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ノキアが取り組む、AIイノベーションと先進ネットワーク【5:AI時代のデータセンタからPON、光LANを提供】

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AI時代のデータセンタ ネットワーク

 AI時代のデータセンタ ネットワークにおいて、イーサネットへの移行・拡張が加速している。従来、AI学習のような大規模な並列演算には、低遅延・高帯域なインフィニバンドが使われてきたが、汎用性とコスト、ロスレスイーサネットの進化、拡張性の観点から、イーサネットの導入が進んでいる。
 ノキアはこの領域に注力しており、通信キャリア向けの強固な実績を背景に、主に「超高速スイッチング」「次世代規格の牽引」「AIを活用した運用自動化」という3つの強みで高い評価を得ている。AIに最適化された新しいイーサネットの標準化と実装をリードする重要なポジションであり、グローバルで実績を伸ばしている状況だ。

Supermicroとの協業。

 ノキアは2025年9月にSupermicroとの提携を発表しており、イーサネット化が進むAIデータセンタ領域において非常に強力な補完関係を生み出している。(当サイト内関連記事
 AIデータセンタの設計思想は、従来のエンタープライズ データセンタとは大きく異なり、サーバ、ネットワーク、運用の各領域で新たなプレイヤーが台頭している。岡崎氏は「AIデータセンタ時代は、プレイヤーが変わる。我々は、そのプレイヤー側にいる」と話す。

 この提携について、当編集部の視点から整理すると、これまでのデータセンタの主役が「汎用サーバ」と「エンタープライズ含む広範なネットワーク技術」だったとすれば、AI時代は性能、コスト、速度といった実利がシビアになったことで、「AI特化型サーバを強みとするSupermicro」と「キャリアグレードの高度な自動化技術を持つノキア」の組み合わせが、中心的なポジションに食い込んでいる構図だ。
 例えば、Supermicroの 800G イーサネットスイッチ(SSE-T8164) は、2Uサイズで64ポートの800G OSFPを備え、51.2 Tbpsのスイッチング容量を実現している。この高性能ハードウェア上で、ノキアの極めてセキュア、かつオープンで拡張性の高い SR Linux が動作することで、AIワークロードに最適なきめ細かな制御が可能になる。
 また、AIデータセンタの複雑な運用を自動化する、ノキアの Event-Driven Automation (EDA) が鍵となる。運用のシンプル化では、数千ものリンクがあるAIクラスターのプロビジョニングや設定、メンテナンスを自動化し、手作業によるミスやダウンタイムを最小限に抑える。拡張性では、ネットワーク全体の運用をスケールさせつつ、一貫したパフォーマンスを維持できる点が、大規模なGPUクラスターを抱えるハイパースケーラーや企業にとって大きな利点だ。
 通信キャリアで鍛えられたノキアの技術は、製造・エネルギー・物流といった「産業用AI(Industrial AI)」で強力なアドバンテージが有る。またSupermicroは、最新チップが出たら即座にサーバ化するという、業界最速のスピードを誇る。この組み合わせは特に、新設(Greenfield)のAIデータセンタや、産業界が主導する「AI×インフラ」の領域において、他のエコシステムを圧倒する垂直統合となる可能性を秘めている。

 日本市場においては、「Supermicroの強力な商流」と「ノキアの専門的なサポート」を組み合わせたハイブリッドな展開が期待される。
 岡崎氏は「国内で、どのようなサポートスキームを作るかがポイントとなる。もちろん、グローバルでテストされているが、日本市場でのサポート体制を考えると、やはり様々な販売チャネルがいらっしゃるので、連携した体制を整えることが、ノキアとして優先的に取り組む課題だ」と話している。

ノキアが切り拓く次世代PONの進化

次世代PONで、B2CブロードバンドからB2Bブロードバンドへ

 AI時代のインフラはデータセンタ内部の計算基盤だけで完結するものではない。それらを接続するネットワーク全体の高度化も重要なテーマとなる。そうした中で、アクセスネットワーク技術である次世代PONの進化にも注目が集まっている。
 この領域について岡崎氏は「これまでB2C用途が中心だったPONは、今後B2Bへと拡大していく。現在、コンシューマ向けでは10Gの普及率はまだ1割に満たないが、今後は25G、50G、100Gといった高速化がかなりのスピードで進むだろう。その背景には、360度カメラを使ったリモート作業や、自社の生成AIを用いた映像解析など、ビジネス用途で大量のデータを扱うケースが増えていることがある」とし、「こうした環境を実現するのが『Fiber for Everything 2.0』であり、B2Bの業務を自宅などから行えるようになることが大きなポイントだ。AIを使って映像を確認しながら高度なリモート作業を行うようになると、より多くのデータを低遅延で扱う必要がある。そのためPONも10Gで止まるのではなく、2030年ごろには100Gの導入が視野に入り、現在は50Gのトライアルも始まりつつある」と説明している。

