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光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー:谷口 和彦氏【富士通オプティカルコンポーネンツ】

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■講演タイトル
FOE-8「次世代光ファイバの接続技術動向」
FOE-9「デジタルコヒーレント光トランシーバの最新技術動向」
FOE-15「光コパッケージと次世代シリコンフォトニクスの応用」

■コースリーダー
富士通オプティカルコンポーネンツ(株)谷口 和彦

富士通オプティカルコンポーネンツ(株)
代表取締役社長
谷口 和彦氏

 ここで紹介する三つの講演では、それぞれ次世代の高速化に直結する技術について語られる。コースリーダーを務める谷口氏は「シリコンフォトニクスは集積化に必須の技術となったが、Beyond 400Gではシリコン素材による高速化の課題や消費電力を抑える光コパッケージの実用化といった課題がある。一方、WDMではボーレートの高速化が求められるが光ファイバ当たりの通信容量の拡大は見込めなく、大容量化に限界が来ている。こうした課題の解決は既存の技術の延長線上では難しいことから、今回の講演では新しいアプローチの技術を取り上げた」としており、「感染症の蔓延や国家の覇権争いで業界や人々の交流が制限されようとも、光通信は世界中を繋ぎ続けた。これからは家庭やビジネスだけでなく、教育や医療、交通といった面でも信頼と創造の光が世界中を繋げていく。そのための光技術の発展を、聴講する皆さんをはじめ業界を挙げて進めていけると、私は強く信じている」と語る。

FOE-8 次世代光ファイバの接続技術動向
千葉工業大学工学部 機械電子創成工学科
教授
長瀬 亮

シングルモードファイバで構成された光通信ネットワークの容量限界が懸念されており、その解決策の一つとしてマルチコア光ファイバ(MCF)等を用いる空間多重光伝送システムの研究が進んでいる。この講演では、これら次世代光ファイバの接続技術について解説される。
 登壇する千葉工業大学の長瀬氏は、マルチコアファイバ用光コネクタの開発や光ファイバセンサの研究に携わっており、IEC TC86/SC86B Expertでもある。以前はNTT研究所に所属し、SC形光コネクタ、MU形光コネクタ等を開発していた経緯も有る。
 今回のテーマである次世代光ファイバの接続技術の課題には、どのようなものがあるのか。例えば、従来の光ファイバ接続の場合、フェルール端面の微小変形によって温度変動があっても、光ファイバの接触を維持することによって長期安定性を保持している。だがMCFの場合は中心以外にコアを有していることから、従来の原理では長期安定性を保持できず、安定したPC接続条件を新たに検討する必要がある。この課題に対し長瀬氏は、標準外径を有するMCFに取り付けたSC形光コネクタの長期信頼性として、低温試験・高温試験・混合温湿度サイクル試験・温度サイクル試験に取り組んでいる。
 また、MCFを接続する光コネクタの特性を測定する際にはファンアウト部品が必須となるので、測定時にファンアウト部品自体の特性が与える影響は重要となる。そこで長瀬氏は、MCFを接続する光コネクタの特性を測定する際にファンイン・ファンアウト部品を用いた3種類の方法により反射減衰量を測定し比較するといった研究にも取り組んでいる。
 谷口氏は「マルチコアファイバは海底用ケーブルの実用化も発表され、これまでとは違うフェイズに入った。今後、DC用途として短距離でコア数の多いタイプの実用化も期待されるが、コア数が増えれば接続技術の難易度も上がるだろう。今回の講演では、こうした背景の中で様々な試験に取り組んでいる長瀬氏がどういった接続技術に着目しているのか、また、利用シーンの広がりを考える上でロスと伝送距離の相関についてどのような見解をお持ちなのかも分かるだろう」と話している。

FOE-9
デジタルコヒーレント光トランシーバの最新技術動向
富士通オプティカルコンポーネンツ(株)第一オプティカルコンポーネンツ事業部
コヒーレント商品部
村井 将人

 デジタルコヒーレント技術は400ZRなどDCへの導入が始まろうとしており、更に適用領域の拡大が進んでいる。この講演では、コヒーレント光技術に関する最新状況・技術動向について800G、1.6T含め解説される。谷口氏は「今回の講演では、Beyond 400Gのトランシーバ展望について、異種素材の融合、いわゆるヘテロジーニアスなシリコン集積技術に着目した。400Gまではピュアなシリコンで実用化されてきたシリコンフォトニクス・トランシーバも、Beyond 400Gになるとスピードの限界ということで異種素材の融合による解決が検討されている。例えば、LNやInPといった光通信でよく使われる素材をシリコンと組み合わせた場合に、それぞれ異なるメリット・デメリットがあるので、本講演ではそれを比較する」と話している。
 登壇する村井氏は、富士通オプティカルコンポーネンツで光モジュールの開発に携わっている人物。先進的な取り組みで定評のある同社は、今年6月には800G向け100G Baud集積コヒーレントレシーバのサンプル提供を開始しているので、村井氏からは実ビジネスにも精通した観点で最新技術動向が語られるだろう。谷口氏は「400Gのデジタルコヒーレント光トランシーバがDCにも入り始めた今、800Gへの取り組みは将来の話ではなく目の前のビジネスとして認識する段階と言える。ここではDSPも大きな要素の一つであり、400Gで使われている7 nmのプロセッサが800Gになった時に、5nmで済むのか3nmが必要なのかといった技術検討も業界で注目されているので、そうした動向も今回の講演では触れる」と話している。

