スマートビルを支える、ノキアのグリーンな光LAN配線「POL」【1】
SpecialReport 有料 ノキアが提供するPOL(Passive Optical LAN:ポル)の注目度が、日本市場で急速に高まっている。今年2月にNTTコミュニケーションズがスマートビルへのPOLの提供を発表し、6月には古河電気工業がPOLおよび25G-PON、50G-PONの提携を発表している。
ノキアソリューションズ&ネットワークスのネットワークインフラストラクチャー事業部 執行役員 エンタープライズ営業本部長である岡崎 真大氏は「こうしたアナウンスを出した反響は想定以上で、お問い合わせが増えている状況だ」と話す。
POLは、ネットワークの配線および機器を光化したLANであり、中継機器を使わず、電源不要なスプリッタで長距離光信号の複数分岐を可能とするPON技術を用いてLANを構築するので、消費電力の削減や、機器設置のための床面積の削減、そして機器メンテナンスもOLTのみで済むといったメリットが有る。また、銅線ケーブルに対して省スペースなファイバケーブルを用いるので、建物内での敷設に必要な空間も確保しやすい。
また、伝送速度を上げるためにケーブルを敷設し直す必要も無く、投資対効果も非常に優れている。特にノキアのG-PON技術は日本を含めグローバルでの2.5Gbps、10Gbpsの実績が豊富であり、25Gbpsや50Gbpsへの将来拡張や混在運用も容易という特長があるので、それをベースとしたPOLも、一度構築すれば必要に応じてマイグレーションでき、長期間にわたり最適な帯域を高い信頼性で使い続けることができる。
このようにPOLは、PONという信頼性の高い成熟した技術を用いながら、既存のLAN配線の概念を根底から覆す画期的なソリューションとなっている。本記事ではPOLの魅力に迫ると共に、その将来の拡張性という強みをイメージしやすいよう25G-PONを用いたアクセス網のグローバル事例もご紹介する。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)
POLの概要と特長

従来型LANと光LAN「POL」の構成の比較。スイッチの多段接続が無くなったことで、専門知識が必要になる複雑なルーティングも無くなっている。
従来型LANで使われていた各種スイッチを必要としないPOLは、機械的な故障が少なく保守性と省電力性に優れており、メンテナンスやアップグレード、設定作業はOLTのみで済む。また、ONTは、OLTを介して一元管理できる。配線のファイバも外部ノイズや温度の耐性が高く長寿命であり、LANを広帯域化する際もそのまま流用できるので、長期間にわたりメンテナンスフリーで運用できる。
岡崎氏は「POLはもともと、発展途上国でのビル建設において、快適な通信速度、省電力、シンプルな運用というアプローチで導入が始まった技術だ。そして、世の中のグリーンITやLANの10G化というトレンドとも相性が良いこともあり、スマートビルを典型的なユースケースとしてグローバルで広まっている状況だ。件数は毎年1.5倍から2倍のペースで増えている」と話す。

POLは、様々な用途で広がっているPON技術を、企業向け光ネットワーキング ソリューションとして最適化することに成功している。
POLは、Wi-Fiのバックホール用途などのマルチサービス接続を、高い信頼性を持つPON技術で実現できる点も魅力だ。岡崎氏は「当社ではネットワーク管理に関するAIやソフトウェアにも注力しており、有線、無線を問わずネットワーク全体の可視化や自動運用、自動復旧に向けて取り組みを進めている。PON技術を用いているPOLは、PONの管理ソリューションでの管理・運用が可能だ」と話している。

POLではシングルモードの光ファイバを用いるので、配線が省スペースとなる。これにより、既設の建物内におけるネットワーク配線で課題となる配線スペースの確保の難しさも解決する。新設される建物内においても、貫通孔は電力など通信以外の通線も必要となるので、省スペースという強みが生きてくる。
また、ノキアでは、POLが省電力の配線であることから「グリーンファイバー」とも呼んでいる。
POLはシンプルな構成なので、導入が容易であり、トラブル時も迅速に復旧できる。
岡崎氏は「従来のイーサネットLANが定着している日本市場で、構成や保守・運用が異なるPOLが馴染むのかという懸念もあったが、消費電力削減やメンテナンス コストが発生しないというメリットや、コア・メトロの広帯域化という市場動向におけるLANの広帯域化という観点から、ご注目いただいている状況だ」と話している。

インテリジェントなスマートビルにおける、POLの利点。カバー範囲が20kmと広範なので、スマートファクトリーやスマートシティへの適用にも期待できそうだ。また、25Gへのマイグレーションも容易なので、通信分野と産業分野の連携や、Agentic AIの活用において、広帯域が必要なビジネスユースのブレイクスルーが発生しても、LANがボトルネックになることはない。トラフィック需要の予測が難しい今後、拡張性に優れたPOLは、企業の事業戦略を柔軟にサポートするインフラとも言えるだろう。
レポート目次
1:POLの概要と特長