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世界初、ネットワークスライシングにおける安定通信を支える通信要件の達成見通しを事前に推定する技術を実証【NTT、NTTドコモ】

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スライス単位で通信要件への満たされやすさを把握し、社会インフラ・産業用途での安定性・運用計画の高度化に寄与

 NTTとNTTドコモ(以下、ドコモ)は3月3日、用途の異なるスライスごとに安定通信を支えるための通信要件の満たされやすさを事前に推定する技術の実証に成功したと発表した。
 従来は困難であったスライス単位での個別推定を、通信特性に関わる中間指標を推定・調整する手法により実現したもので、商用設備を用いた実証実験において有効性を確認している。
 両社は「今後は、本技術をベースに、複数の通信要件の観点で、スライスごとの適合性を事前に把握できる仕組みの実現に向けた検討を進める」とし、「スライスごとの通信要件への適合性を事前に把握できる仕組みを実現することで、社会インフラ・産業分野におけるサービスの安定性向上や運用の効率化に貢献する」としている。

背景
 クラウドサービス、AI、IoTの利用拡大に伴い、社会インフラ・産業用途では大容量データの扱いやリアルタイム処理の重要性が高まっている。ドローン、ロボット制御、遠隔監視などのサービスでは、安定したモバイル通信が運用効率に直結する一方、都市部や観光地などトラフィックが集中するエリアでは通信が不安定になる場合があり、サービス提供に支障が生じるケースもある。
 このような課題に対し、ドコモの5G SAにおける通信安定化技術である「スライシング」を活用することで、同一ネットワーク上で用途の異なるサービスを同時に扱いながら、用途に応じた「ネットワークスライス」(以下、スライス)を提供することをめざしている。
 社会インフラ・産業用途でスライシングを活用するためには、サービス提供者がどのエリアで、どの程度通信要件を満たせる見込みがあるのかを事前に把握できることが重要だ。例えば災害発生時の臨時対策拠点や避難所周辺では、限られたエリアに通信が集中しやすく、映像・センサ情報の共有や関係機関の連絡が不安定になる可能性がある。エリア内で通信要件が満たされやすい地点をあらかじめ把握できれば、拠点設置場所や通信経路、運用体制(映像共有の方法や端末配置)を事前に計画でき、現場での手戻りやリスクを低減できる。こうした事前計画の精度向上は、初動対応の迅速化や関係者の負担軽減にもつながる。
 今回の実証では、このようなエリア単位での通信要件の満たされやすさを事前に把握するための技術として、スライス単位での推定が可能であることを確認した。

研究の成果
 社会インフラ・産業サービスにスライシングを安心して活用するためには、エリアごとに期待できる利用用途に対する適合性をスライス単位で事前に把握できる仕組みが重要だ。そのためには、ネットワーク上で実際に提供されるスライスごとにスループット等の通信要件への適合性を推定する技術が必要となる。
 しかし、スライシングでは複数のスライスが同じ設備を共有して動作するため、スライス間のリソース利用状況が相互に影響するという特性がある。従来は、設備全体の実効速度に一定の係数を乗じるといった簡易的な試算にとどまっており、スライス単位で通信要件にどの程度応えられるかを精度高く推定することは困難だった。
 今回、NTTとドコモはこの課題に対し、機械学習による推定処理にスライスの通信安定化に関する情報を組み込むことで、スライス単位で通信要件への適合性を推定する技術を新たに確立した。本技術により、複数スライスが同時に利用される環境においても、スループットなどの指標をもとに、各スライスがどの程度利用用途に応えられるかをより実態に即した形で推定できるようになる。

技術のポイント:通信特性に影響を与える中間指標を推定し、スライスごとの通信要件の満たされやすさを推定
 スライスでは用途に応じて異なる通信特性を設定できるが、その設定内容を通信要件への適合性の推定に反映させるためには、設備側のリソース配分に関する情報と機械学習による推定処理を適切に組み合わせることが重要だ。
 本技術では、設備から取得したデータをもとに通信要件への適合性を直接推定するのではなく、まず通信特性に影響を与える電波品質指標や無線多重数、通信安定化リソース利用量等の中間的な指標を機械学習で推定する。そのうえで、スライスごとに設定された安定化の方針をこの中間指標に反映・調整し、最終的にその値を利用して、スループットなどの指標の観点で各スライスが通信要件を満たせるかを推定する仕組みとしている。
 具体的には、まず設備から取得した各種データを入力として中間指標を機械学習で推定する。次に、その推定値がスライスに設定された通信特性の方針と矛盾する場合は、方針に沿った値に調整する。最後に、設備データと調整後の中間指標を入力として、各スライスが利用用途に対してどの程度応えられるか(例:スループット観点での適合性)を推定する(図1)。
 この仕組みにより、スライスごとに設定した通信特性を反映した形で、実態に即した通信要件への適合性の推定が可能となる。

