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つくばフォーラム2018Preview【小林所長インタビュー】

INTERVIEW 有料

 10月25、26日の2日間、NTTアクセスサービスシステム研究所(以下、AS研)会場等において、アクセスネットワークに関するサービス、システムの総合シンポジウム「つくばフォーラム2018」(主催:NTT)が開催される。
 今年のテーマは「今に向き合い、ともに未来へ~社会的課題を解決するアクセスNW先進技術とスマートな保守運用~」。NTTアクセスサービスシステム研究所 所長の小林正樹氏は「動画によるトラフィック増加というトレンドは継続しており、5Gや802.11axも近づいてきた。IoTでは工場や船舶など様々な分野でNTTグループの協業が進んでいる。我々は、こうした次世代サービスが場所や通信環境を気にせずに済むアクセスネットワーク先進技術の研究に取り組んでいる。一方で、日本における生産年齢人口の減少が進む中、NTTでもネットワーク保守業務を効率化して生産性を高める必要に迫られている。その実現のために、我々はスマートな保守運用の研究に取り組んでおり、一般市場への展開に繋がった技術も出てきた。そこで今回のフォーラムでは“アクセスNW先進技術”と“スマートな保守運用”をテーマとし、自らのデジタルトランスフォーメーションを進めるとともに、お客様のデジタルトランスフォーメーションをお手伝いするYour Value Partnerとしてお客様に寄り添い“ともに”未来へ進んで行きたいという思いを込めた」と説明している。
 AS研による技術展示は40件を予定。今回のインタビューでは、その中から幾つかの技術を小林所長に解説していただいた。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)

アクセスNW先進技術

PONを適用した低遅延光アクセス技術

NTTアクセスサービスシステム研究所
小林正樹所長

 5G時代に拡大する多様な高品質サービスには、サービスごとに低遅延、大量接続、超広帯域といった異なる要求、あるいは複合した要求があることから、それらをアクセス回線の種別に関わらず提供できるアクセスネットワークが必要となる。会場ではその要素技術として、PONと無線基地局の連携により低遅延化を図る「PONを用いた低遅延光アクセス技術」が紹介される。
 「PONを用いた低遅延光アクセス技術」は、増加が見込まれる5Gモバイル基地局を効率的に収容するもの。モバイルフロントホールにPONを適用することで光ファイバの共用が可能となり、他の方式に比べて基地局収容に必要となる光ファイバ数の少ない、コストパフォーマンスに優れたネットワークが実現できる。技術的な課題は、PONを5Gモバイルに適用するためには従来よりも低遅延化が必要な点であり、AS研では光アクセスとモバイルの信号制御を連携させることで低遅延化を実現した。小林所長は「ここで使われるOLTは、サービスや方式に依存する機能をソフトウェア部品化するFASAのコンセプトに基づいており、FTTH用の転送制御ソフトウェア部品をモバイル用に入れ替えることで、信号制御の連携が可能となる。汎用的な機能を共通部品化するFASAでは、ハードウェアを一から作り直すことなく、迅速かつ柔軟に新たなサービス要件に対応できる。既に試作機は完成しており、従来は1msだった遅延を50μsまで下げることができた」と説明している。

次世代光ファイバ技術

 次世代の光ファイバ技術では、FewMode-MCFの実用化に向けた最新の研究成果が紹介される。
 FewMode-MCFは、2020年後半のペタビット級伝送システムを実現するために研究が進んでいる光ファイバ技術で、AS研はECOC2018の招待講演にも登壇している。こうした次世代光ファイバ技術が必要とされる理由は、従来のシングルモードファイバの容量限界が約100Tbpsであるからだ。次世代光ファイバの研究には、独立した複数のコア(N個)を同一の光ファイバ内に配置したマルチコアファイバ(MCF)技術と、同一コア内を複数の種類の光モード(M個)が伝搬できる数モードファイバ(FewMode)技術があり、この2つの多重技術を組み合わせることでN×M倍の伝送容量拡大を実現するFewMode-MCFがここ数年の技術トレンドとなっている。昨年のフォーラムではマルチベンダの互換性やコネクタ接続技術の実証が紹介されている。小林所長は「100Tbpsの達成に向けた要素技術の研究成果として、今回のフォーラムでは12コアの10 モードをご紹介する。これは100チャンネル超の空間多重密度を有する世界最高密度のFewMode-MCFであり、同時にクラッド径を250μm以下に抑えることで機械的信頼性を損なわずに空間多重密度の向上を実現した。今後はこの要素技術を基に、実用化に向けた最適化の検討を加速させていく」と説明している。

