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ノキアが提案する、ローカル5GとPOLを組み合わせた低コスト化【2】

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プライベートワイヤレスにより、様々な産業で業務を効率化

プライベートワイヤレスにより効率化できる産業設備は多岐にわたる。

洋上風力発電の予知保全による業務効率化

 カーボンニュートラルなエネルギー供給で注目されている風力発電は、遠隔地や過酷な環境に設備が構築されることが多いため、その通信システムには安全性と運用の継続性が不可欠となる。
 ノキアの風力発電所向けのプライベートワイヤレスソリューションは、作業員、センサ、カメラ、タービンを接続するためのミッションクリティカルな信頼性と低遅延のブロードバンド接続を提供する。
 ヨーロッパの洋上風力発電会社の事例では、北海の海上にある風力タービンの洋上ネットワークでノキアのソリューションが使われている。これにより、設備のカバレッジを上げることや、海上と陸上間の高速通信が可能となった。その重要な役割の1つは、故障の予兆を把握することだという。岡崎氏は「洋上という、普段は人が居ない場所では、設備の異音や振動を感じるなどの故障の予兆を把握することは難しい。かと言って、故障が発生してから修理をするとなると、洋上の高所や海中での作業ということもあり、長期間のダウンタイムが発生してしまう。そのため、ダウンタイムを無くしてシームレスに運用することが重要だ。このユースケースではプライベートネットワーク網とIoTセンサにより、人が現地で監視をしなくてもリモートで状態を把握することができるので、故障前のメンテナンス実施が可能となった。こうした故障の予兆の把握によるメンテナンスで、運用全体の効率性を上げることができる」と説明している。
 洋上風力発電に限らず、プライベートワイヤレスによる予知保全の統合がIndustry 4.0の基礎の一つであることは世界的な流れだ。温度、振動、摩耗などの重要な要素に関するリアルタイムのデータを収集し、機械の状態を包括的に把握することで運用効率を向上させることは、機器の寿命を延ばすことにも繋がり、中長期的なコスト削減に大きく貢献している。

自動運転やAGVの高速化による生産性の向上

 複数の大型車両を扱う鉱業も、プライベートネットワークの導入による自動化が進んでいる分野だ。鉱山現場は、資源の安定供給のため長時間稼働が求められ、厳しい自然環境下の過酷な労働条件で、人材不足が課題となっている。また、多くの機械が稼働している鉱山現場では、人的ミスによる事故の削減を図るためにも、自動化による更なる安全性向上が重要視されている。
 ノキアと共同で自動化のトライアルを実施している小松製作所(コマツ)は、無人ダンプトラック運行システムAHS(Autonomous Haulage System) を中心とした鉱山オペレーション向けの自動化製品の開発も行っており、環境の異なる鉱山現場で稼働実績を蓄積したAHSは、世界各国の資源大手よりその安全性・生産性に対して高い評価を獲得している。
 このAHSシステムの運用で重要となるのが、高度な自動化に不可欠な堅牢で予測可能かつ安全なワイヤレス接続を提供することだ。ノキアのプライベートワイヤレスソリューションであれば、容量とカバレッジ、信頼性の高い低遅延通信を提供し、アップストリームビデオ伝送、センサデータの収集、車両や機械のリモートコントロールが可能になる。
 岡崎氏は「自動運転の共同トライアルでWi-Fiを使ってみたところ、車両が動かなくなるケースが出てきて定期的に作業のダウンタイムが発生したが、これをプライベートLTEにしたことで解決できた。プライベートLTEやローカル5Gといったセルラー技術はWi-Fiと比べて移動する対象との接続性に優れているため、こうした安定した接続だけでなく車両の速度アップにも対応できるので、物流の量も改善し、生産性の向上によるネットワーク構築のコスト回収にも繋がる。また、プライベートLTEやローカル5GはWi-Fiと比べて基地局数を抑えながらカバレッジを上げることができるので、電源を含めたメンテナンスの面でもメリットが有る」と説明している。

 ローカル5Gが移動端末との接続に優れていることへの期待の高さは、AGV(無人搬送車)制御のPoCが多いことからも窺える。
 従来のAGVは、磁気テープ・マーカーといった誘導体を床に設置してルート固定の自動走行を実現しているが、これをワイヤレス制御にすることで自由なルートでの自動走行が可能となる。これにより、例えば、製造現場のスペースをより有効に活用することや、容易なレイアウト変更により様々な製造品目に対応することができる。
 岡崎氏は「最近は自動車業界でAGVの話が非常に増えており、そこがローカル5Gのキラーになってきている。5Gの低遅延や安定性、多接続により、AGVは自転車と同等の時速20kmほどで移動することができる上、数百台を同時に動かすことができるので、ユーザはビジネスを十倍、百倍にできる。これは、ローカル5Gが当初からめざしていたユースケースであり、世界、そして日本で徐々に始まっている」と話す。

リモート操縦による安全性向上と、自動化によるスキルレス化

 港湾ターミナル業務でも、鉱山業界と同様に生産性や安全性の向上を図るためにプライベートワイヤレスが使われている。港湾はサプライチェーンのグローバル化により重要性が増し、大型コンテナ船の寄港が増加することよる作業の超時間化や、コンテナターミナルの周辺スペースにおける混雑による作業効率の悪化が課題となっている。これらの業務をデジタル化で効率化を図る場合、Wi-Fiでは移動体との接続の不安定さや電波干渉が発生しやすい等が問題となるので、ローカル5Gによる大容量かつ高品質のネットワーク整備が求められる。
 ノキアの港湾ターミナル業務向けソリューションは、自動化されたリモートコントロール操作を強化する。例えば、増え続けるコンテナ量を管理し、エンド・ツー・エンドのワークフローを最適化し、ターミナル内の物資をリアルタイムで正確に追跡できる。ビデオ分析によるインシデント検出、RTGやストラドルキャリアなどの荷役機器の機械自動化、コンテナID認識、ドローン検査など、Port 4.0のユースケースに必要なパフォーマンスと低遅延を実現する。
 港湾ターミナル業務のユースケースで興味深いのは、自動スタッキングクレーン(ASC)の高度化だ。ASCにより、クレーンの作業者は現場に行かずに複数台をリモート操作できるようになる。岡崎氏は「作業者が高所に上る必要が無いので安全性が高まる。また、前述の鉱山業務でも当てはまることだが、クレーンやダンプカー、掘削機の高度な操縦技術を、熟練者の操作データとセンサやカメラを組み合わせることで再現する自動化が可能なので、高度なスキルが必要だった作業をスキルレス化した上で、複数台を一人でリモート管理できる」と説明している。

レポート目次

1:ITではないエリアに対するIoTプロジェクトが増加

2:プライベートワイヤレスにより、様々な産業で業務を効率化

3:保守性、省電力性、将来対応に優れたPOL

4:ローカル5Gの課題を解決する、POLとの組み合わせ

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