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つくばフォーラム2026開催記念「NTT AS研 小松所長インタビュー」【6:インフラ設備(社会インフラ)】

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インフラ設備(社会インフラ)

光ファイバ環境モニタリング

光ファイバ環境モニタリングのユースケース。

 光ファイバセンシング技術と既設光ファイバを利用することで、スポット給電不要でロバストなセンサ網を構築することができる。NTTでは初期ユースケースとして、前述の橋梁添架設備点検の他、通信設備異常検知、海底線点検、工事検知といった技術を確立した。また、昨年度末には、高精度振動センシング装置(FDM-DAS)も開発している。
 小松所長は「更なる社会インフラ課題解決のため、漏水検知、地中空洞検知、橋梁点検などの技術確立もめざす。こうした新たなユースケースと、多様な事業者との連携拡大を通じて、社会インフラ監視サービスを拡大し、社会全体の安全性、効率性向上に貢献する」と説明している。

光ファイバ環境モニタリング(通信設備異常検知)

通信設備異常検知における、光ファイバ環境モニタリングのイメージ。

 光ケーブルの垂れ下がり、樹木接触、支持線破断が、架空設備異常の80%程度を占めている。この3つの設備異常は光損失では検知できず、被災時の緊急設備点検では、広大な範囲の巡視点検が必要になる。
 この領域における光ファイバ環境モニタリング活用では、平常時における振動を機械学習し、検知時に普段と違う揺れを異常度として可視化する。
 小松所長は「フィールド検証の実証結果では、架空設備の異常を86%の制度で検知した。この技術により、被災時の緊急設備点検におけるスクリーニングを行うことで、巡視点検範囲の削減に貢献する」と説明している。

光ファイバ環境モニタリング(海底線検知)

海底線検知における、光ファイバ環境モニタリングのイメージ。

 国内では数百条の海底線が運用されている。水深30m以浅では定期的に潜水点検を行っているが、点検者の将来的な人手不足が懸念されている。
 この領域における光ファイバ環境モニタリング活用は、振動データのみで簡易に点検するというものだ。小松所長は「健全時と点検時の振動データの一致性を定量評価する独自のアルゴリズムにより、容易に目視できない海底線の簡易的な健全性評価手段を提供する。これにより、潜水点検対象のスクーニングによるダイバー点検数およびコストを削減する」と説明している。

光ファイバ環境モニタリング(地中空洞検知)

地中空洞検知における、光ファイバ環境モニタリングのイメージ。

 従来の空洞化調査は、現地調査が中心だ。課題として、調査深度は地表から約3m未満に限定されている点や、高頻度な点検・常時監視が困難である点が挙げられる。
 そこでAS研では、高精度光ファイバ振動測定により、地表面の常時微動を計測し、地下構造を推定する研究を進めている。
 小松所長は「従来技術と同等性能で、深さ3~30m程度までの地盤特性を評価できる。全国に張り巡らされた光ファイバを用いて常時監視ができ、既に市街地の既設通信光ファイバを用いた実証実験で有効性を確認している」とし、「地中深部の状態を遠隔監視可能な地盤モニタリング技術を実現することで、道路陥没リスクの早期発見に貢献する」と説明している。

通信基盤設備への電力ケーブル収容設計技術

通信基盤設備への電力ケーブル収容設計技術のイメージ。

 データセンタ増設等により、今後の電力需要は増加する見通しだ。AS研では、今後予想される送配電設備の容量不足に対し、通信基盤設備の活用による解消を図る研究に取り組んでいる。小松所長は「データセンタを建設した際、そこへの送配電ルートを整備するのは時間がかかってしまう。そこで我々の通信基盤設備に電力ケーブルを収容できれば、電力工事削減による環境負荷の低減にもつながるので、社会貢献になると考えている。また先ほど触れたメタルケーブルの撤去は、通信管路も該当するので、我々は地下の管路スペースに余裕が生まれるという珍しい立場になる。こうしたスペースを有効活用していくためにも、まずはそれが可能であることを技術的に示していく」と説明している。
 AS研では、通信基盤設備に電力ケーブルを収容した際の通信品質への影響評価、および、作業者の安全対策を研究している。例えば、電力ケーブルが発熱した際、塩化ビニル製の通信管路がどの程度偏平するか推定し、通信品質に影響がないことを確認した。また、通信マンホール内での絶縁対策を検証し、構造耐力に影響がないことを確認した。
 小松所長は「こうした技術を実用化することで、NTTグループの新たな収益向上やビジネス拡大につなげていく」と話している。

