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ソフトバンクが、シスコと連携して「All optical network」を全国のメトロネットワークに展開

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消費電力を約90%削減、400G対応の最新ルータを導入し大容量・省電力の次世代通信インフラ構築へ

 ソフトバンクとシスコシステムズ(以下、シスコ)は10月23日、両社が連携し、光電変換が不要な光伝送技術により通信ネットワークの大幅な省電力化を実現する「All optical network」の、全国のメトロネットワークへ展開すると発表した。

 第一弾として、2025年9月に、初期エリア(大阪府)への展開が完了した。このメトロネットワーク向けのAll optical networkは、通信ネットワークの全ての領域に光の技術を用いている。また、400GbEに対応したシスコの最新ルータの導入や、メトロネットワークへ適した簡易型アーキテクチャの採用などにより、大容量でありながら、約90%(従来比※1)の消費電力削減を可能にする。

※1:ソフトバンクが従来のメトロネットワークで使用しているルータ、トランスポンダー、光多重装置および光増幅器による構成との比較。

 今後ソフトバンクは、2027年までに全国のメトロネットワークにおけるAll optical networkの展開を完了する予定だ。ソフトバンクとシスコは、今後のAIの普及やBeyond 5G/6G時代のデータトラフィック増加を見据え、高い拡張性を備えた大容量のメトロネットワークを整備するとともに、カーボンニュートラルの実現に貢献する持続可能な通信インフラの構築を推進する。

メトロネットワークへのAll optical networkの展開の背景

 近年、生成AIやクラウドサービスの普及に伴いトラフィックが急増する中、Beyond 5G/6G時代にはさらなるトラフィック需要の増大が見込まれている。一方で、通信事業者には環境負荷の低減や持続可能な通信インフラの構築が求められている。こうした中ソフトバンクは、通信インフラのグリーン化に向けて、2023年10月に全国のコアネットワークでのAll optical networkの展開を完了した。今回、その対象を拡大し、基地局やAIサービスなどより利用者に近い拠点とコアネットワークを結ぶ、全国のメトロネットワークへの展開を開始した。

図1:All optical networkの新たな展開範囲

メトロネットワークに展開するAll optical networkの主な特長

All optical networkとIPネットワークの融合
 IPルータに、長距離・大容量の光伝送を実現するシスコ製400Gコヒーレント光トランシーバ「OpenZR+」を搭載し、途中区間での光電変換を一切行わないAll optical接続を可能にします。これにより、消費電力を帯域当たり約90%(従来比※2)削減する。

※2:ルータ~光多重装置の間(光多重装置を含まず)において、ソフトバンクが従来のメトロネットワークで使用しているルータおよびトランスポンダーによる構成との比較。

 また、SRv6(Segment Routing IPv6)などのIPネットワーク技術の活用により、コア(データセンタなど)からエッジ(基地局など)までのエンド・ツー・エンドの制御など、一般的なAll optical networkでは困難とされてきた大規模で柔軟な経路制御を実現する。IP技術を融合することで、省電力と拡張性を両立したネットワークを構築する。

図2:従来のネットワークとAll optical networkの比較

メトロネットワークに適した簡易型アーキテクチャの採用
 コアネットワークなどの長距離伝送では、従来はラックマウント型光増幅器が必要だった。一方、長距離伝送を前提としないメトロネットワークでは、シスコが新たに開発した、ルータに直接搭載できる手のひらサイズの光増幅モジュール「QSFP-DD OLS」を採用する。このモジュールに合わせてソフトバンクが独自に開発した、外部電力不要の光多重装置(最大6.4Tbps)を組み合わせることで、90%超(従来比※3)の消費電力削減を実現する。これにより、小型・省電力でありながら拡張性を備えた、最適なメトロネットワークを実現する。

※3:光多重装置間において、ソフトバンクが従来のメトロネットワークで使用している光多重装置および光増幅器による構成との比較。

図3:簡易型All opticalアーキテクチャ

シスコの最新チップ「Silicon One Q200」を導入
 All optical networkに接続するIPルータには、シスコ製の400GbE対応の最新チップ「Silicon One Q200」を搭載し、大幅な性能向上を図ります。「Silicon One Q200」を活用することで、従来使用しているルータとの比較で、約7倍のスイッチ容量を実現しながら消費電力を約1/2に削減する。

図4:電力効率の改善

 ソフトバンクの執行役員 テクノロジーユニット統括 モバイル&ネットワーク本部 本部長である大矢 晃之氏は「シスコと連携し、日本全国のメトロネットワークにAll optical networkを展開することは、将来を見据えた持続可能な通信インフラの構築に向けた大きな前進だ。AIの普及や次世代技術の進展に伴い増大するデータ需要に対応するため、高い拡張性を備えた大容量のネットワークを実現する。さらに、IPと光の技術を組み合わせることで、省エネと柔軟性を両立し、日本社会と産業を支える通信基盤を、強靭かつ持続可能なものへ進化させていく」とコメントを出している。

 シスコシステムズのアジア太平洋地域 日本サービスプロバイダー事業 プレジデント であるVish Iyer(ヴィッシュ・アイヤー)氏は「このたびソフトバンクと共にメトロネットワークにAll optical networkを導入することは、強靭でエネルギー効率の高いネットワークインフラの構築という、両社が共有するビジョンの実現に向けた大きな一歩だ。このパートナーシップは、日本のデジタルトランスフォーメーションやAIによる成長を支える、拡張性と環境性能に優れたインフラの提供に注力している。今後も両社の強みを結集し、日本社会や企業の皆さまにとって、よりグリーンでつながりのある未来の創造に貢献していく」とコメントを出している。

 今回のAll optical networkを支えるアーキテクチャを、シスコでは「Routed Optical Network(RON)」と呼称しており、IPと光の融合によるネットワークの簡素化と効率化を実現するソリューションとなる。

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