AI時代のデータ成長に合わせた次世代PONプラットフォーム。

 ノキアでは、同じプラットフォームで100Gまで拡張できる製品を提案している。グローバルでは25Gの導入や50GのPoCが始まっており、回線の遅延による体感のラグを無くすことで、e-スポーツのようなゲーミングでの利用、また遠隔手術において熟練の医師がリアルタイムの映像を見ながらリモートで指示や意見交換をするユースケースも出てきている。
(当サイト内関連記事:ノキアの25G-PONを用いたアクセス網)

POLにより、エンタープライズLANの1ポートあたりの価格を大幅に削減

 ノキアのPON技術をLAN領域に適用して効率化を実現したオプティカルLAN(POL)は、比較的新しい技術ながら顧客数は既に700社以上を誇り、毎年倍増している状況だ。

従来のLANとPONの構成比較。複数のスイッチを削減することで、レイテンシの改善にも直結する。

 POLは、中継機器を使わず、電源不要なスプリッタで長距離光信号の複数分岐を可能とするPON技術を用いてLANを構築するので、消費電力の削減や、機器設置のための床面積の削減、そして機器メンテナンスもOLTのみで済むといったメリットが有る。また、銅線ケーブルに対して省スペースなファイバケーブルを用いるので、建物内での敷設に必要な空間も確保しやすい。
 伝送速度を上げるためにケーブルを敷設し直す必要も無く、投資対効果も非常に優れている。また、オペレーションやメンテナンスのコストも削減できる。ノキアでは、POLによりLANの1ポートあたりのコストを50%削減できるとしている。
 (当サイト内関連記事:ノキアのグリーンな光LAN配線「POL」)

 POLは交通インフラでも導入が進んでいる。例えば、従来のLANソリューションが導入されていた空港では、ネットワーク更改の際にPOLを採用するケースが出てきている。
 大量のスマートデバイス(Wi-Fi AP、IoTセンサ、CCTVビデオ分析など) を有する同空港は、完全なデジタル化と自動化の進化をめざし、運用効率、乗客の体験、安全性を向上させるアプリケーションをサポートするため、広帯域幅とQoSが必要となった。
 そこで、空港ターミナルのすべてのCCTVとドアアクセスのネットワークを更新した。12,000~15,000のエンドポイント(Term-5拡張予定)が対象となる大規模なものであり、床面積削減や、他のセキュリティサブシステムへの拡張(X-Rayなど)も実現した。

POLがもたらす節約効果(空港の例)。

 POLの概念は欧州の政策とも一致しており、欧州委員会ではGigabit Infrastructure Act(ギガビット・インフラ法)を可決し、2030年までにネットワークのギガ化をめざしている。その一環として「新設のビルや大幅改装予定のビル内では、NW終端ポイントまでファイバを敷設すること」が義務化されている。
 岡崎氏は「欧州だけではなく、シンガポール、台湾、韓国でも新しいビルに対してグリーン化を図るための政策を打ち出している」と話す。

ミッションクリティカル・スマートネットワークとは何か

 このように、データセンタ、アクセスネットワーク、そして建物内ネットワークまで、光ネットワークの適用範囲は急速に拡大している。こうした流れの中で、ノキアが掲げる「ミッションクリティカル・スマートネットワーク」という概念が浮かび上がってくる。
 岡崎氏は「これから皆さんは様々な映像データをAIで見る。それを、セキュリティを担保して、いつでもユーティリティのように使えて、自動化かつ信頼性が高いことが求められる。そのため、メンテナンスの手間をかけないネットワークを作るというのがポイントとなる。そこをめざして、これまでお話ししたセキュリティ、接続性、可用性に耐えることのできるネットワークへのアップデートというのが、ノキアが考えるフォーカスするべきところだ」と話す。

編集後記

 これまでのネットワークの進化は、その時の最適解を模索して積み重ねるパッチワーク的な歩みで前進してきた。しかしAI時代には、全体像を想定し、そこに向けた最適化が重要視される。これは、AI、GPU、光インターコネクト、エネルギー、データセンタと様々な領域で課題や急速な変化があり、判断が難しい、不確定要素の多い局面でもある。
 そうした中で、ノキアのように、データセンタやバックボーンといった最先端領域での対応力に加え、アクセスネットワークや建物内ネットワークにおける先進技術の提供まで、顧客と並走しながらエンド・ツー・エンドで提案できる存在は希少かつ頼れる存在だ。
 そのノキアが示したミッションクリティカル・スマートネットワークという考え方は、AI時代という環境変化において、個々の企業や政府、自治体が何をすべきかを検討する上で、成功事例や基本ロジックとして参照モデルになるだろう。

レポート目次

TOP

1:AIコネクティビティのための超高効率ネットワーク

2:AIと高度なネットワークソリューションでパフォーマンスと利益を促進

3:ノキアのプライベートワイヤレス技術で広がるAIの可能性。360度マルチメディアによる産業のデジタル化

4:ノキアが提案するミッションクリティカル・スマート ネットワーク

・5:AI時代のデータセンタからPON、光LANを提供