図1:技術のポイント

実証実験結果
 NTTとドコモは、本技術の有効性を確認するため、2025年12月に東京都内の商用設備において実証実験を行った。具体的には、実機端末での実測に加え、ドコモ商用網の基地局から取得され、蓄積されたデータを活用して推定を行い、実測値と推定値の誤差を検証した。

(1)スライス単位の推定が実測と整合することを確認(特定期間の参考比較でRMSEを51%低減)
 まず、スライス単位で通信要件への適合性を推定できるかを確認するため、先行設備上で端末スループットの推定を実施した。従来は、設備全体の実効速度に一定の係数を掛けて概算値を算出する方法が一般的だったが、スライス間のリソース利用状況の影響を十分に反映できないという課題があった。
 本実証では、商用設備から継続的に蓄積されたデータを活用し、実測値との比較を通じて推定結果の妥当性を検証した。その結果、新技術により推定した端末スループットを実測値と比較したところ、測定期間全体を通して推定精度が向上することを確認した。また、従来の概算手法を比較対象とした特定期間の参考比較においても、誤差(RMSE)が従来手法に比べて51%低減される結果となり、スライスごとの利用用途に対する適合性を、より条件に即して推定できることが示された。

(2)推定結果をヒートマップで可視化し、エリア内の通信要件を満たせる見込みが高い地点を把握可能に
 ドコモ商用網にて蓄積される基地局から取得されたデータを用いて、端末スループットを指標として通信要件を満たせる見込みを推定し、結果をヒートマップ形式で可視化した(図2)。本技術により、エリア内の地点ごとに利用用途に応えやすい場所の違いを視覚的に把握できることが示された。

図2:通信要件に対する適合性の可視化

 上記(1)(2)より、本技術により商用網で蓄積されるデータを分析することで、スライスごとの通信要件を満たせる見込みを精度高く推定し、エリア内での違いを可視化できることが確認された。この情報から、サービス提供者は、通信要件を満たせる見込みが高い地点を起点に拠点配置や経路の設計、端末配置の選定などを計画段階で検討できるようになる。例えば災害対応時には、臨時対策拠点や避難所周辺で「映像・地図・センサ情報を共有する端末をどこに置くか」「どの経路で通信を確保するか」を事前に見当づけできるため、現地に入ってから通信が不安定と分かって拠点や端末の配置を移し替え、再度設定・確認を行うといったやり直しを減らせる。その結果、運用計画の精度向上や現場対応の手戻り低減に役立つ。
 このように、必要となる通信性能を満たせる見込みを具体的に把握したうえでスライスを利用できるようになるため、5G SAにおけるネットワークスライシングの有効活用を後押しし、スライシングの普及・提供拡大に寄与することが期待される。

各社の役割
【NTT】
・スライスの通信安定化制御を考慮した安定通信を支える通信要件の達成見通しを事前に推定する技術の開発。

【ドコモ】
・商用網における実証実験環境および蓄積データの提供、実証評価、および本技術を活用したサービスの検討。

今後の展開
 今後、NTTおよびドコモは、本技術をベースに、今回実証した推定・可視化の枠組みを発展させ、スループットに加えて遅延など複数の通信要件の観点で、スライスごとの適合性を事前に把握できる仕組みの実現に向けた検討を進める。
 スライスごとの通信要件への適合性を事前に把握できる仕組みを実現することで、災害対応時の情報共有、社会インフラの遠隔監視、ドローンによる点検など、通信条件が変動しやすい環境におけるサービスの安定性向上や運用の効率化に貢献する。
 NTTとドコモは「用途の多様化に対応したスライスの発展を通じて社会課題の解決に取り組み、スライシング技術による新たな価値の創出をめざす」としている。

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