スマートな保守運用

次世代のとう道管理システム

 NTTグループのとう道(洞道)は全国で約610kmの長さがあり、東京都内にはその内の約290kmが存在している。小林所長は「とう道を管理するシステムは平成9年に導入されており、センサ類の仕様は約20年前のものだ。老朽化したこれらのシステムを更新するにあたり、今まで培ってきたとう道管理のノウハウと最新のセンサ技術・通信技術を組み合わせることで、とう道管理業務を抜本的に見直し、業務のミニマル化を実現する」と説明している。
 次世代のとう道管理システムでは、入構管理機能に顔認証システム、通信環境に無線LANやHD-PLC、人感センサによる自動照明の導入が検討されている。また、センサの保守稼働では汎用化や自動試験化による効率化を図り、センサ設置基準もSOPから見直すという。小林所長は「とう道は階層になっているので、3Dもしくは2.5Dのマップで管理するということも検討している。これにより、とう道内の作業者はタブレットで自分の位置を把握することができ、AR技術による作業支援や避難誘導も可能になる。これら次世代のとう道管理システムを導入することで、とう道全体を一つのIoTシステムにしていこうと考えている」と説明する。今回の展示では、次世代管理システムの全体をイメージしやすいよう、とう道を模した体験型の展示が設置される予定だ。

将来の所外設備運用

 ネットワーク保守運用人員の減少に対処するためには生産性の向上が不可欠であり、今後10年以内に現在の生産性を2倍以上にする必要があるという。小林所長は「所外設備運用が内包するアナログ的な要素が、本来作業以外の稼働、例えば現地を見に行く必要や、複数回の確認、そしてミス対応といった不要な作業を発生させる要因となっている」と指摘しており、「これを解決するためには真のデジタル化が必要だ。例えばデジタルカメラで撮影したマンホールの画像に対してAI技術や画像解析による段差計測や摩耗度の自動判定をすることにより、作業員による車道上での計測といった直接的な稼働を削減することができる。また、各建造物に関するデジタルデータを時系列順に関連付けて分析することで劣化予測が可能となるので、継続的な改善を促す運用のエコシステムが実現できる」と説明している。
 屋外構造物の計測作業におけるデジタル化技術では、3Dレーザスキャナ搭載自動車(MMS)による構造劣化判定システムも紹介される。これはMMSによって計測された点群データから、電柱・架線等ケーブルの状態を自動計測するものである。小林所長は「MMSは既に東日本で1台が稼働している。今回のフォーラムでは、取得した点群データ、構造物の設備情報データを組み合わせて解析することで、ワンクリックで電柱抽出、設備名のひも付け、傾き・たわみ診断を全て自動実行できるシステムをご紹介する。構造物のデータがあれば他の業種でも活用できるので、通信事業者以外の方々にも有意義な技術だと考えている」と話している。