FOE-15
光コパッケージと次世代シリコンフォトニクスの応用
Intel Corp.New Business and Marketing, Silicon Photonics Product Div.
Sr. Director
Robert Blum

 この講演では、Intel より100Gから1.6Tプラガブルトランシーバの最新動向がレビューされる。光コパッケージ(CPO)が、いかに高密度に集積された部品から構成される光集積回路や複数の電気・光ICを集積する先進2.5/3Dパッケージ技術、あるいはシステムレベルで最適化された熱設計・機械設計などを広範囲にわたって必要としているのかを取り上げるという。谷口氏は「例えば800Gは標準化の中でもCPOとプラガブルに方向性が分かれている。スイッチのチップ付近にCPOを並べて電気インターフェースのリーチを短くするのは理想的だが、集積のハードルは高く、長所とされている低消費電力も現実的には気になるところだ」と話している。このようにマーケットコンセンサスが取れていない現状においては、各陣営の主張を鳥瞰的に精査しておくのが良いだろう。その重要なファクターの一つであるIntelの最新の主張を日本で聴くことができるという点でも、この講演は魅力的だ。
 また、シリコンフォトニクスの強みはDCの枠に留まるものではないことから、講演ではセンシングやLiDARといった、レーザや増幅器、受光器が集積された成熟した量産シリコンフォトニクス プラットフォームが必要とされる他のアプリケーションへの応用についても簡単に触れられる。例えば、自動運転車向けに開発されているセンサは、全周レーダと前方レーザを使って周囲の環境をモデル化するが、既存のLiDARシステムはインターフェースの影響を受けやすく、他の対象物の速度を測定する能力に限界があるので、シリコンフォトニクスによるアプローチが期待されている。そうした背景も有り、Intel傘下で自動運転技術を開発するMobileye社は、2025年頃までに自社の次世代LiDARセンサ技術製品群を動作させるのにフォトニクス集積回路を採用するとし、既に「CES 2021」でLiDAR用のSoCを発表している。谷口氏は「シリコンフォトニクスは生産数量に比例してコスト効率が上がるので、LiDARをはじめ数量の期待できる他業界のアプリケーションへの展開についてIntelがどのようなビジョンを持っているのかは、光通信業界の方々にとっても興味深い情報ではないか」と話す。
 登壇(※ビデオ録画講演を予定)するRobert Blum氏は、Intelのシリコンフォトニクスプロダクトディビジョンのマーケティングおよびニュービジネス担当シニアディレクター。Intel入社前は、Oclaroでストラテジックマーケティング担当ディレクターを務め、Oclaroの通信製品およびコンシューマ向けレーザ製品群に関わる様々なプロダクトマネジメントおよびマーケティングのディレクター職責を担っていた。また、スイス・ローザンヌのスイス連邦工科大学ローザンヌ校とカリフォルニア州のスタンフォード大学でも学び、研究を行っている。

(OPTCOM編集部)

特集目次

「通信・放送Week 2021」開催直前 主催者インタビュー

光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー

佐藤 良明氏【NTTエレクトロニクス】
FOE-K「そろそろ見えてきた!? DX時代におけるデータセンター戦略と光技術への期待」
FOE-K「半導体のイノベーションにより 潜在的なデジタルトランスフォーメーションを実現」
FOE-22「レーザ網膜投影技術:医療ヘルスケアからXR応用まで」

土井 健嗣氏【日本電気】
FOE- 1「光トランシーバの最新市場動向」
FOE-10「次世代ハイパースケールデータセンタにおける400Gbps 超級光トランシーバの最新動向」

岡安 雅信氏【華為技術日本】
FOE-2「光トランシーバの最新標準化動向」
FOE-14「InP/Siヘテロ集積シリコンフォトニクスの最新技術動向」

和田 悟氏【フジクラ】
FOE-3「AIを活用した光ネットワークの運用高度化の最新技術動向」
FOE-17「マルチコア光ファイバの最新技術動向」

太田 寿彦氏【古河電気工業】
FOE-4「IOWN/Beyond 5Gに向けた光ケーブルへの期待と将来展望」
FOE-6「光電融合・IOWN時代を担う、光半導体デバイス技術を紐解く」

界 義久氏【NTTアドバンステクノロジ】
FOE-5「近赤外光重合による光部品自動接続の現状と将来展望」
FOE-18「電気光学ポリマーを用いた光制御デバイス・テラヘルツデバイス」

石部 和彦氏【アンリツ】
FOE-7「Beyond 5Gアクセスネットワークに向けた最新光デバイス技術」
FOE-16「シリコンフォトニクスによる光トランシーバの集積化・高密度化の進展」

谷口 和彦氏【富士通オプティカルコンポーネンツ】
FOE-8「次世代光ファイバの接続技術動向」
FOE-9「デジタルコヒーレント光トランシーバの最新技術動向」
FOE-15「光コパッケージと次世代シリコンフォトニクスの応用」

清水 克宏氏【三菱電機】
FOE-11「Beyond 5G/6Gを支える光・無線融合技術」
FOE-20「光伝送領域におけるネットワークオープン化動向」

笹岡 英資氏【住友電気工業】
FOE-12「通信用光ファイバとファイバ型デバイスの基礎」
FOE-21「フォトニック結晶スローライトによる小型・非機械式 LiDAR」

鈴木 貴智氏【キーサイト・テクノロジー】
FOE-13「光トランシーバ測定の基礎」
FOE-19「デジタルコヒーレント光伝送の最新技術動向」

「通信・放送Week 2021」出展製品Preview