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ノキアが取り組む、AIイノベーションと先進ネットワーク【3:ノキアのプライベートワイヤレス技術で広がるAIの可能性。360度マルチメディアによる産業のデジタル化】

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ノキア
クラウド&ネットワークサービス RXRMゼネラルマネージャー
Sami Ranta氏

 ノキアのクラウド&ネットワークサービス RXRMゼネラルマネージャーであるSami Ranta氏からは、高度なビデオソリューションによるエンタープライズのDX支援や、ビデオ解析とAIの連携による産業界の変革について解説された。
 Ranta氏は「現在、エンタープライズのお客様が運用のDXを非常に速いペースで進めている。大きなポイントは、一社だけではできないので協業が必要になることだ。協業することで、最善のソリューションをお客様に届けることができる」と強調する。

次世代の価値創出の原動力としての人工知能とビデオ分析

インダストリアルの領域では、AIとOTが融合し、効率性・信頼性・成長を解き放つ。

最新のコンピューティング動向とデータ活用による卓越性。

 エンタープライズにおけるDXでは、現在、無線のテクノロジーや追加のアプリケーションを使った自動化や、それとAIを組み合わせることがトレンドの一つとして広がっている。Ranta氏は「お客様は、これらを運用に適用して効率化を進めていらっしゃる。それは現在、4つのステップで進められている」と話す。

インダストリー4.0の変革サイクルは、「見る」「理解」「予測」という段階を経て、「自律的な動作」へと進化していくプロセスとして整理できる。これは単なる技術導入の話ではなく、現場運用を人の経験や勘に依存した状態から、データドリブン型へと移行させるための成熟モデルでもある。

1:見る
 まず、ビジネスが実際にどう動いているのかを「見る」ために、物理資産、例えば倉庫の在庫状況、物流拠点の稼働、鉱山の設備状態などからデータを取得する。IoTセンサやビデオ、オーディオといった運用データをネットワーク経由で収集し、現場の状況をリアルタイムに可視化することで、これまで把握しきれなかった変化や異常が初めて捉えられるようになる。

2:理解
 次に、取得したリアルタイムデータを分析し、「何が起きているのか」を理解する段階に進む。単なる可視化にとどまらず、データ同士の関係性や傾向を読み解くことで、現場の状態を定量的に把握できるようになる。

3:予測
 データを理解できるようになると、その延長線上で「次に何が起こるか」を予測できる。設備故障の兆候や需要変動などを事前に捉えることで、後追い対応から先回りした判断へと運用が変わっていく。

4:自律
 物理資産をデジタルで管理し、予測まで可能になった段階では、そのインサイトを活用した自律的な運用が現実的になる。例えば、ローカルコンピューティングや高精度な無線ネットワークを導入することで、倉庫や鉱山において自律運転の機械を稼働させるといった事例が生まれている。人の判断を補完・代替することで、より安定した運用と生産性向上を実現する段階だ。

 Ranta氏は「四つのステップで変革を進めるにあたり、どういったエレメントが必要なのかというと、接続だ。ネットワークはよりスマートになっており、高速化、信頼性も向上しているので、多くの企業が有線の接続から無線の接続に移行している」と話す。

産業用ワイヤレス接続を支えるエッジ&AIプラットフォームの仕組み。

 例えば物理レイヤでは、レガシーのWi-Fiの接続から5Gセルラーネットワークに移行することで、より広帯域な伝送、そして産業機器の激しい動きや移動への対応など、産業の現場に最適化したパフォーマンス向上の取り組みが進んでいる。
 また、産業の現場では物理的な耐環境性が求められるので、堅牢設計の端末が必要になる。電話、タブレット、カメラ、ロボットなどの端末も堅牢に設計し、過酷な環境でも運用に影響が出ないようにする必要がある。
 さらに重要なのは、セキュアで信頼性の高いエッジコンピューティングの環境だ。Ranta氏は「様々な産業界のお客様が、特にビジネスクリティカルなアプリケーションに関しては、このアプリケーションを完全にローカルで動かしたいと考えている。クラウドが進化はしているが、ビジネスプロセスの一部はパブリッククラウドに載せたくないというのが理由だ」とし、「例えば、弊社のビデオソリューションを技術者のトレーニングや遠隔サポートに活用されているお客様は、ビデオ解析をインターネットから切り離した形で実装されているので、すべての情報はローカルで閉じた形で運用できる。こうしたビジネスクリティカルな情報に関して、お客様はセキュリティやセーフティに懸念を持たれているので、すべてのワークロードをローカルの環境クラウドで動かすケースがある」と説明している。

