Adtranが、Oscilloquartzタイミングソリューション向けに業界初のGalileo OSNMA認証を提供開始
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Adtranは10月23日、Oscilloquartz同期プラットフォーム全体でGalileoのOpen Service Navigation Message Authentication(OSNMA)をサポートすることを発表した。
Adtranは「これはGNSSセキュリティにおける大きな進歩となる。OSNMAは民間向けに設計された初のGNSS認証サービスであり、Adtranはタイミング業界で初めてこれをサポートする企業だ。OSNMAは、タイミングデータが正規のGalileo衛星から発信されたものであることを確認することで、受信時点での真正性と整合性を保証する」と説明している。
この新機能は、対応するマルチバンドGNSS受信機のファームウェアアップデートで利用可能となり、なりすましや改ざんに対する保護層をさらに強化することで、ハードウェアの変更やサービスの中断なしに既存のシステムのセキュリティを強化できる。
AdtranのOscilloquartz担当GMであるGil Biran氏は「これはGNSSセキュリティにとって画期的な出来事だ」とし、「タイミング業界で初めてGalileoのOSNMAサービスをサポートする企業として、認証済み衛星同期の新たな基準を確立する。5Gやスマートパワーグリッドから金融ネットワークやデータセンタに至るまで、GNSSに認証を導入することは、重要インフラにとって画期的な出来事だ。ミーコニング(受信信号を再送して誤誘導する記録再生攻撃)などの高度な脅威からお客様を防御することで、ネットワークのタイミング整合性の向上を支援する。既存のお客様は、簡単なファームウェアアップデートでこの新しいGNSSセキュリティ機能にアクセスでき、進化し続ける脅威に対しても保護を維持できる。
AdtranのOSNMAサポートは、重要インフラに新たなレベルのGNSSセキュリティをもたらす。 OSA 5412、OSA 5422、OSA 5430、OSA 5440製品ラインのマルチバンドGNSS受信機で利用可能なこの機能は、GalileoのOpen Serviceと統合され、デジタル署名とTESLAチェーンキーを使用してナビゲーションデータを認証する。これにより、タイミング情報と位置情報が真正であることが検証され、なりすましや改ざんから保護される。AdtranのOscilloquartz Syncjackプローブは、GNSS信号を信頼できるPTPソースと比較することで、ミーコニングを検出し、防御の2層目を追加する。この2層アプローチにより、従来の受信機では見逃される可能性のある微妙なタイミング操作や遅延攻撃を特定できる。信頼できる時刻、自動更新、簡単なプロビジョニングによりセットアップは簡単で、あらゆるタイプのインフラストラクチャへの導入が簡単だ。
AdtranのOscilloquartz製品ライン管理担当ヴァイスプレジデントであるIgal Pinhasov氏は「GNSS認証はもはや理論上の話ではない。既に利用可能で、導入も可能であり、既存の機器を交換することなく実装できる」とし、「GalileoのOSNMAサービスをサポートすることで、タイミングの整合性の水準を高め、進化する脅威に対して組織がネットワークを強化できるようにする。このイノベーションは、お客様が運用リスクを軽減し、コンプライアンス要件を満たし、金融、通信、エネルギーなどの分野でより信頼性の高いサービスを提供できるよう支援する。デジタルトランスフォーメーションが加速する中、認証されたタイミングは信頼性と回復力にとって不可欠だ。この進歩により、お客様は将来を見据えた運用を実現し、ますますつながる世界において、安全で高性能なサービスを提供できるようになる」とコメントを出している。
編集部備考
■近年、GNSS信号を悪用した「なりすまし」や「ミーコニング」の被害が、軍事領域にとどまらず民間でも報告されている。特に欧州や中東では、船舶・航空機の航法システムが誤誘導を受ける事例や、基地局の時刻同期が乱れるトラブルが増加している。GNSSは通信や金融取引、電力網の制御など多くの社会インフラを支える基盤であり、受信信号が改ざんされれば、その影響は即座にネットワーク全体へ波及する。いまや「GPSが受信できる=正しい時刻が得られる」とは限らない時代に入っている。
これに対抗するため、衛星・受信機・ネットワークの三層にわたる防御が世界的に整備されつつある。衛星レベルでは、GalileoのOSNMAが実運用を開始し、BeiDouでも同様の認証機能が段階的に導入されつつある。受信機レベルでは、複数衛星・周波数を照合し、信号の整合性を監視するRAIM技術や、方向性アンテナによる妨害排除も、高信頼用途を中心に実用化が進んでいる。さらに上位のネットワーク層では、PTPやNTPなど複数の時刻経路を併用し、地上波同期や、クラウド事業者による分散型時刻配信などを組み合わせて冗長化を図る動きが広がっている。
このように、GNSSのセキュリティは単一装置で完結するものではなく、複数レイヤを重ねる「多層防御」へと進化している。中でもGNSS受信機が認証機能を備えることは、上位ネットワークの信頼性を根本から支える意味を持つ。今回発表されたAdtranのOSNMA対応は、この潮流の最前線の一つに位置づけられる。AdtranのOscilloquartzは通信事業者や電力・金融分野などで広く使われており、その信頼性が業界標準を形づくってきた。OSNMA対応によって、GNSS信号を受信した瞬間に真偽を判定できるため、PTPネットワークを含む上位層での誤時刻伝搬を未然に防止できる。これは、時刻同期の分野における「ゼロトラスト」概念の一環とも言えるだろう。
今後、通信ネットワークの利用が社会のあらゆる領域に拡大するほど、攻撃対象もまた広がっていく。それはGNSSをはじめとする時刻同期システムも例外ではなく、精度の追求だけでは社会インフラを守れない時代が来ている。Adtranの取り組みは、技術の進歩だけではなく、時刻同期装置が『精度装置』から『多層防御を支える精度と信頼の中核装置』へと進化せざるを得ない現実を示している。







