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マイクロ光学部品ベンダCudoFormの事業取得を発表【センコーアドバンス】

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 センコーアドバンスドコンポーネンツ(SENKO:センコーアドバンスの在米100%子会社)は、7月に高精度マイクロ光学部品ベンダCudoForm(米国)の事業取得を発表した。SENKOは、200/400Gをはじめハイエンドの光コネクタ市場を牽引する主要コンポーネントベンダの一角。同社の主力商品であるCS/SNコネクタやSN-MTコネクタは、ハイエンド光コネクタのグローバルデファクトスタンダードの一端を担いつつある。また、CudoFormは元々旧ナノプレシジョンのキーメンバーが再結集した企業。設備と経験はそのまま受け継がれており、超精密金属スタンピング加工によって、高精度なミラー加工及び正確なビーム整形と指向性を制御する技術を有している。SENKOは今回の事業取得によって、光集積回路(PIC)やPICインターコネクトにおける技術的アドバンテージ、また光通信以外にも3D/VRイメージング、LIDAR、デジタルヘルスとセンシング、固体照明とUVC LED病害防除等の高成長マーケットへの足掛かりを得ることとなった。

業界をリードする両社のシナジー効果

 今回の事業取得を受けてCudoFormのCEOであるRyan Vallance博士は「CudoFormの従業員及び経営陣は、SENKOに参加できることを嬉しく思っている。CPO(Co-packaged Optics)においては高精度で信頼性の高い接続性が重要だ。CudoFormとSENKOが協働することによって、狭小な部位でのパッケージングや、統合が難しい光エコシステムの厳しい要求を満たす新しいソリューションの提供が期待出来る」と語る。
 また、センコーアドバンス 常務執行役員 兼 光通信事業本部長の高野一義氏は「SENKOは光インターコネクティビティに関して世界をリードする企業であり、この事業取得を心から歓迎する。CudoFormの研究と革新的なソリューションを当社の専門知識と融合させることで、製品開発を加速し、市場における当社の地位をさらに強化することができると考える。両社は、最高の性能とイノベーションを顧客に提供するという共通の使命を担っている。業界をリードする両社のシナジー効果をお客様にお届け出来ることを楽しみにしている」と述べる。

超精密レンズ加工でCPO市場へ期待

 CudoFormの技術的な強みは、超精密なプレス加工にある。特に、光通信分野において、集光用の非球面レンズを光ファイバの先端にnm単位でまとめてプレス出来る技術を確立している企業は皆無に等しい。また、コンポーネント自体も0.5mmという超低背化を実現している。高野氏は「元々、CudoFormはプレスを行っていたが、同社自体では組立は行っていなかったので、当社が組立を請負う形で以前から取引関係はあった。既に、SiP(Silicon Photonics)チップへのカップリングについてはユーザへサンプル出荷もしており、良好な評価も頂いている。現在、CPO市場へ参入しようとしているベンダは多く、51.2Tスイッチ前面のパッチパネルへの繋ぎ込みで当社がSNコネクタを推奨しているように、各社高密度のVSFF(Very Small Form Factor)を提案している。しかし、90度ファイバアレイによるチップへの集光は接続損失が大きく、上手くいっているベンダは皆無だ。今回の事業取得は、当社が競合の一歩先を行く好機であると考える」と語る。
 800G CPO市場の本格的な到来は2025年と言われており、スペックインを目指すには今回の事業取得は最適のタイミングと言えるだろう。現在はセミオートで数千個レベルの生産態勢だが、引き合いや注文も増えているので今後は量産態勢を整えてゆくという。元々精密金属プレス加工ということで量産向きであり、樹脂コンポーネントと比較しても精度の耐久性及び安定性という点で優位性がありそうだ。

SiP上のグレーティングカプラへ高精度に集光可能

光トランシーバ内のマイクロミラーコネクタ

光コネクタベンダから光学部品ベンダへ

 今回、CudoFormに対して事業取得の意思を示した企業は複数あったようだ。しかし、特定の光コンポーネントベンダに買収されたとしたら、特定の用途あるいは特定の企業(買収先)のみに供給する形となるので、スケールは期待出来ない。しかし、SENKOの場合はトランシーバベンダであれスイッチベンダであれ、売り込むことが出来、さらに言えば光通信以外の市場へも展開が可能だ。今回の事業取得の背景には、そのあたりの理由もありそうだ。
 高野氏は「CudoFormの技術は一朝一夕に模倣出来るものではない。当社同様に数多くの特許を取得しており、それも重要な資産だ。当社はこれまでフェルールによる接続がメインであったが、光学技術を用いた接続手法を獲得したことは、高いシナジー効果と今後の市場の拡張性という点で非常に大きな武器となる」と語っている。従来の光コンポーネントベンダとしてのSENKOは、光コネクタがメイン商材であった「光コネクタベンダ」としての印象が強かったことは否めない。しかし、今回の事業取得を通じて、CPO等の光通信ハイエンド市場のみならず、3D/VRイメージング、LIDAR、デジタルヘルスとセンシング、固体照明とUVC LED病害防除等への新たな成長市場への展開も見据えている。これからのSENKOは、光通信業界の範疇を超えた「光学部品ベンダ」への進化を遂げてゆきそうだ。

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