NokiaとBharti Airtelが提携し、ネットワークAPIを通じて開発者と企業に5G機能を提供
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Nokiaは12月4日(エスポー)、Bharti Airtelとの提携を発表した。
この提携により、NokiaのNetwork as Codeプラットフォームと開発者ポータルを通じて、同社のネットワーク機能をサードパーティの開発者に提供できるようになる。
Nokiaは「この戦略的パートナーシップにより、開発者と企業はAirtelのインド全土に広がる広範なネットワーク資産へのアクセスが可能になり、新たな収益化の機会と、複数の業界分野にまたがる革新的なユースケースが創出される」と説明している。
実証実験の成功を受け、AirtelのネットワークAPIは、NokiaのNetwork as Codeプラットフォームを利用する開発者、システムインテグレータ、そして企業からなる既存のエコシステムに対し、サブスクリプション方式で提供される予定だ。これにより、開発者コミュニティは、AI、5G、エッジコンピューティングといったAirtelネットワークの強力な機能を活用した高度なソリューションをシームレスに構築できるようになる。
Nokiaは「通信事業者がネットワークの一部を仮想化し、開発者向けにカスタマイズされたデータと機能を提供することを可能にするネットワークAPIは、状況を一変させている。この技術は、ネットワーク機能の未来を形作る上で極めて重要な役割を果たすと同時に、新たな収益機会の創出にも大きく貢献すると期待されている」と説明している。
Airtel Business(B2B向け法人サービス部門) のCEOであるSharat Sinha氏は「Airtelは、未来を見据えたイノベーションに向けて、エコシステムを結集し、協業していくことを常にめざしている。このコミットメントに基づき、本日、NokiaとネットワークAPIに関して提携し、エコシステムが当社のネットワーク機能を自動化や安全で革新的なデジタルサービスの構築に活用できるよう支援できることを大変嬉しく思っている」とコメントを出している。
Nokiaのインド クラウド&ネットワークサービス担当責任者であるArvind Khurana氏は「Airtelとの提携は、Network as Codeエコシステムの拡大に向けた重要な一歩だ。これは、通信事業者がネットワーク投資を収益化し、開発者コミュニティにおけるイノベーションを促進するという当社のコミットメントを示すものだ」とコメントを出している。
NokiaのNetwork as Codeプラットフォームは、開発者とネットワーク間のギャップを埋め、アプリケーションのイノベーションとデジタルトランスフォーメーションの加速を実現する。開発者は、基盤となるネットワーク技術を意識することなく、ネットワーク機能への標準化されたアクセスを利用できる。複数のAPIエコシステムを接続し、堅牢な多層APIセキュリティとネットワーク機能へのシンプル化されたアクセスを組み合わせ、通信事業者に最も幅広いネットワーク エクスポージャ オプションを提供する。
NokiaのNetwork as Codeプラットフォームのグローバルエコシステムは、通信事業者、AIおよびデータセンタの顧客、コミュニケーション・プラットフォーム・アズ・ア・サービス(CPaaS)プラットフォームプロバイダ、システムインテグレータ、垂直独立系ソフトウェアベンダなど、60社を超えるパートナーに拡大している。
編集部備考
■今回の発表の中心である、5Gネットワークの高度な機能を「Network as Code(NaC)」として抽象化し、アプリケーションから直接呼び出せるようにする取り組みのメリットを、改めて整理したい。従来、QoS制御や位置情報、スライス管理といった高度機能は通信事業者側の専門的オペレーションに依存しており、アプリケーション開発者が直接活用するには敷居が高かった。それに対し、NaCを用いることで、これまで通信事業者の内部に閉じていた機能をAPIとして外に出すことができ、開発者はクラウドと同様の感覚でアクセスできるようになる。こうしたネットワークAPIという概念自体は目新しいものではないものの、Airtel のように大規模なトラフィックを扱う事業者が本格的な商用展開へ踏み出したことは、市場の成熟度を押し上げる重要な一例と言える。
ネットワークAPI化の進展は、ユーザ企業のビジネスモデルにも構造的な変化をもたらすことが期待できる。例えば、配送ロボットのルートを管理する企業が、混雑ポイントだけネットワーク品質を引き上げる。オンラインゲームが、大会開催時のみ遅延を厳密に抑える通信設定を瞬時に確保する。異なる分野の事例でありながら、その本質は“場面ごとの最適化”をアプリから直接実行できる点にある。NaCの活用により、企業にとってネットワークは機能が固定されたインフラではなく、必要な時に必要な能力だけを引き出す“変動的な資源”へと変質していく。この構造転換こそが、企業の新たなサービス価値を生み出す土壌になる。
さらに、生成AIによる自動制御やエッジアプリケーションとの連携が進む中で、アプリケーションがネットワーク品質を自律的に調整する仕組みが広がれば、通信がサービス競争力の源泉として再び存在感を強める可能性がある。こうした観点から見ると、Airtel Businessが企業向けエコシステムと結びつけてNaCを導入した意義は大きく、アジア市場における「テレコムAPIの商用モデル」の実証としても注目すべき動きである。
一方で、この領域でのNokiaの存在感は非常に大きい。同社は GSMA Open Gateway の主要貢献者としてAPI仕様策定に深く関与し、ネットワーク露出機能(Network Exposure / NEF)やプラットフォーム実装で豊富な商用実績を有する。単なるAPI化にとどまらず、通信事業者のビジネス変革やデベロッパーエコシステム構築まで射程に入れた支援体制は、他社との強力な差別化要素と言える。また、5G SAコアとの高い親和性や、事前パッケージ化されたAPIカタログの提供など、商用化までのリードタイムを短縮する仕組みが整っている点も見逃せない。
今後は、API種別の拡大と実装領域の多様化により、ネットワークAPIが産業DXの基盤として“空気のように”自然に利用される段階へ進むと予想される。通信事業者が保有するネットワーク価値がアプリケーション層へ直接流れ込む構造が一般化すれば、5Gの「産業用途」はより実体を伴ったものになるだろう。また、これは通信事業者にとって、現実的な新たなマネタイズの創出でもある。今回の Airtel とNokiaの取り組みは、その未来像に向けた潮流を示す好例の一つと言えるだろう。



