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光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー【FOE-1】光トランシーバの最新技術動向

INTERVIEW 有料

富士通オプティカルコンポーネンツ(株)
代表取締役社長
谷口 和彦氏

コースリーダー:
富士通オプティカルコンポーネンツ㈱ 谷口 和彦
サブリーダー:
日本電気㈱ 土井 建嗣

 FOEセミナー各コースの中でも、光トランシーバの動向を語る本コースは人気のコンテンツとなっている。今年は、今後の市場性の観点から400Gをメインに扱うようだ。コースリーダーの谷口氏は「400Gマーケットは、100G同様に座りの良い(長寿命かつ市場展開が見込める)マーケットと見ている。もちろん熱を気にせず、高ビットレートを狙うことは出来る。弊社も一昨年には600Gbpsまで単一波長で伝送できるコヒレントトランシーバや64GbaudのLN変調器・ICR、1.2Tbps DCO Daughter Cardを製品化してきたが、400Gでプラガブルかつ低コストの方が現在の市場ニーズとしては高いだろう」と語っている。谷口氏の言葉を裏付けるように、今の400G光トランシーバ市場はCiscoやJuniper等のシステムサプライヤも巻き込み、熱を帯びてきている。また、本コースでは400Gプラガブルをベースとして、昨年同様に今後のCo-package化へのセッションも用意されている。現状400Gの技術トレンドや今後の800G/1Tへ向けた技術的課題を整理するには最適のコースといえるだろう。

●データセンタ向け400Gトランシーバ/HiSilicon社の全シナリオ
HiSilicon Optoelectronics Co., Ltd.,
Senior R&D Expert,
Jiangwei Man

 本コースでは、毎年少なくとも1名は海外の有力企業よりスピーカーが招聘されるが、今年はHuaweiの子会社であるHiSiliconからの登場となる。ただ、コロナ禍の現況を踏まえてビデオ講演形式となるようだ。米中貿易摩擦を受けたBIS規制による諸事情は業界関係者なら知らぬものは皆無だろうが、同社の高い設計技術や今後のフォーキャストに興味を持たぬ業界関係者もまた皆無だろう。むしろ、今回は同社から直接話を聴くことが出来る貴重な機会といえる。谷口氏は「コロナの状況下で、よく講演を引き受けて頂けたと思う。データセンタ向け400Gトランシーバと演題に謳ってはいるが、おそらく話は短距離に留まらないだろう。彼らのビジネスプランは、中国国内向けでbaudレートを上げることで200Gを長延化させる方針と海外市場向けに400/600Gへキャパシティを上げてゆく方針に二分されると考えている。そこでカギを握るのは7nm CMOSプロセスのコヒレントDSPで、今後の部材調達に懸念が残るものの、広範囲な興味深い話が聴けるだろう」と期待を寄せる。

●400G ZR/Metro光トランシーバの今後の展望
富士通オプティカルコンポーネンツ㈱
オプティカルコンポーネンツ事業部 第三商品部
小川 翔之

 世界屈指の光トランシーバベンダでもある富士通オプティカルコンポーネンツは、400Gマーケットを100G同様に長続きする市場と捉えて、OIFの400ZR準拠の製品開発を続けてきた。2番目のセッションは、同社が400G ZR/Metroトランシーバの現況と今後のフォーキャストを語ることになる。「弊社も一昨年より400G、特に400ZRに注力している。これまでの400Gと異なる点は、従来のコヒレントトランシーバは伝送装置各社から供給されるDCIボックスのLayerでデータ伝送していたが、120kmまでの短距離についてはクライアントのイーサネットモジュール同様にWDMモジュールをLayer2-3のスイッチに差し込む形でスイッチLayerから伝送しようという点だ。弊社は、ここのマーケットが今後伸びてくるだろうと読んでいる。最近では、スイッチ側の放熱設計も進歩しているので、HSDC向けに120kmから300km Metroまでの更なる長延化も見込めるのではないか」と谷口氏は述べている。同社は、既に今年2月に400G QSFP56-DD/OSFP ZRトランシーバを製品化しており、そこには前述の7nm CMOSコヒレントDSPとSiP(シリコンフォトニクス)の集積技術が内包されている。間違いなく、一番ホットなトピックとなるだろう。

●Siフォトニクスと光インターコネクションの最新動向
PETRA((技術研究組合)光電子融合基板技術研究所)
主幹研究員
小倉 一郎

 「光インターコネクションにおいて、シリコン(Si)の一番の利点はクーラーレスで出来る点だ。ただ、ポリマーを裸で使うにあたって、高熱下で光酸化を防ぐために気密性を保持するハーメチックシールの封止というのが今までの常識だった。インターコネクションにおける高密度実装化においてガチガチのパッケージというのも現実的ではないので、ハーメチックシール封止無しで特性を担保できるかという点が大きなテーマとなる。しかし、Si単品での高速化も限界が見えてきた。今後のCo-Package化へ向けてどのようなブレイクスルーが存在するかが聴きどころだ」と谷口氏は語る。On-Boardとプラガブルの境界線については近年議論が続いてきたが、富士通オプティカルコンポーネンツやICベンダのBroadcomのフォーキャストでは800Gまではプラガブルで1.6T以降にCo-Packagingという見方が支配的のようだ。本セッションは、来たるCo-packagingの時代に備えて現状技術のベンチマーキングと技術的課題の整理を行うには最適のテーマだろう。

 最後に、コースリーダーの谷口氏は「昨今の政治的な問題で各国分断の傾向が出てきているが、我々事業者としてはコミュニケーションを支え、人と人を結びつける業務に従事している。如何に世界が分断されようと、我々は光で世界を繋ぐんだという気持ちを共有して聴講して頂けたら幸いだ」と聴講者に向けてメッセージを送っている。

(OPTCOM編集部 井上政基)

特集目次

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光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー
【FOE-K】光通信技術展 基調講演
【FOE-1】光トランシーバの最新技術動向
【FOE-2】最先端 光材料技術の動向と今後の展望
【FOE-3】Beyond 5G時代を目指し、光部品・集積技術を紐解く!
【FOE-4】次世代高速光通信技術
【FOE-5】巨大化するデータセンタを支える光技術
【FOE-6】【基礎講座】初日に学ぶ 光ファイバ・光デバイス、光測定の基礎
【FOE-7】5G/Beyond5Gに向けた光通信技術の最新動向と取組み
【FOE-8】自動運転を支える光応用技術
【FOE-9】 5G/Beyond5Gとそのエッジコンピューティングに関する最新市場動向
【FOE-10】 世界をつなぐ最先端ネットワーク 海底ケーブルの最新動向

「通信・放送Week 2020」主催者インタビュー