MarvellとLumentumが、次世代AIスケールアップインフラストラクチャ向け光回路スイッチング(OCS)の実演を実施
期間限定無料公開 有料Marvell Technology(以下、Marvell)とLumentum Holdings(以下、Lumentum)は3月16日(カリフォルニア州ロサンゼルス)、Marvellの光接続ソリューションとLumentumの光回路スイッチング(OCS)プラットフォームの相互運用性に関するライブデモンストレーションを実施すると発表した。
この統合型ラックレベルシステムは、OFC 2026 (展示会:3月17~19日。ロサンゼルス)のMarvellブースで展示される。
AIワークロードがデータセンタのトラフィックをかつてないほど増加させ続ける中、ネットワークアーキテクチャは、より高い帯域幅、低遅延、そして優れた電力効率を実現するために急速に進化している。OCSはエンドポイント間の直接光パスを可能にし、大規模なAIファブリック全体におけるスケーラブルで高信号完全性、リアルタイムのデータ転送と超低遅延接続をサポートすると同時に、消費電力を削減し、中間パケット処理と光電気光変換を排除する。
今回のデモンストレーションでは、Aquila 1.6Tコヒーレントライト(Coherent Lite)DSP、Ara 1.6T PAM4光DSP、COLORZ 800 ZR/ZR+ DCIモジュールといったMarvellの光接続ソリューションが、LumentumのR300 OCSと相互接続し、システムとしての動作が示される。
高度なMarvell光DSPとR300のスケーラブルで低損失のスイッチングアーキテクチャを組み合わせることで、遅延を低減し、消費電力を削減し、ネットワーク全体の効率を向上させる、動的で高帯域幅の光パスを実現する。このシステムには、Marvellの接続ソリューションポートフォリオ全体にわたってリアルタイムの可視性、予測分析、自動最適化を提供するエンド・ツー・エンドの高度なテレメトリ、分析、インテリジェンスプラットフォームであるMarvell RELIANTも組み込まれる。
Marvellのコネクティビティ事業部門担当SVP 兼 ゼネラルマネージャーであるXi Wang氏は「AIはデータセンタ スタックのあらゆるレイヤを再定義しており、接続性はその変革の中心にある」とし、「Marvellの光接続ソリューションとLumentumのOCSプラットフォームの相互運用性を実証することで、未来のAIネットワークがパフォーマンス、電力効率、アーキテクチャの俊敏性において画期的な進歩を遂げながら、いかに大きな成果を上げられるかを示している」とコメントを出している。
Lumentumのスイッチング担当ゼネラルマネージャーであるPeter Roorda氏は「AIのスケーリングは、従来のパケットベースネットワークを実用的な限界を超えて押し上げている」とし、「R300光回路スイッチは、多数のポートを備え、ソフトウェア制御による光接続を実現することで、予測可能な低遅延パスを提供すると同時に、従来のスイッチング層に伴う電力オーバーヘッドを削減する。Marvellとのデモンストレーションでは、回路スイッチングと高度なDSP技術を組み合わせることで、拡張性の高い高性能AIファブリックを構築できることを示している」とコメントを出している。
編集部備考
■かつてOFCにおける相互接続性デモンストレーションは、異なるベンダ製品間の接続性を確認する、いわば「標準規格の実装検証」としての意味合いが強かった。
しかしAI時代の現在、その意味は大きく変化しつつある。求められているのは、ただ「繋がる」だけではなく、数万規模のGPUを一体として動作させるための「同期」と「一体動作」となる。分散学習では、わずかな遅延やパケットロスの積み重ねが全体の計算効率を大きく左右するため、ネットワークには超低遅延かつ事実上ノーエラーに近い特性が求められる。
さらに近年では、光回線スイッチ(OCS)のように通信経路そのものを動的に再構成する技術が注目されており、「どのように繋がるか」だけでなく、「どのように切り替えながら同期状態を維持するか」までが相互接続性の一部となりつつある。
こうした文脈において、今回のデモンストレーションでは、1.6Tコヒーレントライト(Coherent Lite)DSPと1.6T PAM4光DSPという異なる次世代伝送方式を、単一のOCSプラットフォーム上で相互運用させた点が、AI時代のインフラの役割を象徴している。
まず構造面から見れば、OCSは従来のパケットスイッチのようにトラフィックを逐次処理するのではなく、回線単位で通信経路を構成する。これにより、バッファリングやキューイングに起因する遅延揺らぎを極小化できる一方、トポロジ自体をワークロードに応じて動的に再構成することが可能となる。つまり、ネットワークは「固定的な接続基盤」から、「計算処理に合わせて形を変える構造体」へと変化しつつあることを示している。