 ノキアはこうした産業用途を最適化するため、自社のプッシュ・ツー・トーク、BC2ビデオ、屋内測位、高品質なビデオストリーミングのソリューションを提供している。その一方でアプリケーション レイヤではパートナーシップを構築しており、ソフトウェアベンダ、サービスプロバイダ、システムインテグレータと協業してアプリケーションを提供している。Ranta氏は「お客様のアプリケーション展開が容易にできるように、エッジコンピューティング端末を含むすべてのコンポーネント接続の検証も、お客様と協力しながら取り組んでいる」と話す。

Ranta氏は「ノキアは世界をリードする4G・5Gのセルラーネットワーク製品のプロバイダになる。産業界に製品を提供しており、1000社に上る企業の皆様にプライベートワイヤレスを導入していただいている。そして弊社の機能のメリットを享受いただいている。セキュアなそして信頼性にも優れた高品質な接続、そしてローカルの接続を提供している。小さな規模のサイトから、例えば物流の拠点から工場、さらに広い大きな港など数キロにわたるサイトでもカバーできるようになっている」と説明している。

ノキアは、エコシステム全体と連携してインダストリー4.0を推進している。

 ノキアは前述の通り様々な企業と密に連携して協業し、顧客の観点で包括的なソリューションを提供できる体制を整えている。日本でも幅広いエコシステムのパートナーを構築しており、日本の顧客に対する効率的な製品提供を実現している。Ranta氏は「ビジネスアプリケーションには、非常に広範な種類がある。お客様はオペレーションをデジタル化しており、ビジネスに必要な新しいワイヤレス アプリケーションを常に探していらっしゃる。これにより、労働者の安全性、そして屋内測位、自律運転などを実現している」と説明している。

Nokiaは、インダストリアルAIの基盤とソリューションも提案している。

ビデオの用途拡大で新たなビジネス価値を創出

5G規格とビデオの相性は良く、大企業・組織向けの5Gの活用例ではビデオ関連が上位となっている。

 ノキアが提案しているカタログには、パートナーのサードパーティも含まれており、そこには様々なアプリケーションがある。Ranta氏は「中でも、ビデオカメラシステムや、ビデオによって可能になるアプリケーションが非常に重要だ。過去に実現できなかったようなビデオカメラシステムが、無線によりビジネスで活用できる形で実現している。そしてビデオ解析がより広範に実現できるようになっている」と話す。

 ビデオを様々な産業で活用するためには、各産業に応じたソリューションのコンポーネントも必要となるので、エコシステムによるパートナー連携が重要になる。
例えば労働者の安全にフォーカスしているパートナーは、社員のベネフィット、福利厚生の最適化を得意としている。トラックが出入りする倉庫のシステムでは、トラックと労働者の距離を把握し、危険性を検知すると自動的にトラックの動作を停止し、安全性の問題を回避するという実用的な手段を提供している。
 Ranta氏は「高精度のネットワーク、ビデオ送信、ビデオ解析がAIと統合されることによって、労働者の安全がさらに高まることになる。私達は非常に多くのパートナーと連携しているので、お客様に対して様々なアプリケーションを提供できる」と話している。

ビデオストリーミングとAIの連携による、新たな価値創造

 こうしたビデオストリーミングのアプリケーションの最先端としてノキアが提案しているのは、RXRM(Real-time eXtended Reality Multimedia)だ。Ranta氏は「これは革新的なアプリケーションだ。AIを統合しており、ビジネスプロセスの自動化に役立っている」と話す。

360度ビデオ&オーディオを実現する、Nokia RXRMソフトウェアソリューション。

RXRMとAI連携の概要。

 RXRMとAIを連携させることで、「映像情報とオーディオ情報を組み合わせたバーチャルリアリティ」や、「意思決定に役立つリアルタイム分析」、「産業用途の高度なリモート操作」が可能となる。

 産業用途の高度なリモート操作としては、例えば港湾でのクレーン運用に無線のカメラシステムとエッジコンピューティングを活用することでオフィスからのリモート操作が可能となり、安全性を確保しつつ快適な環境を実現できる。鉱山の作業も、同様に機器をリモート操作することで、作業員が奥まで侵入せずに安全な作業が可能になる。RXRMとAIの連携は、それを高度に実現する。Ranta氏は「グローバルでお客様のご意見をヒアリングすると、ビデオ関連アプリケーションが最も重要なアプリケーションであると認識されているようだ。実際に多くのお客様が、カメラシステムを様々な車両や機器、ロボットに搭載し、問題を解決している」と話す。