災害対策無線「TZ-403D」

 「TZ-403D」は、災害時にNTTビルに設置される無線基地局と避難所などに設置された無線端末局を接続するシステムで、被災者の安心と安全に役立つ音声サービス(臨時電話)とインターネットサービス(特設Wi-Fi等)を提供する。
 400MHz帯を使用しており、山間部など電波の遮蔽物が多い地形でも回折して伝搬することができる。また、400MHz帯のアンテナは他の帯域と比べて大型であるが、このシステムでは災害発生時に迅速かつ柔軟に無線機能を配備できるよう、位相差給電技術によりアンテナを約半分に小型化しており、無線通信装置全体の可搬性および設置性を向上させている。小林所長は「今年7月に発生した豪雨では、被災地(岡山県倉敷市)において2ヵ所の避難所のお客様へ電話回線やインターネットをご提供するのに役立った。実際の災害時に簡易な設置で開通でき、山の切り立った地形でも問題なく電波が届いたことが確認できた。災害対策だけではなく、ルーラルエリアでの活用でも期待できる技術だ」と説明している。

ルール学習型障害箇所推定技術

 AS研では、ネットワークの障害原因とアラームの因果関係(ルール)を自律的に導出するAI技術を開発している。これに基づき、障害発生時に障害原因箇所の候補をトポロジマップ上に即座に可視化することで、保守業務の負担軽減(OPEX削減)を実現できるという。小林所長は「従来の障害対応では、保守者のスキルとノウハウに頼ってアラーム分析や切り分けを実施していたが、AIにルールを学習させていくことで、それを瞬時に推定できるようになる」と説明している。

業務ナビゲーション技術

 一般市場にも展開している業務のサポートツールとして、アノテーション技術や、クライアント端末データ流通技術、端末操作自動化技術が紹介される。
 NTT-TXが販売している「BizFront/アノテーション」は、パソコン画面上にアイコンや吹き出しによる操作手順や注意喚起を表示できるツール。誤作動の予防や新人教育時間の低減、またマニュアル閲覧の手間を省くことができる。プログラムをパソコンにインストールするだけで使用できるので、業務アプリケーションに直接改造を加える方法に比べ、低コストかつ短時間で導入できる。小林所長は「日本語メニューに現地語説明を表示することで、海外委託先等への簡易的なローカライズも可能だ」と話している。
同じくNTT-TXが販売しているクライアント端末操作自動化技術「Crossway/データブリッジ」は、端末の間をUSBケーブルで接続し、接続している間だけデータを一方通行で渡すことのできるセキュリティ機器だ。小林所長は「送信ログを記録する機能や、本体内のデータを自動削除する機能が備わっているので、USBメモリよりも安全にデータを移行することができる」と話す。
 NTT-ATが販売している「WinActor」は、AS研が開発したUMS(Unified Management Support System)により、定型繰り返し業務の自動化や、データ不一致の防止を実現しているRPAツールで、同ツールの国内シェアNo1を獲得している。シナリオの自動生成やビジュアルな編集環境も高い評価を得ている。対象システムを改造することなく様々なシステムに対応でき、インストールも不要だという。小林所長は「UMSのデータ取り込みにより、一件あたり120秒かかっていた手入力のケースでは10秒に短縮できた。これは92%の稼働時間短縮となるので、例えば銀行の帳票処理のような膨大な数を処理する業務では非常に効果が出ている」と説明している。

 今回、小林所長の説明から、AS研の技術が通信事業という枠組みを越えて広がりを見せていることが感じられた。一般企業に向けて実績を伸ばす業務ナビゲーション技術など、もともとはNTTグループで使われていた技術が他の事業分野でも利活用されるようになったことを考えると、今回のフォーラムで展示される通信事業向けの技術も、将来的な利用シーンの広がりを考えながら見てみるのも面白そうだ。一方で次世代通信に着目すると、数年前からつくばフォーラムで紹介されてきた、モバイルフロントホールにPONを活用することでコスト削減を図る技術は、携帯電話料金に対する世の中の注目が集まった今年は更に重要性が増したと言える。つくばフォーラムでは多数の専門家が一堂に会するので、こうした技術に対する議論が進捗することも期待できそうだ。

特集目次

小林所長インタビュー
つくばフォーラム2018の概要
展示会場の見どころ

出展社ピックアップ
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協和エクシオ
住友電気工業
日本コムシス
原田産業
丸文
横河計測