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シンガポール陸上交通庁が、Nokiaの光LANおよびIPソリューションで重要な鉄道インフラを強化

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 Nokiaは10月15日(エスポー)、Hitachi Rail (日立レール)と提携し、LTA(シンガポール陸上交通庁)が重要な鉄道インフラのビデオ監視システムの大規模なアップグレードの一環として、NokiaのIP/MPLSおよび光LAN(Optical LAN)ソリューションを導入すると発表した。

 Nokiaのソリューションにより、LTAは、1日に数百万人の乗客が利用するシンガポールの高利用率の鉄道システム全体で使用されているCCTVネットワークを大幅に強化できる。

 CCTVカメラはLTAの鉄道システムにおいて重要な役割を果たしており、公共の安全を確保し、違法行為の発見や交通パターンの管理を支援するリアルタイム監視およびビデオ監視サービスを提供している。50以上の駅にCCTVカメラが設置されているLTAは、増大する容量需要に対応できるネットワークインフラを必要としていた。

 LTAは、ネットワークカメラの増設と帯域幅の要件拡大に対応するため、25Gbpsの速度に対応可能な堅牢なONUと将来を見据えたOLTを含むNokiaの光LANを導入した。将来を見据えたソリューションとして設計された光LANは、従来の銅線ベースのLANネットワークと比較して、配線量を最大70%、消費電力を40%削減する。NokiaのIP/MPLS導入により、LTAはライブビデオストリームの視聴・保存を行うオペレーションコントロールセンタへのネットワークデータのバックホールをより効率的に行うことも可能になる。

 日立レールの統合通信・監視ソリューション(ICS)担当ヴァイスプレジデントであるJoaquim Santos氏は「シンガポールの鉄道網における乗客の安全とセキュリティ強化において、日立レールとの協業にNokiaを選定できたことを大変嬉しく思っている。これは、日立とLTAとの長年にわたる関係の延長線上にあるものだ。このプロジェクトは、交通インフラのアップグレードにおいて重要な役割を果たすだろう。

 Nokia Asia Pacificのネットワークインフラストラクチャ エンタープライズセールス担当ヴァイスプレジデントであるStuart Hendry氏は「世界中の交通ハブの監視に不可欠なビデオシステムをはじめ、あらゆるものを接続するために光ファイバが使用されている。高可用性、信頼性、そしてセキュリティを備えたリアルタイム監視システムを確保することは、シンガポールの交通機関を毎日利用する人々の安全を確保する上で不可欠だ。日立レールとの提携により、LTA向けに包括的なソリューションを提供し、今後数年間にわたる広範なCCTV監視とネットワーク運用に必要なビデオ容量を確保することができた」とコメントを出している。

編集部備考

■近年、鉄道運用における通信インフラは、映像・制御・IoTを統合的に扱う「広帯域かつ省電力」な基盤へと進化している。今回、シンガポール陸上交通庁(LTA)がNokiaの光LAN(Optical LAN)ソリューションの導入を進めているのは、それを象徴する事例の一つとなる。今回のCCTV監視システム更新では、リリース内にある通り「従来の銅線LANに比べて配線量を最大70%、消費電力を40%削減できる」ので、鉄道のグリーン化を進める手段として有効だ。
 光LANの利点は、グリーン化だけではない。中長期的な利点としては、映像データのような大容量通信を安定的に処理するアプリケーションの運用を続ける中で、将来的に帯域の拡張が求められても、配線を更新せずに対応できる柔軟性もある。鉄道におけるCCTV監視は、かつては「安全管理の一手段」に過ぎなかったが、近年はリアルタイム映像分析やAI検知といった高度処理を前提とするシステムへ進化している。こうした映像処理負荷の増大に対して、光LANは高帯域・低遅延・低消費電力という3つの要件を兼ね備えたネットワーク網として最適解の一つであり、鉄道以外の様々な産業でも実績を伸ばしている。
 さらに注目すべきは、この光LAN導入が「様々なアプリケーションを活用する鉄道の運用における、将来の通信統合」の布石にもなり得る点だ。鉄道運用の現場では、映像監視に加え、音響センサによる異常検知、線路や構造物のIoTモニタリング、気象・地震センサなど、膨大な種類のデータが発生する。従来はそれぞれのアプリケーションのシステムが独立した配線・装置体系で運用されていたが、光LANはこれらの多様なデータを一本化し、IPベースで統合処理できるポテンシャルを持つ。例えば、CCTVという限定的な用途から光LANを導入し、その運用経験をもとに、中長期的に「鉄道全体の情報網」として機能拡張するかを判断できる。
 通信統合という方向性は、世界の鉄道インフラ更新に共通して見られる潮流でもある。欧州では列車通信ネットワーク(TCN)のワイヤレス化やMPLSによる統合運用、アジアでは省電力型通信装置と再生可能エネルギー併用の実証が進む。例えば、欧州のように広域で5G化を進める取り組みからは、5Gの帯域を前提としたアプリケーションの普及・進化が想定できる。5Gと有線を連携した運用を考える際、光LANのように広帯域かつ物理配線の軽量化と電力効率の向上を同時に実現できる技術は、鉄道のサステナブル化に直結する経済的選択肢でもある。
 日本でも、鉄道業界の方々とお会いすると「省電力化」と「運用効率化」を両立させるためのIT導入を真剣に模索する姿勢が強く感じられる。光LANのようなソリューションは、その理想を実現するための具体的な手段であり、本件のようにCCTVという限定的な用途から始まっても、将来的には鉄道全体の情報インフラを支える柱となり得る。エネルギーが限られた社会において、通信技術が持つ「消費電力を減らす力」は、乗客の見えないところで鉄道の安全と持続性を支えていく。鉄道の現場で挑戦を続ける技術者たちが、こうした新たな通信基盤を活用し、よりグリーンで効率的な鉄道運用を築いていくことを心から期待したい。

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