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つくばフォーラム2023開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【4】

INTERVIEW 有料

運用を抜本的にスマート化する技術

無派遣で心線切替可能な遠隔光路切替ノード

 オンサイト作業員の人数は将来不足することから、光心線切替を遠隔制御により行うことでオンサイト作業を削減することが求められている。
 青柳所長は「先ほどご紹介した多段ループ型光アクセス網と組み合わせた遠隔制御の研究を進めており、ループの境目に遠隔制御が可能な光路切替ノードを設置することで、所内ノードから所外ノードをコントロールする技術となる。光クロスコネクト部やポート監視部の駆動を微小電力で実現することで、光給電で運用することを想定している。所外ノードは屋外設備となるので、筐体保護の施策も進めている。また、所内ノードでの操作に関しては、スキルレスで実行できるようにする」としており、「この遠隔光路切替ノードの要素技術を活用した、設備ビジネスモデル創出にも期待している」と説明している。

遠隔光路切替ノードのイメージ。
遠隔制御部(※1):光ファイバ給電+所内ノードから所外ノードのコントロール。
光クロスコネクト部(※2):微小電力駆動+波長無依存な光ファイバ心線切替。
ポート監視部(※3):微小電力駆動+波長無依存での全心線一括損失確認。

電柱工程におけるスマートエンジニアリング技術

 所外工事の人身事故の内、アクセス系工事比率は増加傾向にあり、対策が喫緊の課題だ。電柱・ケーブル等工事は人に依存した工法で、日当り施工量は10年前から変わっていない。人身事故の減少および現場施工を継続させるため、技術による抜本改革が求められている。
 青柳所長は「電柱工程における危険工程の排除や作業の省力化に向けた技術として、電柱把持施工、施工障害物近接検知、鋼管柱地際補強に取り組んでいる。市販品の活用も含めた機械を利用した安全性向上により、電柱工事事故を約30%抑制することをめざしている」と説明している。

アクセス系工事は増加傾向にある。数十年前に建てた電柱の更新もあるので、電柱工程におけるスマートエンジニアリング技術を活用する機会は多くなりそうだ。

画像認識によるインフラ構造物の劣化自動判定技術

 事業者毎に現地で行うインフラ設備点検の効率化に向け、MMS等による設備の一括撮影と撮影画像を用いた点検が進められている。現行では撮影画像から人手で劣化を確認しているため、膨大な稼働や点検品質のばらつきが問題となっている。
 そこでAS研では、様々な構図や日照条件にて撮影された画像から、画像認識AIが各種インフラ設備を自動で識別し、高精度に劣化を検出する研究を進めている。これにより、画像の目視検査から画像認識AIへの移行による稼働削減と品質の均一化が可能となる。昨年8月には自治体(北広島町)、NTT-BS、NTTAS研の共同による社会実験の実施が報道発表されている、実用化に近い技術だ。
 青柳所長は「天候や時間帯によって構造物の見え方は異なるので、AIが学習を重ねて精度を高めることが重要になる。我々にはNTT設備に対する劣化自動判定技術のノウハウが有り、それを自治体や電気事業、ガス事業にも適用できるのではないかということでご提案している。労働者人口の減少という課題はどの事業においても見えていると思うので、AIを使った劣化自動判定による効率化をお役立ていただければと考えている」と説明している。

画像認識によるインフラ構造物の劣化自動判定技術。錆や露筋をはじめ、構造物の様々な変化を把握できる。

社会インフラの被災予測技術

 AS研では、災害時にもインフラの機能を維持とするため、機械学習による被災予測の研究開発に取り組んでいる。その中で、各種災害による設備個々の被災予測には、必要なデータの特定と活用が課題になっているという。
 その解決として、事例から被災メカニズムを検証し、要因を特定した上で、地形等関連するデータを活用して、被災要因を予測パラメータに変換する技術が研究されている。将来的にセンシングデータやインフラ4Dデータを活用し被災予測を高精度化するという。
 青柳所長は「機械学習やデジタルを活用することで、広域化・複雑化した大規模災害に対してプロアクティブに管理することができる。例えば、被災により故障までには至らなくても、故障の寸前であることを把握できれば事前に対処できる。また、壊れにくい設備を把握できるので、定期的な改修のスパンを調整してコスト削減を図ることもできる」と説明している。

社会インフラの被災予測技術のイメージ。

大規模システム故障向けの故障箇所推定・影響把握

 ネットワークサービスの社会的重要度が高まっている中、大規模なシステム故障時は状況把握に膨大な情報の判断が必要であり、初動対応にも時間を要してしまう課題がある。
 そこでAS研では、マルチレイヤのリソースから得られる様々な情報を組み合わせ、物理装置だけでなく論理構成上の故障箇所を瞬時に推定する研究に取り組んでいる。汎用モデルを活用し、論理情報(上り/下り、トラヒック)の管理と、サービスのつながりにくさを判定できるという。
 青柳所長は「故障個所の把握が難しいことは、最も重要な課題の一つだ。それを、自己進化型故障イベント分析技術を用いることで、自動的に状況を把握できるようにする。これにより、複雑な故障の原因箇所を短時間・高精度に推定し、OPEXを削減できる。また、影響度の早期把握、情報発信の迅速化も期待できる」と説明している。

自己進化型故障イベント分析技術「Konan」と、ネットワークリソース管理技術「NOIM」を組み合わせることで、大規模システム故障向けの故障箇所推定や影響把握を実現する。

インタビュー目次

1:研究開発の方向性

2:サービスの高度化・多様化を支える技術(NW性能の限界超えを実現する通信・インフラ技術の革新)

3:サービスの高度化・多様化を支える技術(ユーザやサービスに合わせるNW柔軟化技術の革新)

4:運用を抜本的にスマート化する技術

5:新ビジネス領域を開拓する技術

特集目次

・技術交流サロン・ワークショップ

■出展社Preview

・NEC

・エクシオグループ

・住友電気工業

・日本コムシス

・横河計測

以下、後日更新

■会場Review