにつれ、小型衛星の需要は予測期間中に増加すると予想。
システム別では、衛星バスセグメントが、予測期間中、EO小型衛星市場において最大の市場シェアを占めると予測
衛星バスセグメントは、予測期間中、EO小型衛星業界で最大の市場シェアを占めると予測。この成長は、モジュール式で信頼性が高く、電力効率の高いバスプラットフォームに対する需要の高まりに支えられている。これは、特定のペイロードやミッション期間の延長をサポートする。高度な電源システム、オンボードプロセッサ、熱管理ソリューションなどのサブシステム統合の強化も、採用をさらに促進する。衛星バスは柔軟な構成も可能にし、オペレータは単一ミッションのアセットから複数衛星のコンステレーションまで拡張できる。
アジア太平洋地域は予測期間中に最大の市場シェアを占めると予測
アジア太平洋地域は、中国、インド、日本、韓国における国家EOプログラムへの多大な投資により、予測期間中に最大の市場シェアを占めると予測。農業、環境モニタリング、防衛監視、災害対応を支援する衛星画像の需要が高まるため、EO小型衛星の利用が増加している。競争の激しい製造および打ち上げエコシステムは、ミッションコストをさらに削減し、新たな商業オペレータを呼び込んでいる。地域政府が商業セクターを拡大する中、アジア太平洋地域は世界的に小型EO衛星の採用をリードすると予測されている。
主要企業
Airbus、Thales Alenia Space、L3Harris Technologies、Planet Labs、MDA などが主要プレイヤーとして挙げられている。
編集部備考
■地球観測用小型衛星は、従来はリモートセンシングや防災、軍事用途を中心に語られてきた分野であり、情報通信の中核技術と見なされることは少なかった。しかし、市場の成長要因や技術的前提を丁寧に分解していくと、通信インフラとの結節点は着実に増えている。
本市場の成長を支えているのは「高解像度化」そのものではなく、高頻度・低遅延で地理空間情報を取得し、それを即座に流通・活用するニーズの拡大だ。この点において、地球観測小型衛星は、単独の観測システムというよりも、通信ネットワークに接続される分散センサ群の一部として再定義することができる。
ここでは、通信分野の観点から、地球観測用小型衛星の重要性について考察したい。
通信インフラを前提とした「センサ」としての地球観測
近年の地球観測は、撮像性能の向上と同時に、データの即時性が重視される方向にシフトしている。これは、観測結果を「後処理するデータ」から、「リアルタイム性を持つ情報」として扱うケースが増えていることを示している。この変化は、通信分野にとって二つの意味を持つ。
一つは、衛星から地上への高速ダウンリンクや地上ネットワークとの接続が、観測価値そのものを左右する要素になりつつある点だ。X-bandを中心とした周波数利用の拡大は、防衛用途に限らず、観測データの大容量化と即時転送ニーズを反映している。
もう一つは、観測データが通信ネットワーク上で他のデータと融合されることで、通信サービスの高度化に間接的に寄与する可能性である。基地局配置計画、災害時の通信復旧判断、インフラ監視といった用途では、地球観測データは通信を支える「外部センサ」として機能し始めている。
LEO通信との重なりとマルチオービット戦略
地球観測小型衛星の多くは低軌道(LEO)で運用されており、この点はLEO通信コンステレーションと完全に重なる。軌道高度、衛星数、地上局配置といった設計思想においても、両者の距離は年々縮まっている。
この重なりは、単なる技術的類似にとどまらない。通信事業者の視点から見れば、地球観測市場の拡大は、LEOインフラの需要を底支えする一因となり得る。マルチオービット戦略が注目される中で、通信専用衛星と観測専用衛星を明確に分離する必要性はなくなりつつある。
将来的には、通信・観測の両ペイロードを組み合わせたマルチミッション衛星や、観測事業者が通信コンステレーションを積極的に利用するモデルが一般化する可能性もある。地球観測市場の成長は、LEO通信の「用途の多様化」を示す指標の一つとして読むことができる。
アジア太平洋市場の拡大が示すもの
MarketsandMarketsのレポートでは、地球観測小型衛星市場においてアジア太平洋地域が最大シェアを占めるとされている。この地域は同時に、5G/6G、衛星通信、非地上系ネットワーク(NTN)の導入が急速に進む地域でもある。
ここで重要なのは、通信インフラの拡張と地球観測需要が、同じ社会課題を背景に拡大している点だ。災害対応、環境監視、インフラ老朽化対策といったテーマは、通信と観測の双方にとって共通の市場ドライバーとなっている。
この文脈では、地球観測小型衛星市場の成長は、通信市場の外側にある別のトレンドではなく、通信インフラが社会基盤として拡張していく過程で自然に派生する需要と捉える方が妥当だろう。
通信分野にとっての示唆
地球観測小型衛星市場は、通信分野から見れば周縁的に映るかもしれない。しかし、その成長要因を紐解くと、通信ネットワークの高度化、LEOインフラの多用途化、マルチオービット戦略の現実化といったテーマと密接に結びついている。
通信事業者や機器ベンダにとって、本市場は「直接参入すべき新市場」というよりも、通信インフラの価値を拡張するための周辺エコシステムとして捉える視点が重要になる。地球観測を通信の外側に置いたままにするか、通信に接続されたセンサ群の一部として再定義するか。その認識の差が、今後の戦略に影響を与える可能性は小さくない。