電力ケーブル収容設計技術のポイント。

3DGSを用いたドライブレコーダ画像内の設備位置特定技術

3DGSを用いたドライブレコーダ画像内の設備位置特定技術の活用イメージ。

 従来の現地点検・紙台帳管理は、設備管理者の負担が大きい。また、ドライブレコーダ画像のGPS位置は最大10m程の誤差があり、設備情報の紐づけには制度が不十分という課題がある。
 そこでAS研では、MMS画像から生成した高精度な位置情報付き参照3Dデータに、ドライブレコーダ画像から生成した点検3Dデータを重ね合わせることで、設備位置を誤差0.5m以内で特定する技術に取り組んでいる。例えば、一連の画像から3DGSを用いて生成した3Dデータを使用し、広範な風景特徴を照合することで、高精度に位置を特定できる。
 小松所長は「ドライブレコーダ画像に正確な位置情報を付与し、高精度GISで管理することで、維持管理の稼働およびコストを削減できる。」とし、「また、本技術により取得したデータを活用することで、設備劣化の将来予測や、都市計画・防災シミュレーション等の実現も期待できるので、安心・安全な街づくりに貢献していきたい」と説明している。

3DGSを用いたドライブレコーダ画像内の設備位置特定技術の詳細。

編集後記

■今回のインタビューで紹介された数々の技術は、光・無線といった通信基盤から社会インフラ応用まで多岐にわたる。その根底に共通していたのは、アクセス系技術がAI時代において「価値を実装するレイヤ」へと変化しつつある点だ。
 AS研は長年にわたり、光アクセス(PON、施工、保守)、フィールド運用(故障検知、設備管理)、加入者系サービスの品質担保といった、物理ネットワークを現場で成立させる技術を担ってきた。いわばコア技術を社会に通す現場のレイヤだ。この「現場」という領域は、AI時代と極めて相性が良い。AIの価値はデータによって規定されるが、アクセスネットワークは、意味づけされた現場データを継続的に取得できる稀有な基盤だからだ。
 例えば光ファイバセンシング技術は、振動データと実際の事象を対応付けることで、環境モニタリングという新たな価値へと進化している。技術的にはアルゴリズムとして結実するが、その本質的な価値は再現可能な「データ資産」として蓄積されていく点にある。さらにAIは単体では現場で機能せず、ノイズ耐性やリアルタイム制約、誤検知コストといった条件を踏まえた実装が不可欠となる。AS研は、NTTが全国に展開する光ファイバ基盤を活用し、こうした検証と最適化を一体的に進められる点に強みを持つ。このようなデータ取得と実証環境を併せ持つポジションは、グローバルに見ても希少と言えるだろう。
 
 また、NTTグループにおけるAS研の役割は、AI時代においてさらに重要性を増している。IOWN構想が提示してきたのは、低遅延・大容量といったAI時代と相性の良い「能力」だ。それに対し、AS研の取り組みは、それが産業や社会においてどのような価値として立ち現れるのかを具体化する試みといえる。光通信の大容量化や無線通信の産業応用といった今回の研究群は、まさにその橋渡しを担うものだ。
 そうした観点からインタビューを振り返ると、特に印象に残ったのが「通信基盤設備への電力ケーブル収容設計技術」だ。これはAIデータセンタにおける電力供給制約という課題に対し、通信インフラ側からアプローチするものであり、日本における産業用AI活用の基盤整備にもつながる可能性を持つ。メタルケーブル撤去後の管路活用という既存資産を視野に入れている点を含め現実的だ。一方で、このような取り組みは技術面にとどまらず、制度面での調整も不可欠となる。小松所長が「まずはそれが可能であることを技術的に示していく」と語った点は象徴的だ。技術的に「可能である」と示すことが、制度や市場を動かす起点となる。この発言は、研究開発が新たな産業機会を切り拓く最初の一歩であることを示唆している。

特集目次

NTT AS研 小松所長インタビュー

1:ミッション・研究開発の方向性

2:光通信技術

3:無線通信技術

4:オペレーション技術

5:インフラ設備(通信インフラ)

6:インフラ設備(社会インフラ)

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