シスコシステムズ(以下、シスコ)は9月28日、日本における2024年度の中堅・中小企業向けビジネス戦略を発表した。
　従来の戦略との大きな変化は、中堅・中小企業のニーズに合う形での商品提供・拡充が重点戦略として追加された点だ。具体的には、Cisco Catalystスイッチの中堅・中小企業向けモデルの発売や、中堅・中小企業向けサイバーセキュリティとプロモーションが発表された。

　シスコシステムズの執行役員 SMB・デジタル事業統括である石黒 圭祐氏は「大手企業向けに展開しているソリューションの値段を安くして販売するということではなく、中堅・中小企業のマーケットに即した機能とコスト感に新しくパッケージングをし直して、それを適切なマーケットのお客様にお届けをしようと考えている」と話す。
　今回の記事では、記者説明会で語られた新製品の特徴、そして中堅・中小企業をとりまくサイバー犯罪の現状や、それに対応するためにシスコが提案するネットワーク起点の網羅的なセキュリティについて纏めた。
　
(OPTCOM編集部　柿沼毅郎)

2022年度、2023年度のハイライト

　まずは、2022年度から2023年度にかけた中堅・中小企業向けビジネス戦略の概要と成果を振り返りたい。同戦略には、次の3つのトピックがあった。

• パートナーを中心とした連携
• オンライン体験の拡充(Webナビゲーション・デモ・トライアル、Eコマース)
• 新しい市場の開拓

これにより、セキュアなネットワークを実現すること、また持続可能なハイブリッドワークを提供するという目標が掲げられた。

　その成果の1つとしてSaaSビジネスの加速があり、セキュリティやソフトウェアのビジネスは前年度比20%以上の成長率を見せている。また、ハイブリッドワークの中心になるWebex Callingのクラウド電話ビジネスは、前年度比60%以上の成長率となった。
　新しいビジネスモデルの開拓では、マネージドサービスの拡大という成果が出ている。特にネットワークの新しい姿であるマネージドSD-WANビジネスでは、2年連続で50%以上の成長率という推移を見せた。石黒氏は「この日本発の中堅・中小企業向けマネージドサービスモデルを、パートナー様がアジア太平洋各地で展開している」と話している。
　新しいチャンネル開拓では、eコマース ビジネスが強化された。当初の取り扱いはAmazonのみのスタートだったが、現在は6社に増えている。また、eコマース販売対象製品も増加している。

　石黒氏は「この一年半においては半導体不足によりハードウェアの供給が困難だったが、現時点において我々は半導体不足を解消してハードウェアを完全に供給できる体制が整っている」と説明している。

2024年度「中堅・中小企業向け重点戦略」

Cisco Catalystの中堅・中小企業向けモデルを発売

　シスコはこの流れを踏まえ、2024年度に新しい重点戦略を策定した。それは、従来の重点戦略を継続し加速をさせていくことに加え、「中堅・中小企業のニーズに合う形での商品提供・拡充」を掲げたものとなる。
　石黒氏は「中堅・中小企業市場の価格帯にあったご提供方法も進めていく。まず第一弾として、Cisco Catalystシリーズを拡充する」と話している。

　シスコは従来から、大手企業や公共分野に向けたスイッチのラインアップとしてCatalyst 9000シリーズを提供しており、そのブランドを定着させた。今後は、このCatalystというブランドイメージや製品能力、サポート体制を、そのまま中堅・中小企業のマーケットにも拡充することを重点戦略に加え、新しい商品を投入していくという。
　石黒氏は「中堅・中小企業の皆様が必要なパフォーマンス、そして簡単に購入、設置、運用いただけることをメインテーマに、Cisco Catalystシリーズを提供していく。例えば、これまで設定や管理・運用には特別なスキルを持ったエンジニアが必要だったが、中堅・中小企業のユーザ自身がスマートデバイスで実行できるようになっている」と説明している。
　中堅・中小企業向けモデルとして発表されたのは、Catalyst 1200シリーズと1300シリーズ。35製品をラインアップし、価格は2万円台からとなる。これらの販売はAmazon、ビックカメラ、コジマ、ソフマップの4マーケットプレイスで9月 28日よりオンライン販売している。

レポート目次

1：中堅・中小企業のニーズに合う形での商品提供、拡充

2：中堅・中小企業を取り巻くサイバー犯罪

3：ネットワークを起点とした網羅的なセキュリティ