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横河電機とドコモが、5Gやクラウド・AIを活用したプラントのシステムをリモート制御する共同実証実験に合意

DX/IoT/AI 無料

プラントの自律制御の実現に向けた取り組み

 横河電機とNTTドコモ(以下、ドコモ)は4月14日、5Gとクラウド、AIなどを活用し、プラントのシステムをリモート制御する共同実証実験を行うことを発表した。これは4月13日に合意したもので、実証実験の期間は2021年度内を予定しているという。

 実証実験は、クラウド上に横河電機が開発した制御AIを設置し、プロセス装置の1つである「三段水槽」の制御装置に、5Gの通信モジュールを備えることで、水槽の水位のリモート制御を行う。これは、化学薬品や石油など流体を扱う製造業(以下、プロセス産業)のユーザが持つ既存のシステムを変えることなく、容易に、最新のAIを備えた5G対応の自律制御装置を利用することにつながるもの。両社は「将来的なプラントの自律制御の実現を視野に、技術面の検証・最適化に向けて、協力していく。本実証実験を通して新しい価値を協創し、プロセス産業を含め、各種産業の発展に寄与していく」との考えを示している。

背景
 新型コロナウィルス感染症の流行下において、プラントを自律制御する需要が急激に高まっている。これは、プラントの自律制御が生産における安全性と効率性の向上につながるためだ。横河電機がプロセス産業に対して行った昨年の調査では、回答者の64%が2030年までにプラントの完全な自律操業を見込んでおり、将来はAIなどの技術を活用し、人を介さない自律制御の仕組みが普及すると予想されている。しかし、従来の無線通信ではクラウドから制御装置への通信に遅延が発生するため、プラントのシステムをリモートで自律制御するには、技術的に大きな課題があった。

実証実験の内容
 ドコモは5Gのエリア展開を進めるとともに、社会課題の解決に向けて自治体・企業のパートナーと共に、5Gを用いたデジタルトランスフォーメーションの推進に貢献してきた。
 実証実験は、高速・大容量・低遅延の特徴を持つドコモの5Gや、5G時代に求められる低遅延などMEC(Multi‐access Edge Computing)の特長を持つドコモオープンイノベーションクラウドなどのクラウドを活用することで、技術的な課題であった低遅延の実現を検証する。既に横河電機は、自律制御が非常に困難とされている、水槽の水位の制御を目的とした実験装置「三段水槽」において、横河電機が開発したAIを用いて水位を自律制御する実験に成功しており、その技術は業界最高水準とされている。実証実験では、2021年度内にクラウド上から、このAIを用いて「三段水槽」の水位をリモートで制御するデモ環境を構築し、LTEと5Gで通信性能の比較・評価などを行う予定だ。
 横河電機は「プラント制御・運用技術とIT、業種に対する深い知識に基づき、様々な業種のお客さまのビジネス活動全体における課題の可視化、最適化を支援し、新たな価値創造や持続的な成長に貢献していく」との考えを示している。

実証実験のイメージ。ドコモオープンイノベーションクラウドなどのクラウド上から、横河電機が開発した制御AIを用いて「三段水槽」の水位をリモートで制御するデモ環境を構築し、LTEと5Gの通信性能の比較や、通信遅延によるリモート制御への影響を評価する。

横河電機の役割
クラウド上からAIを用いて「三段式水槽」をリモート制御するデモ環境の構築
LTEと5Gの通信性能の比較や、通信遅延によるリモート制御への影響を評価

ドコモの役割
5Gの提供、ドコモオープンイノベーションクラウドなどの構築・検証
水槽の制御における通信環境の検証・最適化

 
 横河電機 執行役員 横河プロダクト本部長の長谷川健司氏は「横河電機はプラントの生産設備の制御・運転監視を行う分散形制御システムを世界に先駆けて開発し、さまざまな産業の発展を支えてきた。現在当社は、自動操業が進んだ産業界の将来像である自律操業の世界を見据え、“IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)”を提唱している。5Gがクラウド・横河が開発したAI・デバイス制御装置と結びつくことで、リモートAI制御による自律操業可能なプラントの実現(IA2IA)に大きく貢献すると考えている。当社はNTTドコモと共に、お客様の更なる価値創出に、取り組んでいく」とコメントを出している。

 ドコモ 執行役員 5G・IoTビジネス部長の坪谷寿一氏は「製造業、プラントにおけるリモート制御、フィードバック制御を視野に入れた本取り組みは、非常にチャレンジングであり、今までに無い5GのMECを使った低遅延ソリューションを導入したいと考えている。横河電機と共に、5Gの技術革新も見据えて知見を溜め、産業や社会に貢献できる価値やユースケースを生み出していきたい」とコメントを出している。

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