RXRMとAIのメリット。

Nokia RXRMの、世界初の4G/5G対応360度カメラ。

 Nokia RXRMは、世界初の4G/5G対応360度カメラを提供している。雨や埃、振動といった耐環境性にも優れており、過酷な産業エリアでの設置や、ドローンやロボットに搭載できる。Ranta氏は「これによりお客様はビデオデータをあらゆる場所から取得できるので、ビジネスプロセスのDX化をさらに進めることができる」とし、「また、この360度の映像情報に三次元のオーディオを組み合わせることで、遠隔のバーチャルリアリティを作り出すこともできる」と説明している。

Nokia RXRMは、状況認識、遠隔操作、プレゼンス共有を支える「リアルタイムXRマルチメディア」として、様々な産業で活用されている。

 Nokia RXRMが有するリアルタイム性は、様々な産業の企業ユーザにとって重要になる。これは、高品質なネットワーク、高容量なローカルのコンピューティング、高品質なビデオストリーム、スマートなビデオ解析により実現し、ビジネスプロセスを高速に管理することに繋がる。Ranta氏は「例えば港湾のお客様の事例では、運用の問題にビデオ解析を活用することで、遠隔で自動的かつ短時間で解決した。従来のように現場に人を派遣して長時間の作業をすることもなくなり、数十万、あるいは数百万ドルをセーブできる計算になる。これは、過去にはできなかった取り組みだ」と説明している。

Nokia RXRMは、帯域幅の課題もスマートに解決する。

 こうした高品質なビデオという需要が高まっている中で、ユーザ企業はネットワークのキャパシティを逼迫させたくないというジレンマも発生している。そこでNokia RXRMでは、ビデオストリームの関連部分のみを送信する技術により、帯域を90%削減することに成功している。
 Ranta氏は「全体的な考え方としては、カメラの数が10台、100台、そして1000台と数多く繋がってくる世界になる。広大な工場や港湾の環境では、大量のデータが発生する。これを人間の手で解析することはできないので、時間、労働力が足りなくなってしまう。そこでAIとスマートなビデオ解析を組み合わせる事により、大半のコンテンツを自動的に解析できる。またAIを活用することで、人間に対して警報を出すことや、自律的に問題を解決することも可能になる可能性がある。これは労働力の削減や、プロセスのDX化にもつながっていく」と説明している。

 Nokiaは鉱山、港湾、製造業、物流と様々な産業の企業ユーザを抱えており、今回解説された様々なアプリケーションを提供し、業務の効率化、安全性の向上を支えている。またサービスプロバイダも顧客であり、パッケージサービスとしてas a Serviceとしてエンドユーザに提供しているビジネスモデルもある。
 Ranta氏は「全体像をまとめてみると、現在、様々な産業界業界でデジタル化が非常に速いペースで進んでいる。例えばヨーロッパも日本もそうだが、労働力の不足が起こっている国々で進んでおり、デジタル化によってどのようにビジネスを変革できるかというのを考えていく必要がある。そのための新しい技術として、高品質な接続、エッジコンピューティングも重要性を増していく。それにより、多くの企業が追加のネットワークキャパシティに投資をしていくし、クラウドインフラストラクチャが進化を続けていく。だが、ビジネスクリティカルのアプリケーションにおいては、パフォーマンスの信頼性、セキュリティなども重要になるため、企業のお客様はローカルで実行したいと考えている」とし、「過去にはできなかったやり方でオペレーションのデジタル化が可能になっていく。そしてビデオソリューションでは、ますます多くのお客様がビジネスの拡大のためライブストリーミングを使っている。そして、それらをビデオ解析に適用している。さらには、AIをそれらに活用している。物事は非常に高速に進んでいる。非常に多くの業界でこれらの変化が起きている」と説明している。

レポート目次

TOP

1:AIコネクティビティのための超高効率ネットワーク

2:AIと高度なネットワークソリューションでパフォーマンスと利益を促進

・3:ノキアのプライベートワイヤレス技術で広がるAIの可能性。360度マルチメディアによる産業のデジタル化

以下、後日更新

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