このとき鍵となるのが、その上で動作する光インターコネクトの在り方だ。従来、IMDD(PAM4)とコヒーレントは距離によって明確に棲み分けられてきた。PAM4は数百メートルから数キロメートル程度の短距離・高密度接続に、コヒーレントは数十キロメートル以上の長距離・高信頼伝送に用いられるという構図だ。だが、IMDDは帯域の向上に比例して実用的な距離が短くなるので、到達距離は実装条件への依存度が高く、明確な上限が示されることは少ないが、1.6T世代では特に2km前後が設計上の一つの分岐点となりつつある。つまり、1.6TになるとIMDDとコヒーレントとの間の「距離のギャップ」が懸念されていた。それに対し、今回のデモンストレーションで使用されるコヒーレントライトDSPは、O-band対応や伝送距離の限定、信号処理のシンプル化などにより、2kmから20km程度のキャンパス接続を効率的に実現する技術コンセプトであり、1.6Tにおける「距離のギャップ」を埋める方式として期待されている。
OCSで動的にトポロジを切り替える際には、リンクの再確立に伴う再同期の速さと安定性が重要になる。その点でコヒーレントライトDSPは、伝送安定性に優れているため、切り替え後のリンク確立において、どれほどの堅牢性を発揮するのかも注目される。OCSが実際に1.6TのPAM4やコヒーレントライトを転送できる点や、これらすべてのデバイスの状況を Marvell RELIANTというテレメトリ(遠隔測定)プラットフォームで一元管理・可視化できることを確認できる点も含め、今回のデモンストレーションの意義は大きい。
■また、AI時代において着目したいのは、1.6T世代においては、こうした距離の境界が崩れ始めている点だ。コヒーレントライト方式がコヒーレント技術の適用領域を短距離側へ拡張する一方で、IMDD方式は帯域の向上に比例して距離が短くなるものの、200G PAM4をベースとする1.6T光DSPの段階では、実装条件によっては「2kmの壁」を越えて数キロメートル級の到達距離も視野に入る。結果として、実用レベルにおいて、両方式は2kmから5km程度のレンジで明確に重なり合い、同一の物理距離に対して複数の実装選択肢が存在する状況が生まれる。そしてこの距離は、AIファブリックにおいて、単一クラスタの拡張とクラスタ間接続が交差する領域として、今後ますます重要になると考えられる。
コヒーレントライトの実用化が見えて以来、PAM4による1.6Tの2km以上の伝送の議論は以前よりも落ち着いた印象も受けるが、2km以内の1.6TはPAM4の独壇場になると予測できるので、PAM4用レーザや受光素子は、生産量の多さによるコストメリットが見込まれる。このような背景から、2kmから5km程度における初期導入段階では、機能性や伝送安定性に優れるコヒーレントライトが優位に立つ場面も想定され、その一方で、量産が進むにつれて、PAM4は部品点数やエコシステムの広さを背景にコスト競争力を発揮し、用途に応じて適用領域を押し広げていく可能性がある。
そして、急成長するAIファブリックの要件は変化し、複雑化していくため、「計算処理に合わせてネットワークの形を最適化できる」ことが求められる。こうした背景により、DSPの比較も単純な意味での競合ではなくなる。低コストに優れるPAM4と、伝送安定性や拡張性に優れるコヒーレントライトは、それぞれ異なる設計思想に基づく技術であり、ネットワークの構成や運用モデルに応じて選択されるべき性質のものとなる。特にデータセンタの文脈で重要になる消費電力の比較では、かつてはPAM4が圧倒的な省電力だったが、1.6Tになると2kmを超える領域では信号の歪みが顕在化しやすく、補正処理に伴う消費電力が増加する傾向にある。対して、MarvellのAquilaのような最新のコヒーレントライトDSPでは、距離を限定したことや、波長分散に強いO-band対応などにより処理負荷を抑制し、従来のコヒーレントとは別次元の省電力を実現している。つまり、2km〜5kmの領域において、2つの方式の1.6T DSP技術が進化していくことで、ユーザはコスト、電力、性能のバランスという「用途に応じた最適化」を設計しやすくなる。
AI時代においては、ネットワークはデータ伝送の基盤だけではなく、分散された計算資源を一体として機能させるための「計算インフラそのもの」としての役割を担い始めている。ここで重要なことは、通信遅延や再同期時間が、そのまま計算効率に直結する点にある。そのため、どの伝送方式を採用するかは、従来のように距離やコストの問題にとどまらず、「どのような計算基盤を構築するか」というアーキテクチャの問題へと拡張される。これは、現在見えている1.6T DSPの最新モデルの比較に限らず、その先の世代にも関わる概念となる。
Marvellが1.6Tにおける2つの方式のDSPラインアップを用意し、LumentumのOCSとの相互接続をデモンストレーションすることは、現段階ではシンプルに両方式の棲み分けかもしれない。だが、「どの伝送方式を選んでも、このエコシステムなら、動的に形を変える次世代AIスーパーコンピュータを将来にわたり安定して動かせる」という、インフラの「自由度」と「信頼性」を同時に提示することにもなる。
物理層は「距離や消費電力、信頼性」で選ぶ時代から、「AIの学習効率(スループットと稼働率)」という新たな軸も含めて選ぶ時代となった。このパラダイムシフトは不可逆であり、今後の高性能AIファブリックの設計思想を規定する中核要素となるだろう。だからこそ、複数の選択肢が並立しうる現在の状況は、ユーザにとっては望ましい過渡期と捉えることもできる。
(OPTCOM編集部)






