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Nokiaとduが、業界初の自律型ネットワークスライシングで5Gイノベーションの新たなベンチマークを確立

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 Nokiaとduは12月3日(エスポー)、画期的な5G-Advanced自律型ネットワークスライシングソリューションの初実装を発表した。

 Nokiaは「これは、5G技術の進化における大きなマイルストーンとなる。この革新的なソリューションにより、duはビジネスクリティカルな運用やアプリケーション、ライブイベント、放送、ゲーム、XR、AIアプリケーションなど、多様なユースケースにおいて、顧客に高品質でインテントベースのサービスを提供できるようになる」と説明している。

 自律型ネットワークスライシングは、スライスパフォーマンスを継続的に測定し、5G RANポリシーを自律的に調整する自己最適化インテリジェンスを導入する。このソリューションは、最も要求の厳しいシナリオにおいても、エンタープライズ、産業、そしてコンシューマー向けアプリケーションに対して、高品質なサービスレベルを保証する。

 機械学習を活用することで、duは都市部におけるエンタープライズ顧客のビジネスインテントを、あらゆるネットワーク状況において自律的に制御されたネットワーク容量で確保できる。さらに、混雑エリアで測定されたネットワークデータに基づき、プレミアム5Gゲームユーザ向けに低遅延RANスライス ポリシーを自動的に適用することも可能だ。
 自律型ネットワークスライシングは、Nokiaの5G AirScale基地局、MantaRay、そしてrAppsの運用インテリジェンスによって実現されている。

 duのCTOであるSaleem Alblooshi氏は「Nokiaとの今回のパートナーシップは、卓越した接続体験を提供するという当社の使命において、大きな前進となる。インテントベースの高度な5Gスライシングを活用することで、要求の厳しいお客様に最高のネットワークパフォーマンスと容量保証を提供するとともに、6Gなどの将来の先進技術にも対応できるネットワークを構築する」とコメントを出している。

 Nokiaの中東・アフリカ地域モバイルネットワーク担当SVPであるMikko Lavanti氏は「duとのこのネットワークスライシング ベンチマークは、Nokiaが主要なテクノロジーおよびビジネスパートナーと共同でイノベーションを進めている好例だ。自律型ネットワークスライシングにより、通信事業者は効率性と高品質を兼ね備えた価値あるサービスを顧客に提供することができ、次世代テクノロジーの導入と収益化の基盤を築くことができる」とコメントを出している。

編集部備考

 今回、duとNokiaが世界初となる自律型ネットワークスライシングを実装したことは、中東キャリアがネットワーク自律化領域で世界的な先行地域になりつつあることを改めて示した。中東の事業者は新技術の商用化に踏み切る意思決定が極めて速く、スライシング、自律化、RIC、エッジなどの先端分野では欧米を凌ぐ勢いで実装と検証を進めている。今回の取り組みもそうした「実証スピード」の高さが生んだ成果であり、グローバルに見ても技術運用モデルのショーケースとしての存在感を高めている。
 この背景には、中東キャリアが“ハイブリッド調達”の先行地域であることが大きい。同地域ではRANやCoreを単一ベンダに固定するのではなく、機能領域ごとに最適ベンダを選定する best-of-breed型の調達へシフトが進む。完全なO-RAN商用網が普及しているわけではないものの、疎結合化、API開放、SMOの独立といった O-RAN的アプローチを最も実務的に採り入れている地域と言える。結果として、RANベンダと自律化レイヤのベンダを切り分けることへの抵抗が小さく、技術ごとに得意分野を持つ企業を柔軟に組み合わせる調達文化が根づいている。
 こうした動きを技術の面から見ると、クラウドネイティブ化やO-RANに象徴されるアーキテクチャの非モノリシック化が、競争軸そのものを変化させている点が重要と言える。スライシング、自律化、オーケストレーションといった上位制御レイヤは、AIモデルやソフトウェア アーキテクチャの優劣が性能を左右する高度な差別化領域となった。一方、RANは依然としてTCOと大規模オペレーションの最適化が決め手となる領域であり、両者を必ずしも同じベンダが担う必要はない。非モノリシック化は、この“競争軸の分化”を技術的に裏付けている。
 今回、duが自律型ネットワークスライシングのパートナーとしてNokiaを選んだのは、まさにこうした分化された競争軸を踏まえた戦略的判断と読み解ける。リリース内で Alblooshi氏が述べている通り、duのNokiaとのパートナーシップは6Gまでを見据えた長期的なネットワーク能力強化であり、その将来のマネタイズやSLA保証型サービスの基盤となるのは自律制御レイヤとなる。5G-Advancedの世界では、従来の「帯域を売る」モデルから「サービス品質やネットワーク能力の差別化を売る」モデルへと転換する。そこでは、自律化・スライシング・オーケストレーションの完成度がキャリアの事業競争力そのものになる。
 O-RAN的アプローチやマルチベンダ化の潮流が進むなか、今回の事例は「長期的な軸において、どこでベンダ差別化が生まれるか」を明確に示した。自律化領域こそが次世代ネットワークの競争軸となり、そこに強みを持つベンダが5G-Advancedから6Gに向けた市場で存在感を高める。DuとNokiaの取り組みは、その潮流を象徴する先行ケースと言えるだろう。