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つくばフォーラム2025開催記念「NTT AS研 海老根所長インタビュー」【2】

INTERVIEW 有料

サービスの高度化・多様化を支える技術

ネットワークの更なる高性能化に貢献する光線路技術

 光伝送技術の普及、拡大に伴い、光伝送基盤の持続可能な大容量化、並列数に比例した接続専有面積の増大、光伝送路設備の肥大化による環境負荷の増大といった、光線路技術要求の多様化が進んでいく。
 こうした多様化するネットワーク要件に、性能側面および環境側面からサステナブルに対応できる光線路技術が研究されている。技術のポイントは次の通り。
・マルチコアファイバ技術×広帯域化技術による容量スケーラビリティの向上
・マルチコアファイバ接続技術×超多心高集積コネクタ接続技術
・マルチコアファイバ技術および光ファイバ信号処理による環境負荷の削減

光線路技術のポイント。海老根所長は「容量スケーラビリティを向上させる技術では、設計や製造の工夫をすることで、O-bundまでの拡大を低損失で実現する。並列数の増大に向けた高集積接続技術では、1RU当たりの接続数を、飛躍的に向上させる。環境負荷低減を実現する技術では、フェムト秒レーザを使ってファイバに直に書き込むことでフィルタを生成する等、電気を使わずに処理する」と説明している。

遠隔制御対応APNトランシーバ構成技術

 多様なサービス(例:データセンタ、無線アクセスネットワーク) のオンデマンドかつ迅速な提供と効率的な運用保守を行うためには、顧客拠点に赴いての工事、設定作業を不要とし、遠隔から顧客の必要なタイミングに合わせて設定制御を可能とする必要がある。また、監視制御用の新たな光ファイバを敷設することがないよう、光トランシーバの主信号と光ファイバを共有して遠隔から開通・パス設定・監視制御を行うための仕組みや、監視制御信号方式を確立する必要がある。そこで、主信号のフォーマット、プロトコルに依存せず、主信号用光ファイバ内に重畳する監視制御経路を形成し、遠隔に配置したコントローラからパス設定、開通、監視制御する方式と、その実装技術、省電力化技術の研究を進めている。
 技術のポイントは、以下の通り 。
1:共通APIを用いたインチャネル遠隔制御
2:伝送方式・速度が異なるAPNトランシーバ(APN-T)
3:光パス設定・変更の自動化
4:光源の省電力化
 海老根所長は「APN-Tをコントローラからインチャネル(加入者の通信で使用する信号と同じようなチャネル)で遠隔制御できるように、プロトコルなども研究している」と話す。

遠隔制御対応APNトランシーバ構成技術のイメージ。同技術の研究成果は、NICTの助成事業(JPJ012368G50201)により得られたものであり、研究開発プロジェクトは複数の企業で分担している。

低遅延FDN技術のスマート農業への活用

 収穫ロボを用いたスマート農業による省人化が期待されている。ここで課題となるのは、遅延の影響により、アームの動作距離が操作者の意図しないものになってしまう点だ。そこで、遅延の大きい場合はアームの動作を遅くすることで影響を抑える技術が研究されている。
 技術のポイントは「アプリの入出力データを解析し、処理時間をアプリ外から計測」「コントローラ連携により、サーバの処理時間とNW遅延時間のEnd-to-End(E2E)遅延を把握。リアルタイムにサービス品質を判断・制御」「遠隔操作システムとの連携で品質に応じた動作制御」となる。
 制御速度は100ms程度であり、ベストエフォートサービスでも遠隔操作の高い操作性を担保できる。例えば、遠隔にいる人が空き時間を活用し、気軽に農業に参画することも可能だ。海老根所長は「農業以外の業界でも、遠隔操作の観点で省人化に応用できる技術となる」と話す。

低遅延FDN技術のポイント。

光ファイバ給電による超省電力端末構成技術

 光ファイバ給電は、電力供給が困難なエリア(遠隔地、地下等)へセンシングサービスや通信環境の提供を実現する有望な技術だ。しかし、遠隔設置のために端末の安全性の向上が必要であり、低強度の給電光で動作するための端末の低消費電力化や、二次電池搭載時の耐久性・安全性の向上が求められる。
 技術のポイントは以下の通り。
・光ファイバを伝送する光を電気へ変換し端末を給電
・端末に二次電池を搭載し、スリープ中に蓄電・動作中に放電するスリープ機能を実装し、平均電力を低減
・二次電池として全固体電池を採用し、充放電の繰り返しによる劣化の軽減および安全性の向上を実現
 これにより、送電が困難なエリアへの通信環境の供給や、安全性の高い低消費電力端末の提供が可能となる。海老根所長は「スリープのパターンを試しながら、効果的なスリープタイミングを模索するなどしている。今後は、通信方式の改善や構成部品のチューニングによるさらなる低消費電力化や、実証実験を通じた効果実証に取り組んでいく」と説明している。

光ファイバ給電による超省電力端末構成技術の系構成。無線センサやカメラ(静止画)が主なターゲット市場となる。

特集目次

■NTT AS研 海老根所長インタビュー

研究開発の方向性

・サービスの高度化、多様化を支える技術(前編)

サービスの高度化、多様化を支える技術(後編)

運用を抜本的にスマート化する技術/新ビジネス領域を開拓する技術

■出展社Preview(50音順)

NEC

エクシオグループ

住友電工グループ

日本コムシス

横河計測

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