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FOE専門技術セミナー企画委員インタビュー【FOE-5】 大洋横断からデータセンタや各家庭まで、くまなく展がる情報網を支える光ファイバ技術

INTERVIEW 有料

住友電気工業(株)
光通信研究所
主幹
金森 弘雄氏

コースリーダー:
住友電気工業(株) 金森 弘雄
サブリーダー:
古河電気工業(株) 太田 寿彦

 現在、グローバル需要に対して供給が追いついていないと言われている光ファイバだが、今年の本セッションでは最新のファイバ技術から接続や全体のシステム技術、果てはグローバルな市場動向までの知見を得ることが出来るラインナップとなっている。「光ファイバケーブルについての本セッションは、光通信技術展スタート当初より設けて頂いている言わば定番のコースだ。毎回、NTT AS研より基調講演のようなアクセスネットワーク全体の話をして頂いた後、電線メーカーより個別の技術論を説明して頂く構成になっている。業界の新人や工事業者にもわかりやすく、また毎年マンネリにならぬようにまとめている」とコースリーダーの金森氏は語る。現在、OTT(Over The Top)事業者の台頭によって、従来の通信キャリアの役割はマルチサービスプロバイダから単なるパケット伝送するだけの存在、悪い言葉で言えば「土管」化するのではないか、という危惧も囁かれている。「光ファイバ」というテーマは定番ながら、そのような通信キャリアとOTT事業者の競合及び棲み分けの構図を隠されたテーマとして、市場や技術の動向を読み解くことで本セッションを一層意義深いものと出来ることだろう。

将来アクセスネットワークの方向性
日本電信電話(株)
アクセスサービスシステム研究所 所長
天野 博史

 「まずはAS研の天野所長より光ファイバケーブルネットワーク全体の話、特にインフラ部分の方向性を解説頂く。日本ではFTTHという形で大規模光ネットワーク構築期を終えて世界展開を目指すべき時期に来ているが、高信頼性ながらも高コストのためなかなか普及していかない。社会状況や通信キャリアの役割変化を踏まえて、従来とは異なる視点で見てゆく必要がある」と金森氏は語る。現在、世界で5Gの導入が叫ばれ、東京都においては景観美化と災害対策の観点から「無電柱化」の話も出ている。そのような状況を踏まえた、光アクセス網と5Gとの融合や自然災害にも耐え得る強靭なネットワーク構築が本講演のキーワードとなりそうだ。また、前述の如き土管化を免れるため「NTTが、サービス面も含めてどのような役割変化を担ってゆくのかが聴きどころだ」と金森氏は指摘している。

光ファイバの市場と技術、最新動向を読み解く
OFS FITEL, LLC,
Product Line Management , Research and Development, Senior Director,
Andrew Oliviero

 二番目の講演について「従来、ケーブルメーカーからの講演は国内視点で語って頂くことが多かったが、今年は海外からの視点で語って頂きたくOFSにお願いした。グローバル全体のFTTHはやや頭打ちの感はあるが、OTT事業者やデータセンタ向け等は今後の成長が期待される。市場と技術の両面において、率直な話が聴けるはずだ」と金森氏は述べている。グローバルな光ファイバ需要の半分強を占める中国市場では、FTTHから5G投資へのシフトが見込まれており、データコム市場はファイバのボリュームこそ期待できないものの今後の成長が確実視されている。市況が変化を見せることで、求められるファイバの仕様やシステムも当然変わることとなる。国内外の対比として、最初の講演と聴き比べるのも良いだろう。「技術的な点では、データセンタ向け高密度配線の他に、長距離伝送用低損失ファイバの話にも注目してほしい。非線形効果を抑えるためにコア径を太くしつつ損失の低減を実現したハイエンドの製品だ」と金森氏は期待を寄せる。

光ファイバの接続技術の動向
住友電気工業(株)
光通信研究所 情報伝送技術研究部 部長
佐野 知巳

 「最後の講演の前半は、コネクタや融着接続のレクチャーになると思う。後半はデータセンタ等の需要に向けた多心の接続技術、また非接触タイプの空間結合型コネクタ等の動向についての話になるだろう」と金森氏は語る。接続損失を低減させることがシステム全体の設計自由度を上げることにも直結するので、ファイバを語る上ではやはりコネクタ技術の話題は欠かせない。特に、データセンタ向けにおいては、高密度・省スペース化はもとより空間結合タイプ等の低損失化は必須課題だ。

 聴講者に向けて、「光ファイバは太平洋を横断するような超長距離からデータセンタや家庭内の短距離まで現在様々な場所で使われているが、データセンタ用途ではNTT主導のもと開発されたアクセスネットワーク技術が有効活用されている。その意味で、AS研天野所長の講演から更なる製品展開のヒントを見出すことも面白い視点だろう。また、光ファイバや接続技術も、社会や市場の変化に応じて進化を続けてきた。その最新動向に注目して聴講者のビジネスの一助となれば良いと思う」とメッセージを送っている。
(OPTCOM編集部 井上政基)

FOE専門技術セミナー委員Interview一覧

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【FOE-1】 光技術の今後と新たな展開~通信市場と新たな市場への展開~
【FOE-2】 データセンタネットワーク戦略と最新の技術動向
【FOE-3】 急成長する映像配信サービス市場 ~事業者の戦略とIP配信技術の最新動向~
【FOE-4】 5Gで変わること、光通信に期待されること
【FOE-5】 大洋横断からデータセンタや各家庭まで、くまなく展がる情報網を支える光ファイバ技術
【FOE-6】 【基礎講座】クラウド・データセンタを支えるトランシーバの基礎と測定
【FOE-7】 基礎から実用化アプリケーションまで、シリコンフォトニクステクノロジーの最新動向
【FOE-8】 グローバル規模で急拡大する光アクセスサービスの最新動向とそれを支えるPON技術
【FOE-9】 次世代超高速光通信トランスポートネットワークを支える光部品の最新技術動向
【FOE-10】 超高速トランシーバの最新動向