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FOEセミナー企画委員インタビュー:黒部 立郎氏【古河電気工業】FOE-2

INTERVIEW 有料

(期間限定無料公開中)

■講演タイトル
【FOE-2】
空孔コアファイバ(Hollow-Core Fiber)の次世代光通信応用

■コースリーダー
古河電気工業
研究開発本部 フォトニクス研究所 所長
黒部 立郎

■講演者
ライテラジャパン
Technology and R&D SVP
折田 伸昭

古河電気工業
研究開発本部 フォトニクス研究所
所長
黒部 立郎氏

 空孔コアファイバ(HCF:Hollow-Core Fiber)は、光をガラスではなく空気中で伝送するコア構造とすることで、従来のガラスコアファイバでは実現不可能な低遅延、低非線形性、低損失などの特性を有する革新的な光ファイバとして研究が進められており、世界的に注目されている。本セッションでは、データセンタから長距離通信までの様々な分野で期待されるHCFの次世代光通信応用について解説される。

 実ビジネスという観点からHCFが期待されている領域の一つに、遅延の要求の厳しいアプリケーションにおける長距離伝送がある。例えばAIデータセンタや金融用途では、遅延を許容できる距離までしか伝送ができないので、遅延の少ないHCFならば既存のファイバよりも伝送距離を延ばすことができる。これによりデータセンタのロケーションの自由度が高まるので、発電設備や再生可能エネルギーとの連携を含めた建設計画の最適化や、災害リスクの分散、土地コストの低減といったメリットが期待されている。コースリーダーを務める黒部氏は「HCFで約150km伝送した場合の遅延は、従来のファイバで約100km伝送した場合と同等ということで、その低遅延性能の高さが注目されている。最近は、この低遅延性能を分散型データセンタのDCIに活かそうという期待がグローバルで見られる」と話している。
 またHCFでは、ガラスコアの1000倍以上のエネルギー密度の光を入れても損傷しない低非線形性の適用や、コアが空洞であることを活かした低損失化の研究も進められている。黒部氏は「本講演では、こうした特性におけるガラスファイバとの比較も交え、期待されているアプリケーションをお伝えする」と話している。

 登壇する折田氏は、1991年に古河電気工業(以下、古河電工)の設備開発部に所属し、光ファイバの生産技術開発に従事。2018年より光ファイバ開発チーム長、光ファイバ製造部長、2023年よりファイバ・ケーブル事業部門長を歴任している。そして、2025年のライテラジャパン設立に伴いTechnology and R&D SVPに就任し、研究開発のキーパーソンとして技術の最前線に携わっている。
 折田氏は、古河電工が有する複数の光ファイバ関連の特許で発明者として名を連ねており、光ファイバ製造プロセスの効率化や品質向上に貢献してきた実績がある。本講演では、これまでの光ファイバ製造にも精通した同氏の視点によるHCFの構造設計、製造上の課題、将来展望までを深く掘り下げた解説や、ライテラというグローバル企業で製品化や事業を進めるリーダーとしての見解が示されることも期待できるので、業界関係者にとって非常に示唆に富む内容となるだろう。

 黒部氏は「シングルモードファイバに代わる次世代のファイバ技術は、世界中で様々な研究が進んでおり、MCF(マルチコアファイバ)やHCFは実用化が視野に入った技術として期待が高まっている。特にHCFは急速なピッチで立ち上がっているので、今回の講演ではその動向をお伝えすると共に、ご聴講される皆様と活発な議論をすることで、より良い社会実装に繋がっていく場になると期待している」と話す。

(OPTCOM編集部)

FOEセミナー企画委員インタビュー目次

■7月30日(水)の講演

【FOE-1】AIクラスター向け光インターコネクト:2025年、そしてその先へ
企画委員:小熊 健史氏【日本電気】

【FOE-2】空孔コアファイバ(Hollow-Core Fiber)の次世代光通信応用
企画委員:黒部 立郎氏【古河電気工業】

■7月31日(木)の講演

【FOE-3】先進アドバンスト・パッケージング、チップレット、フォトニクスおよび電気ダイの統合に関するケーススタディ
企画委員:才田 隆志氏【NTT】

【FOE-4】光電融合時代の光通信を支える超広帯域光増幅技術
企画委員:玉置 忍氏【住友電気工業】

【FOE-5】Space Compassが目指すマルチオービット構想と宇宙光通信技術の最新動向
企画委員:鈴木 巨生氏【三菱電機】

【FOE-6】224GbpsのSERDESとI/O、PAM4と448Gbpsへの道
企画委員:山中 正樹氏【キーサイト・テクノロジー】

【FOE-7】IOWN におけるAll Photonics Network の最新研究開発動向
企画委員:柳 秀一氏【NTT アドバンステクノロジ】

■8月1日(金)の講演

【FOE-8】AIデータセンタ構築に向けたLLM/GPUと光回線の最新技術動向
企画委員:和田 悟氏【フジクラ】

【FOE-9】異種材料集積技術の最新動向
企画委員:黒部 立郎氏【古河電気工業】

【FOE-10】AI時代を支える光トランシーバの最新動向
企画委員:布施 由起治氏【古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ】

【FOE-11】既設通信光ファイバを用いた光ファイバセンシング基盤の実現に向けて
企画委員:森 浩氏【アンリツ】